手にした水筒をバックにしまい込むと、紐を引き締める。キュッと音を立てて縛り上げるとバックを背負い、隣にいるアンテに話しかける。
「よし!行くぞ、アンテ」
「了解ですベルツ」
オレに返事をするアンテも同じバックを背負う。
「ところで質問したいのですが」
ルタの好意で貸してもらっている部屋から外に出ると一階へ向かう廊下を歩いてゆく。途中ルタとミュー、ルタの両親に挨拶をすると外に出て、暗くなり始めているラウンドの街中を歩き出す。
「何か聞きたいことでもあるのか」
アンテは頷くと、背負ったバックを揺らしながら訊ねる。
「私たちはこれから山登りをするのですよね」
「ああ、そうだけど」
「では、街の中心部へ向かうのは如何してですか?まさか街中で迷子ですか」
その指摘通り、オレたちは今この街の中心部へと向かっている。因みにオレの側には『ラウンド職人通り』の立札が自己主張している。言い訳は通用しませんよと睨みつけてくる。
そんなアンテにオレは、真顔で答える。
「もちろん知っているよ。ルタに案内してもらったんだから」
うんうんと頷くオレにアンテは更に詰め寄る。
「このバック、水筒以外入れていけないのは何故ですか?しかもカラですよ」
「それについては秘密だ」
言い切るオレにアンテは渋々従う。
「突然送り付けられたモノなんですから、慎重に対応するべきです。全くベルツときたら・・・」
二人で街中を歩き、何度か道を曲がると目の前にある店が姿を現す。その店を見たアンテは驚き、次に蔑むような顔をする。
「ここはサバトではないですか。まさか、入信されるのですか!遂にベルツも社会的落第者に・・・私が至らぬばかりに。マスターを守れないなんて、ゴーレムとしては失格ですね」
両膝を着いて力なく項垂れるアンテに何を言ってるとばかりにチョップをくれてやる。
「いきなり何をするのですか!」
額を押さえて抗議するアンテに、オレは指先で額をツンツンと突きながら顔を顰める。
「早とちりし過ぎだよ。ほら、取り合えず立って中に入るぞ」
「わ、解りました。だからそんなことしないでください」
両手で額を庇いながら立ち上がったアンテは、言われるままにオレの後に着いてサバトに入った。
受付をしている魔女に背中のバックを見せると、魔女は付いて来てくださいと歩き出す。
「お二人で最後になります。他の当選者の方たちはすでに集まっていますよ」
「時間までまだあるはずだけどな。如何やら待ちきれないみたいだね」
「はい。みなさん、早く時間にならないかとソワソワしています」
オレと魔女が仲良く話していると、強烈な視線が背中に突き刺さってくる。恐る恐る振り返るとじーっとオレを見詰めるアンテの視線がそこにあった。
「えーと、如何したんだアンテ?」
「いえ、何でもありません」
「そうやって見られてると怖いんだけど」
「ただ見ているだけですから、問題ありません」
「・・・ひょっとしてヤキモチ?」
「?!き、気のせいです!ベルツは自意識過剰すぎです」
「あの〜〜」
「・・・顔を赤くして言っても説得力無いけど」
「勘違いです!気のせいです!目の錯覚です!」
「その〜〜お二人様?」
「本当かな〜?案外寂しかったんだろ」
「ですから」
「何故私が寂しがらなければいけないのですか!」
「だから」
「解っているくせに」
「・・・・・」
「解りません。何故私が」
「そんな風に拗ねてると」
「・・・グシュ、グスッ・・・ウエ〜〜〜ン」
「「ん?」」
「ヒック、ヒック・・・グスッ、グスッ」
突然聞こえてきた泣声に二人が声のした方向を見ると、道案内をしてきた魔女が廊下に座り込んで泣きじゃくっていた。側を通り過ぎる人や魔物娘たちがヒソヒソと話している。その話し声に慌ててオレとアンテの二人で慰めだす。
「ど、如何したのかな?ほら落ち着いて」
「さあ、良い子ですから泣き止んでください」
「ヒック、グジュ、ヒック・・・う、うん」
差し出されたアンテの手を掴むと立ち上がり、上目使いにオレたちを見つめてくる。その視線に二人してたじろぐ。
「グスッ、もう喧嘩しません?」
「ああ、もちろんだよ!な、アンテ!」
「え、ええ!そうですよ。もうしませんから」
じーっと涙を浮かべながら見つめてくるので肩を抱き合い仲直りしたことを懸命にアピールすると、「良かったです」と頷き
ポ ロ リ ゴ ト ン
・・・・・・・・首が落ちた・・・・・
「「・・・・え??」」
声も出せず二人で固まっていると首の部分がもぞもぞと動きだし笑い声と共に魔女の顔が現れる。
「あははは!ひっかかりましたね!大成功です!」
やったやった!とその場で飛び跳ねている魔女にアンテはポカンとしている。オレは落ちている首を拾い上げるとそれを眺めて
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録