楽しかったです

「分解させてくれ!!!」
「お断りします」
 返された言葉に臆することもなく、ドワーフは再度声を張り上げる。
「そう言わず頼む、分解させてくれ」
「お断りします」
「大丈夫、ちゃんと元通りにするから」
「それは当たり前です」
「痛くしないから」
「そう云う時は痛いことをする時です」
「お手入れしないと」
「メンテナンスは自分で出来ます」
「だけどさ、自分で出来ない時も」
「ご心配には及びません、その時はベルツにしてもらいます」
 オレを見ながらアンテは答える。
「ならさアタシにも触らせてくれてもイイだろ」
「体に触る位ならかまいません、ですが内部機構までとなりますと」
 そこで一度口を噤むと頬を朱く染めて答える。
「私の・・・その、か・・・身体の中に触れていいのはマスターのベルツだけです。ですのでお断りします」
 折り目正しくペコリと頭を下げて答えるアンテを見てさすがゴーレムと妙なところで感心する。
 しかしそんな言葉でドワーフは引き下がらない。俯くとブルブルと身体を震わせる、それからゆっくりと顔を上げて目に涙を浮かべながら訊ねる。
「グスッ、如何してもダメ?」
 対してアンテは一瞬答えに詰まるが眼を逸らして何とか切り抜けることに成功する。
「泣いてもダメです」
「ヒクッグシュ!本当に?」
「・・・・・出来ません」
「ウ、ウワ〜〜〜〜〜ン!!!!やだやだやだ、遣らせてくれなきゃやだーー!!!」
 その場に仰向けに倒れ込むと両手両足を振り回して、ジタバタと騒ぎ出す。頭も振り回し駄々をこねる子供に成って暴れ出す。部屋の中央でしているので頭を打ち付けることは無いが、そんな姿を見ていると何だかこっちが悪いことをしている様な気がしてくる。
 案の定アンテもその光景にオロオロと慌てだす。
「あ、あの如何か落ち着いて下さい。そんなに暴れると危ないですよ」
 両手を揃えてまあまあと宥めだすと、ドワーフはさらに激しく暴れ出す。
「やだやだやだーーーーーー!!!!!やらせてくれなきゃやだーーーー!!!!ワ〜〜〜〜〜ン!!!!!」
「ああもう如何すれば良いのですか?」
「させてやればいいんだろ」
 オレの発言にアンテは目を向いてしまう。
「ベルツ、本気で言っているのですか!」
「泣き止ませるのに一番の解決法ったら本人がしたいことをさせるもんだろ」
「そ、それはそうですが・・・」
「(ニヤリ)ウワ〜〜〜ン!!!」
「それともこのままにしておくか」
「それはいけません!」
(コクコク)
 それではと首を捻り、うーんと腕を組んで考え込む(振りをする)。
「殴ってだまらせる」
「却下です、暴力はいけません」
(ブルブル)
「口を塞ぐ」
「息が出来なくなります」
(殺す気か!)
「アメ玉を渡す」
「持ってません」
(ガックリ)
「ぬいぐるみを使う」
「用意してません」
(ガーーン)
「子守唄を歌う」
「レパートリーで100曲以上あります」
(目覚ましをセットして置かないと)
「何か別のことで気を逸らすか」
「別のこと?」
(???)
「もちろん二人の濡れ場w」(ゴキャッ!!)
「次の案を提示してください」(そういうことは二人っきりでするものです)
(うう、見たかった)
「うーん、そうだ!アンテの母乳w・・・次の案を考えます」
「お願いします」(氷の視線を緩める)
(飲んでみたかったも)
「よし、サバト最新の夜の友グッズを買ってきて」
「私は行きませんよ」(ベルツがいるのに必要無いですから)
(新作が出たんだ、後で買ってこよ)
 その後もアンテとああでもないこうでもないと言い合いながらちらりと横を見遣ると、ドワーフは両手で顔を覆いながらこちらの様子を窺っている。時々肩を震わせたり泣き声を出したりしているが、泣いている気配は無いみたいだ。
 頃合だとみたオレは懐からある物を取り出すと、高々と掲げてみせる。
「こうなったらコレしかない」
「それは何ですか?」
(何だろう?)
「アヌビス監修ジャイアントアント撮影サバト製作【ユニコーンも御奨め!性夜の導きパートW 特集ああ素晴らしき肉体美・鉱山夫編】だ!」
「・・・・はい?」
(何だって〜〜〜〜〜!)
「しかも初回限定版!鉱山夫のアレ、モザイク無しバージョンだ!!」
「・・・・・・」(ポカーーーン)
(ほ、欲しい!!!)
「どうだ、アンテはいるか」
「いりません!!!!」
「だったら私にクレ〜〜〜〜!!!!」
 叫び声とともに飛び上がったドワーフは一目散にオレに駆け寄るとオレが手にしている物=限定本を奪い取ろうとする。
 そのタックルを華麗に躱すと、限定本を左手で頭上に掲げ右手をドワーフの頭に置いて跳びかかるのを阻止する。背の高さがオレの腰辺りなだけに奪い取ることが出来ないと判断すると両手を振って駄々をこね始める。

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