…それはとある早朝の出来事。
街中を武装した兵士達が徘徊する。
彼らは教会に侵入した魔物を探していた。
「おい、お前らァッ!あの侵入者はまだ見つからんのかッ!!!」
隊長格らしき男が声を上げる。
「それが隊長、探知機がまるで役に立ちません」
部下らしき男は魔力探知機を見ながらそう言った。
彼の持つ探知機はでたらめに光るだけで標的を捕えない。
「馬鹿を言うな!先程まではちゃんと機能していただろう!
たとえこの街に多くの魔物が住んでいたとしても、あれ程の魔力なら探知機は十分に役立つはずだ!」
「確かに、先程までは機能していました。
ですが、その…… 先程まで捕えていた魔力反応が忽然と消えてしまって……」
「なんだと! そんな事あるわけがないだろ!!!」
そう、本来ならばあり得ないことだ。
確かに、彼らも魔力を制御し探知の目を欺く術があることは知っている。
だが、どんなに魔力の制御が得意だったとしてもそれを忽然と消すなんてあり得ない。
ましてやあれ程に強大な魔力、徐々に… 少しずつ抑えていくしかないはずだ。
何か…… 何か理由があるはずだ。
魔力反応が消えた理由を隊長は考える。
コントロールしたのではないとすると種族としての特性によるものか?
だとすれば、相手の種族は何か……
…そもそも、魔力の消失は相手の意図したものなのか?
何らかの事象が原因でやむを得ず消失したのだとしたら?
隊長は何かないかと辺りを見渡す。
だが、何も見当たらない。 朝陽に照らされた街並みが視界に映るだけだ。
…朝陽? ………そうか!!!
隊長の頭の中で、バラバラだったパズルが組み立てられ、そして完成した。
そして彼は己が出した答えを部下達に伝える。
「おい、侵入者の正体がわかったぞ!」
「本当ですか!」
「ああ、おそらくだが。 …ヴァンパイアだ」
相手が何者かさえ分かれば対処もできる。
隊長は部下達にすぐさまに指示をする。
「いいか、まずは探知機の感度を上げろ!相手の魔力は消えたんじゃない、弱まっただけだ!
街の住人達の魔力も探知するかもしれんが気にするな!
俺たちから逃げようとする魔力反応を探せ!それを追跡するんだ!判ったか、野郎ども!」
こうして、侵入者の追跡は再開された。
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