ありがとう

 祝辞を読んでもらいます

 ネコマタの友人、黒猫の雲母
「沙羅さん、郁太さん、おめでとうごさいます。お二人とも今日まで良く頑張られました。本当にこの日を迎えられることを嬉しく思います。郁太さん、沙羅さんは少し思い込みやすいところがありますので、しっかりと手を握って離さないで下さい。もし手を離したら承知いたしません。それと、沙羅さん。あまり、ヤキモチを焼いて郁太さんを困らせてはいけませんよ」


 ネコマタの友人、茶猫の朱音
「沙羅、郁太。よかったね。まあ、その、沙羅の暴走っぷりにはあたし達も手を焼くことがあるから、たぶんもの凄く疲れると思うけど。ま、沙羅のために四年も努力したアンタなら大丈夫だ。ちゃんと幸せにしてやれよ」


 ネコマタの友人、三毛猫の美音
「ウ、う、ウニャーーー!・・ウ、ぐ、グシュ!よ、よかったにゃ!沙羅に・・グシュ・・・い郁太もグ、ヒグッ、ほ、本当に・・・ングッよかったにゃ。・・・うう、ウニャーーー!!!」


 人間の友人、伸介
「郁太。まずはおめでとうと言わせてもらうよ。お前が道場に入門してきたのはちょっと驚いたが、よく頑張っていたものな。しかし、浮いた話が一つも無かったのは正直疑問に思っていたが。これなら仕方がないな。二人とも、幸せに成るんだぞ」


 新月流武術門下生、代表
「まず最初に二人には謝らなければならない。あの時は本当にすまなかった。話には聞いていたし、街中でも見かけてはいたんだが。まさか師匠の飼い猫がそうだったとはおもわず、皆で大笑いしてしまって。だが、それでも何も言わず待ち続けたお前は一人前だ。俺たちが認める。胸を張っていけ!」


 新月流武術道場主、月心
「郁太よ。お主がこの四年間ひたすら努力してきたことを認めて、我が養女【むすめ】沙羅との結婚を許そう。これからも仲良くするのだぞ。そしてわしのことは道場外では養父【ちち】と呼ぶのだ。それ以外は許さんからな」

 続きまして返礼です

 松屋商店店主、長五郎
「みなさん、本日はご足労いただきありがとうございます。此のたびは、沙羅さんのような素晴らしい方を迎い入れることが出来たことを心より嬉しく思います。郁太や私どものために沙羅さんと養子縁組をして下さった月心様には御礼のいいようがございません。郁太ともども責任を持って預からせていただきますので、どうか宜しくお願いいたします」


 新夫、郁太
「本日のような素晴らしい日を迎えることが出来たこと、嬉しく思います。両親、師匠、友に祝福され返す言葉も御座いません。このうえは、沙羅とともに松屋を盛り上げることでご恩返しと指せていただきたく思います」


 新妻、沙羅
「み、みなさん。ほ、本当にありがとうございます。郁太と一緒に頑張りますのでど、どうかよろしく・・・お、お願い、し、しま・・・シュ」


 以上をもちまして結婚披露宴を終わらせていただきます。皆様盛大な拍手を!



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 結婚式が終わり、郁太と沙羅は会場と成った宿屋の一室にいた。二人とも着慣れた着物を着て椅子に座っている。
「ふぅ、やっぱりこっちの方が落ち着くな」
「ええ、そうね」
 頷いた沙羅は、それから部屋の壁際に飾るように掛けてある着物に目を向ける。ジョロウグモによって作られた羽織袴に白無垢、異国の妖怪アラクネの手によるタキシードとウエディングドレスが飾られている。
「話には聞いていたけど、まさか着れるなんて」
「知り合いから是非にって言われたんだって」
「でも、よかったの?」
「舶来物のお披露目が出来たって喜んでいたよ」
 それに、と郁太がおどけながら話す。
「披露宴の食事や祝い品で配った品もあったけど、一応家で買い付けたんだよ。もちろん、幾らか引いてもらったけどね」
 その言葉に沙羅は、さすが商人と頷く。
「何でも商売のタネにするのね」
「これ位当たり前だよ」
 笑いながら答える郁太に、沙羅は考え込む。
「何か不安になってきたわ」
「大丈夫だよ」
 優しく沙羅を抱きしめた郁太は、耳元で囁く。
「僕がついてる。僕だけじゃない。僕の両親や師匠、沙羅の友達に僕の友達、みんながついてる。だから大丈夫だよ」
「うん、そうね。みんながいるよね」
 答えた沙羅は郁太に抱きつき答える。
「それじゃ、みんなのためにも頑張らないとね」
「期待しているよ、沙羅」
 郁太の言葉に沙羅は満面の笑みを向けて答えた。
「任せなさい!立派な招き猫になってみせるわ!」

11/11/01 12:21更新 / 名無しの旅人
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