病魔の接吻

「ふぅ...... ごちそうさま」
「はい、お粗末でした!」
「おいおい、こんなに美味いコンソメスープがお粗末な訳ないだろ!」
「フフフフフッ!もうシックったら
hearts;!」

 ようやく食べ終わった...... しっかり冷まして食べるを完食まで続けるとそこそこ時間が掛かるな......

 けどやっぱり、最高に美味かった!本当にごちそうさま!

 だが、美味いものを食べた余韻に浸ってる場合ではなかった。

 この楽しい雰囲気に水を差すのは気が進まないが、僕は意を決して、テーブルを挟んで向かいに座り、穏やかな笑みを浮かべるイルネスに切り出した。

「......なあ、イルネス」
「ん?なにかしら?」

 僕の顔を見て何かを察したのか、それとも空気が変わったのを感じたのか。イルネスは呆気に取られたような表情になったが、僕は構わず言葉を続けた。

「この街から逃げよう」

 僕のこの一言でイルネスは全てを察してくれたようで、穏やかな表情から一転、真剣な表情に変わった。

「いつまでもこの街にいたら、いずれ君は殺される!」

 特に騎士団の奴らに見つかれば、イルネスはもちろん、彼女とこうして仲良くしている僕も命はないだろう。

 奴らや住民にしてみれば、一刻も早く消えてほしい街の癌を駆除できる大義名分が出来たんだからな。

「だから、早くこの街から逃げよう!騎士団の奴らに君の存在がバレる前に!」
「そうね。なら、今夜にでもここを発ちましょうか」
「ああ、そうしよう!」

 住民も騎士団も僕の家には近付かないとはいえ、いつどこで騎士団に嗅ぎつけられるか分からない。逃げるなら今のうちだ!

「それじゃあ、そうと決まれば......」
「イルネス?」

 向かいの席に座っているイルネスがおもむろに立ち上がる。すると、なぜか玄関の方へ歩いて行く。

「買い出しに行ってくるわ」
「はっ!?買い出しって!?」
「この街から逃げた後は長旅になるでしょ?その間の食糧と...... あと、出来ればテントや寝袋なんかも欲しいわね」
「だったら、僕が行く!魔物の君がこの街で買い物なんて危険過ぎる!バレたら命はないんだぞ!」
「フフフッ、心配してくれるのは嬉しいわ。だけど、こうすれば......」

 不安と心配でいっぱいの僕とは正反対に不思議な程落ち着いているイルネスは、何かを念じるように目を瞑り、右腕を上げて、指をパチンと1回鳴らした。

 すると、イルネスの足元に魔法陣が浮かび上がり、イルネスの身体が上から順に変化していった。

「......バレないわ」
「......なるほど。朝にパンを買ってこれたのも、その魔法のおかげか」
「ええ。人化の魔法。魔物なら当たり前に使える魔法よ」

 人化...... つまり人間の姿に変身出来るってわけか。

 実際に今のイルネスの姿はまごうことなき人間だった。

 毒々しい紫の肌は綺麗な白い肌になり、目を惹く青緑色の瞳は僕と同じような黒い瞳に変わっていた。

 ただ唯一変わっていないとすれば、女性としての美しさだけだった。

「便利な魔法だな」
「驚かないのね?」
「まあ、魔法は騎士団の奴らので見慣れてるからな」
「あら、そうだったの」

 だが、イルネスの魔法は奴らの荒々しい攻撃魔法とは違って、どこか優雅というか、イルネスらしさを感じた。

 なんてことを思っていると、イルネスは黒いローブを羽織って、魅力的過ぎる身体を包み隠した。ってそのローブは......

「それ僕のローブだよな?」
「ああ、ごめんなさい。使っていいかしら?」
「どうせ、パンを買いに行く時にも使ったんだろ?」
「いくら見た目が人間でも、この鎧じゃ目立っちゃうから......」

 目立っちゃうなんてレベルじゃない......  娼婦を通り越して露出魔だ。別の容疑で騎士団の奴らに捕まるぞ......

「まあ、ローブはもう一着あるから、別にいいけど」
「そうなの。それなら遠慮なく使わせてもらうわね」

 イルネスはそう言うと、再び玄関の方に向かった。僕もせめて見送りしようとイルネスの後を追うように玄関の方に向かう。

「それじゃあ、行ってくるわね」
「気を付けろよ。何度も言うが、この街で魔物だとバレれば、君は殺される......!用心しろよ」
「分かってるわ。それじゃあ......んっ」
「えっ?なんだよ?」

 突然、イルネスが僕の方を向き直り、目を瞑って唇を尖らせた。

 これはまるで......

「んもー、鈍いわね!いってらっしゃいのキス!」
「ええっ!?いや、それは、さすがに......」
「大丈夫よ。シックはもう私とキスしたりしても性獣の病に侵されることはないわ」
「えっ?そうなのか?」

 僕の身体に抗体が出来たとかか?ま
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