青空カフェと竜の唄

「あ……いらっしゃいませー」


扉を開けた先
居眠りをした黒髪の少女が起き上がり出迎える

透き通る声に導かれながら、瓜二つの姿をした二人の少女をテラスのテーブルへと案内する


「随分とシックな感じじゃのう」

「素敵な場所ですね、竜神さま」


見渡す限りの大草原
空は雲一つなく澄み渡り、遥か遠くに見える山々は大地との美しい調和の境界線を作り出す


「それはそれは、ありがとうございます」


ここはカフェ、青空カフェテラス
サキュバスを偽る黒髪の少女、テリアが切り盛りをする店

そこに現れた二人の女性
一人はまるで年寄りかのように話す"竜神さま"と呼ばれた少女
もう一人は少し髪が長い少女

同じ服装に同じ顔
まるで双子のようだ


「ん?一応言ってはおくが、ワシらは双子ではないぞ?」


見つめられた視線を感じとり、一人が口を開いた


「分かっていますよ、ただ……フフ、あまりにも可愛らしかったもので」

「まぁ、お上手ですね」


お世辞
とまではいかないものの、適当な返事に喜びの感情を当てられてテリアは少し困惑する


「お主はこちらをからかったつもりだろうが、こっちの娘は少し天然じゃ。変に弄ると真面目に返されるぞ?」

「ええ、覚えておきましょう」


天然と言われワザとらしく頬を膨らませて怒る髪の長い少女を尻目に話は続く



「とりあえずこちらに腰をおかけください。ところで、今日はどうしてこちらに?」

「何、たまたま良さげな店を見かけただけじゃ。他意は無い」


ポスンと音でも出すかのように、少女たちは用意された飛び乗るように椅子に座る
小柄な彼女たちには少し大きすぎたようだ


「あら失礼しました、他の席をご用意しましょうか?」

「他も同じじゃろうに、このままで構わん。この場所がいい」

「かしこまりました。それではコーヒーをお持ちいたします」


注文の前にまずはコーヒーを出す、それがこのカフェのルールだ
スカートを手に取り、大げさに一礼をして見せる
しかし、そんなパフォーマンスに興味は無いのか、二人は二人の世界で話を始める

バツが悪そうに、テリアは困った顔をしながら店の中へ引っ込んでいった


「……ちょっと可哀想じゃなかったですか?」

「ああいうのは相手をするだけ疲れるだけじゃ。それよりワシはお主と話しておる方がいい」


気持ちのいい風が吹くこの場所で
二人の少女は互いに見つめ合いながら、時々照れたような仕草をしながら話に花を咲かせる

昔を思い出し、二人で色々な場所を見て回った話
これから先二人が向かう場所への期待を胸にした話

微笑ましい少女たちの語らいという唄は、まるで終わることを知らないように続く

ほんの少しの時間が経った頃
忘れていた存在が音もなく近づいていた


「お待たせいたしました、当店の無料のコーヒーとなっております」


わざわざ話を止める必要もないだろうと
テリアはコーヒーだけを差し出しすぐに引っ込むつもりでいた

いたのだが……


「どうですか?あなたも私たちと語らってみませんか?」


きっかけを作ったのは髪の長い少女
意外な問いを投げかけられてまたしても自分を困らせてくるこの少女
一体何を考えているのやら


「いえいえ、お客様同士で盛り上がっているのに私が入るのは無粋かと」

「そんな事はありませんよ、さっきもあなたから色々と話してきていたんですから。きっとお話したかったんですよね?」


確信を突いているようでそうでもないようで

基本的に、この店に客が来ること自体稀だ
テリアはいつも暇を持て余している
よく泊りに来る友人はいるが……客はまた別の存在
こうたまに来る客には珍しくて声をかけずにはいられないのだろう

心のどこかで思っていたことを読み取られたように感じた彼女は観念する


「中々手ごわいですね、あなた」

「?」


誘ってきた少女は分かっていないようだが


「ええ、参加させてもらえるのなら是非。私も暇ですので」

「客を目の前にして暇とは……見上げた根性しておるのう」

「神経図太くなければやっていけないので。数は多くはありませんが、変わったお客さんばかり来ますし」


開いている椅子に腰を掛け、テリアは二人を交互に見る

同じ顔でも少しずつ違っているものだ
髪の長い少女の瞳の色は宝石のような青色、竜神と呼ばれる少女は透き通るような緑色
目つきも違い、片や優しい表情ならば片や釣り目になった性格の悪そうな……


「悪かったのう」

「何も言っていませんが」


表情に出ていたのか、すかさず顔を背けてやり過ごす
何故悟られた、とらしくもない今の自分に呆れる


「どうも数年お店を留守にしていたおかげで本調子ではないですね」

「なんのこっちゃ
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