「やーい犬っころ、犬っころ。」
「「やーいやーい。」」
「う、うるさい!わ、私はワーウルフだ!」
私が、泣きながら反論するが、周りで騒いでいるイジメっ子たちはさらに騒ぎ立てる。
「犬っころのくせになまいきだぞ!」
「ほら、お手くらいしてみろよ?」
「ダメな犬っころだな。」
「う、うるさいうるさい・・・」
とうとう私は座り込んでしまう。それを見てイジメっ子たちが声を上げる。
「ほらほら、いい加減に・・イデッ!」
突然聞こえてきた声に、私は顔を上げる。目の前に一人の男の子がたっていた。私を守るように立つ姿はまるで、
(お、王子様・・・)
「な、なにするんだよ?」
「お、俺たちを誰だと思ってるんだ!」
それに対してその男の子は、たった一言だけ答えた。
「知らないよ。」
その言葉に三人のイジメっ子たちは飛び掛かって・・・
「だいじょうぶ?」
聞こえてきた声に私が顔を上げると、あの男の子が手を差し出ていた。殴られて赤くした顔で笑いながら。その笑顔に思わず私は、顔を逸らしてしまう。
「ほら、つかまって。」
「う、うん。」
私の手をつかんで立ち上がらせると、そのまま私をじっと見つめてくる。その視線に思わず俯いてしまう。そんな私を見て男の子は、
「怪我は、無いみたいだね。」
その言葉にまた私の心が高まり、鼓動が早くなる。
(殴られて服まで汚れて、それなのに・・・)
それから男の子は、私に尋ねてきた。
「ここってさ、どこいらへん?」
その言葉に私は目を丸くする。
それを見た男の子は、自分のことを話してきた。今日この街に引っ越してきたこと、新しい街を探検していたこと、そうしたら道に迷ってしまったこと、それから勘を頼りに歩いていたこと。
「そしたら、偶然通りかかったんだ。」
「そ、そうなの。」
二人は街の大通りを歩いている。男の子が話した場所は、私が知っている場所でお礼を兼ねて道案内してあげることにした。
「へー、それじゃあ同い年なんだ。」
「う、うん。」
「学校も同じ所だし、もしかしたら同じクラスになるかもしれないね?」
「う、うん。」
その言葉に私の耳はピンと立ち、スカートの中の尻尾は勢いよく降られる。今日ほどロングスカートに感謝したことはない。そうして話をしている間に一軒の家にたどり着く。その家を見た男の子が、
「ようやく着いた、ここが僕の家だよ。」
と、笑顔で振り返る。そうして
「じゃあ、バイバイ。」
と、言って玄関の前に立ったとき、私は声を上げていた。
「あ、あの私の名前はメリルといいます。アナタの名前は?」
「僕は、ヴィーツだよ。」
そう言うと男の子ヴィーツは、家の中に入っていった。
その後ろ姿を見送りながら、私メリルは小さく呟いた。
「ヴィーツさん、私のご主人様。」
「・・・なるほど。それが二人の出会いだったと。」
「はい、そうです。」」
メリルの話を聞き、カラステングの黒音(くろね)はメモ帳にペンを走らせる。それからメモ帳のページを捲り次の質問をする。
「お二人は、現在同棲中とのことですが聞いた話に依りますと、出会ってから五年後に同棲を始めたとか?」
「厳密にいえば、それは違うかな。」
メリルの隣に座っているヴィーツが答える。
「と、言いますと?」
「確かに同棲に成ったのは、五年後だけどその前から花嫁修業で家に同居していたよ。」
「それはいつごろですか?」
「出会って次の日の朝だよな。」
「はい!」
二人の言葉に黒音は、走らせていたペンを止める。
「ふんふん、出会った次の日の朝と・・・え?」
黒音は二人の顔を思わず見つめ返して、
「あの、もう一度訊ねますけど同棲されたのは五年後で・・・」
「はい、それより前からメリルは家に同居していましたよ。」
黒音の言葉にヴィーツが答えメリルが頷く。
「そ、それでその花嫁修業というのは?」
「文字どおりの意味です。」
「メリルは、そのころから何をしても優秀で・・・」
「やですわ、ご主人様ったら。」と顔を朱くしてメリルは照れまくっているがその尻尾は、はち切れんばかりに振られている。その姿は正しく忠犬そのものだ。
(確かヴィーツさんの転校してきたのって十歳の時だったはずじゃ)
黒音は、いけないいけないと気持ちを切り替えて、次の質問に移る。
「それで少しお訊ねしますけど・・・その・・・何でお二人はそ、そのく、首輪をされているのですか?」
黒音は、恐る恐る質問する。なにしろ自分の上級生であり、二人揃って空手全国大会で入賞を果たしている人たちだ。加えて独占インタビューということで学校の空き教室を使用している。もし二人の機嫌を損ねたら・・・
(これも一流のジャーナリストになるためよ。)
自分を奮い立たせ、黒音は声を絞り出す。
「あ、もし話したくないので
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