the Creator

古びた木製の扉が開く

ギシギシと音を立て、客を出迎える

「いらっしゃい」と声を出したのは、恰幅のいい女店主

ここは武器屋

城下町の路地裏の、知る人ぞ知る名店だ

武器の手入れも行っていると聞き、テリアも訪れてみたのだが……


「あまり大きい設備は無いのですね」


立地の関係上か、品物は多くは置けず、工房に続く扉もまともに閉まらない位置にも置かれてしまっている


「悪いねぇ、修理や手入れは本業じゃあないからね。でも、ウチは品質で勝負してるから!見なよ、かつて有名な工匠が出がけたこの刃!」


妙なポーズでそれをアピールすると、店主は接客を始める

しかし、テリアが武器の手入れを依頼すると、少し機嫌を悪くしたのか、接客態度が変わってしまう


「ああ、アンタもそれかい……まぁいいけどさ。オイ、仕事だよ!とっとと来な!!」


ぶっきら棒に店の奥に向けて声を発する

誰か他に店員がいるのだろうか


「アタシは武器や防具は弄れなくてね、それで人を使っているんだよ。モタモタするんじゃないよ!客だって言ってんだよ!!」


更に声を荒げて呼び出す。あまりいい感じはしないがそこは店の事情だ

テリアも一言二言言いたい言葉を喉元に留め、その店員を待つ


「……」


店の奥から現れたのは、飾り気のない服を着た綺麗なショートの茶髪の少女だ

だが、その顔を見たとき、テリアはほんの少しだけ驚いた


「サイクロプス……」


そう、目の前に現れたのは大きな瞳の単眼の少女だった


「仕事だ。まったく、アンタみたいな化け物を使ってやってるこっちの身にもなれってんだ。早くしな」

「……ッ」


同種ではないとはいえ、テリアも魔物の娘だ

その発言にカチンと来るところがあった

しかし、余計な事を言って迷惑がかがるのは単眼の彼女に対してだろう

喋りたがりのテリアも、そんな一般常識くらいは持ち合わせているつもりだ

部外者が口を挟むことではない。またしても言いたいことが言えずグッと堪えると、単眼の少女に自らの槍を渡す


「悪いね、見苦しいもん見せちまってさ。アイツ、働き口がないだろうからウチで使ってやってんだけどさぁ」


その言葉を聞くと、彼女は顔を伏せたままそそくさと店の奥へと消えて行った

サイクロプスという種族はとても繊細だ

自らの顔に強くコンプレックスを持ち、他者とは違うその身体を好ましく思ってはいない

……と、よく言われているが、本当のところは定かではない

勿論、個体によって全く考え方は違うだろうが……


「まー愛想は悪いわ見た目がアレだわで、こっちも困っててねぇ。誰のおかげで飯が食えてるんだか」


見た目の事はともかくとして、愛想は本人の問題の為触れないことにしておく

作業をする人間と経営する人間が違うのは別段珍しいことではない

商人と鍛冶師ではまるで職種が違うのだ。知り合いで共同経営する事もあれば、外部から雇う事も多々ある

しかし、彼女達はそれとは少し様子が違うようだ


「お時間はどれほどかかりますか?」


場の空気の悪さからか、早く切り上げてしまおうとつい口が走る

女店主はムスリと顔を強張らせ、大きくため息をつき答える


「ああ、30分くらいじゃないかね。物によっては一時間、それでなくてもアイツの出来次第だよ」


どうも彼女の話になると機嫌を損ねるようだ

30分から一時間、こんな居心地の悪い所に居られるわけもなく、テリアは足早に店を去る

適当に買い物を済ませる頃には終わっているだろうと踏み、それまで時間を潰すことにした

あんな場所であの女店主となんて一緒に居られるワケが無い

詰まっていた息を一気に吐き出し、呼吸を整える

噂通りの店ならば、期待通りの手入れくらいはしてくれるだろうが、あの様子ではどうなることやら

ある種の期待と不安を胸に、大通りの人ごみの中へ身を投じて行った……



――――――
―――




結果は上々

いや、思っていた以上の成果を出した

手渡されたその槍は、テリア本人が手入れをするよりもずっといい仕上がりを見せていた

この店が何故隠れた名店と言われているのかを理解したのだろう

なるほど、と納得すると、テリアはこの槍を持ってきた彼女に声をかける


「噂が流れるだけの事はありますね。恐らく、私が出会った鍛冶師の中でも貴女は最高峰の腕を持っています」

「……」


リップサービスなどではない、心からの称賛

お世辞を嫌うテリアから出たその本心の声は、単眼の彼女の頬を染めさせた


「……そう言ってもらえるのは嬉しい」


気恥ずかしそうに視線を逸らし、静かな声を漏らした

こうしてみれば、サイクロプスも人間と大差ないものだ

その腕の良さを褒める
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