崩れた建築物。乱立する柱の数々。それらが砂の中から突き出ている光景は、まるで巨大な樹々が所々に顔を出しているようだ。
そんな光景をオレは、じっと眺めていた。
(遂に辿り着いたぞ!)
湧き上がる興奮に身体が震えてくるのが止まらない。
オアシスの村から旅立って三日、漸く目的の遺跡群の地に辿り着いた。
(緊張の連続で、ほんと疲れたよ。ギルタブリに襲われたときは、もうダメかと思ったもんな)
何とか逃げ出したものの、逃げ込んだ先の洞窟で夜盗達と出くわしてしまい、其処からも逃げ出してみれば先ほどのギルタブリが何故かデビルバグの群れを引き攣れて現れる始末。
「漸く見つけたぞ!アタシから逃げ切れるとって、何だコイツらは?」
「逃がさねえぞ、こんガキャって、何で魔物がこんなに?」
「「「「キャー!!!男が一杯よーー!!!」」」
「「「「ギャー!!!魔物娘が一杯よー!!!!」」」
双方から悲鳴が湧き上がった。
魔物娘からは嬉しさのこもった悲鳴。
対して夜盗達からは文字通りの悲鳴。
そのチャンスを逃さずオレは、一気にその場から走り出す。
「まちな!逃がさないよ!」
「ま、まちやがれ!こんガキャっ!」
走り出したオレにギルタブリと夜盗の頭目と思えるヤツが叫びながら駆け寄ってくる。
オレは腰のポーチから煙玉を二つ取り出すと、振り向きざま追い駆けてくる二人に投げつける。
「そんなもん、このアタシに通用すると思ってるのかい」
爪と尻尾で二つ共割ったギルタブリが、ニヤリとサソリ科特有の嗜虐的な笑みを浮かべる。が、すぐに異変が起こる。
「ンっ!な、何だこれは?か、体が、ンァッ!!へ・・変だぞ?!」
突如、湧き上がる体の異変にギルタブリはその場に蹲ってしまう。
それはギルタブリの隣りにいる夜盗の頭目も同じだった。
「テ、テメェ!何しやがった?!」
「いま投げつけた煙玉。アレにアルラウネの蜜とホルスタウロスのミルクに、あと興奮剤を混ぜてあるんだ」
オレのタネあかしに、両方とも絶句してしまう。
「な、何ですって!アッ!」
「こ、このっ!おファ!」
二人ともいい具合に効いてきたみたいだ。
「オマケにこの幻覚作用のある粉もプレゼントしちゃおう」
やめろとか、待てとか言っているが気にすることなく、オレは鼻歌交じりにその粉をご丁寧に風上に回ってから振り撒く。月明かりを受けてキラキラと輝くそれは、すぐに辺り一面に広がり効果を発揮する。
「ああ、アンタってなんて素敵なの!」
「くー、美女がいる、絶世の美女がここにいる!!」
早くも効いてきた二人から視線を伸ばすと、その先では予想通りの騒ぎが繰り広げられている。
「うォー!オマエはオレのものだ!」
「あん!そうよ、アタシはアナタのものよ!」
「さあ、いけッ!イってしまえ!」
「いいわーー!!いいのよーー!!」
「も、もうダメだーー!」
「まだよ!もっと頑張りなさい!!」
「おねえちゃーん、合いたかったよーー!!」
「ええ!おねえちゃんはここにいるわ。さあ、いらっしゃい」
「ほ、本当か?本当にオレの子供を・・・」
「うん、本当よ。アナタの子供なら十人でも二十人でも生んであげる♪」
「もう夜盗なんて辞めてやるーー!!」
「そうよ!これからは二人で愛の巣を築くのよーー!!」
大乱交場と化したその場にオレは「仲よく暮らせよー」とお祝いの言葉を残して立ち去って行き。
こうしてオレの目の前に目的の遺跡群が現れたのだ。
「よーし、やるぞーー!!」
気合を入れるとオレは、第一歩を力強く踏み出した。
ダンッ! ピキッ!
「えっ?」
オレの踏み出した第一歩は、入り込んだ遺跡の小部屋の床全てを崩壊させた。
「うそだろーーー?!」
そんな叫び声を残して、オレは暗い穴倉へと落ちていった。
パラパラと何かが落ちてくる音にオレは目を開ける。
「ここは・・・そうか、オレは地下に落ちて」
まず身体に意識を向ける。手や足をゆっくり動かす。
(どうやら骨折は無いみたいだな)
それから身体をゆっくり起こす。・・・五体満足らしい。
次に周りを見廻してみる。少し薄暗いが見えないことはない。良く解らないものがあるが、いくつか解るものもある。例えば自分の下のある物。
(どうやら、ベットらしいな)
床に降りると上を見上げる。落ちてきた小部屋の入り口が見えるが、そこは高すぎる位置に在る。周りにある物を積み上げれば何とか届くと思えるが、一人では動かすことが無理なものが多い。
「ま、いいか」
オレは、この部屋の出口と思える場所に歩き出した。
部屋を出ると、人が四人横に並んでも大丈夫な通路と思える場所に出る。前と後ろに伸びておりいたる所に部屋の入り口が並んでいる。オレ慎重に足を進める。途中、部屋の入り口を慎重に覗き
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