静寂が支配する森の中、二人の戦士が対峙する。
遥か天上を白雲が流れを、木々の隙間を一陣の風が吹き抜ける。
互いに合図は必要なかった。
それなのに、まるで呼吸を合わせたかのように同時に――――――――
―――大地が爆ぜ、土埃を巻き上がるッ。
『飛影閃』
私は走りながらも腕を振るい、袖口から影を放つ。
袖口から飛び出す無数の影が刃となり、走る男に襲いかかる。
「ふんッ、当たらんなあッ!!!」
しかし男は左右へと飛び跳ねるように動き、影の刃を躱していく。
飛翔する影の刃は虚しく空を切り、標的を捕えることなく彼方へと消え去った。
「今度はこっちから行くぜえッ!!!」
男は刀を構え加速し、真っ直ぐに地を駆ける。
私もそれに合わせて刀を構えて地を駆けた。
白銀の旋風と真紅の暴風が木々の隙間を縫うように森の中を疾走し――――――――
「てやぁああああああああああああああッ!!!」
「おりゃああああああああああああああッ!!!」
―――――今、両雄が激突した。
銀と紅が交叉し、金属を打つ甲高い音が森の中に響き渡る。
鍔迫り合う互いの武器が、それぞれの行く手を阻み合う。
―――否ッ! この程度では止まれない!!!
銀と紅が弾け、火花を散らした。
『黒影刃』
私は疾走する双刃に合わせ、大地に伸びる影の中から影の刃を顕現させる。
双銀と黒影が走り、その三重奏で剣戟の嵐を巻き起こす。
しかしッ――――――――
『紅水刃《コウスイジン》』
―――刃は男に届かなかった。
男が手に持つ紅い刀が変幻自在に踊り狂い、刃の嵐に立ち向かう。
―――――キィンッ!
―――――――――キィンッ!!
―――――――――――――キィンッ!!!
宙を駆ける無数の斬撃が何度も衝突し、弾け飛ぶ。
斬り、防ぎ、打ち、払い、薙ぎ、弾き、突き、流す。
双銀と黒影、真紅の奏でる四重奏が森の中に響き渡る。
その中で、互いの技が同時に繰り出された。
「いきますッ!」『黒影刃』『襲双連斬』
「喰らいなッ!」『紅水刃・三頭ノ大蛇《サンズノオロチ》』
左右の双刃が煌き、影から伸びる黒刃が振るわれる。
同時に繰り出される三つの軌跡が空間に弧を描く。
対する男は紅い刀身を三叉に分け、三匹の大蛇に変化させる。
ガキィンッッッ!!!
一際高い音を立て、刃が大蛇に喰い止められた。
否ッ!止められた影の刃を分解――――――――
影の刃が砕け散り、無数の黒い花弁が宙を舞う。
大蛇の一匹が支えを失って突き進み、頬を掠めた。
―――――再構築!
再び顕現した影の刃で、即座に男に斬りかかる。
「たぁあああああああああああああああッ!!!!!」
私は渾身の力を込めて影を操る。
振り払った影の刃は――――――――
―――見事、男の胴体へと命中した。
……………………なぁ
「……これで倒したと、そう思ったか?」
気が付けば………
私は男に首を掴まれ、宙吊りの状態にされていた。
何故!? 確かに必殺の一撃だったはずです!!!
「………なんでだ、って顔してやがるな。 いいぜ、教えてやるよ。
俺は昔、教会である魔術の実験台にされてよ、体内に魔術を組み込まれたんだ。
その魔術っつーのが『血液を操り武器にする術』でな、さっきの刀もこの術で作った物さ」
まぁ、一度に一つしか作れねぇんだけどな。
男はそう言いながら無手となった手を振って見せる。
「さて、どうやって攻撃を防いだのかって話だったな。 なぁに、話は簡単なことさ。
俺は攻撃を喰らう瞬間、『体内の血液』で『体内』に盾を生成、固定して攻撃を防いだのさ。
ま、ものすげェ痛いんだけどよ、死ぬよりはマシだからな」
――――――――さて、これで終わりにさせて貰うぜ
男は胴体から流れる血液を空いている手の指先に集め、爪にして装備する。
そして、放たれた一撃が私の胸へと吸い込まれ――――――――
ガキィンッッッ!!!
甲高い音を響かせ、弾かれた。
「―――――なッ!!!」
不意の出来事に男は驚きを隠せない。
―――ッ! この隙に全ての力を振り絞るッ!!!
奥義『黒影陣・崩穿華《ホウセンカ》』
影………
足元の影だけではなくこの森の中に存在するあらゆる影の中に、影の刃が顕現する。
そして、その全てが私の意志に応じるように爆散する。
爆発した影の刃は無数の針へと変化すると、辺り一面を穿つように散らばり――――――――
「ぐあああああああああああああああああああああああ!!!」
―――――男の身にも降り注いだ。
男はその背を無数の針で飾ると……………
やがて力を失い、遂には倒れた。
「………一つ、あなたか
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