『…じゃあ、楓、大きくなったらきょーちゃんと結婚する!』
『それまでエッチな事ダメだよっ?ワタシは"せっそー"ある子だもん!』
『えっ、ちゅーはどうかって?………ワタシがしたいからセーフで!』
節操あるんじゃないのかよ。
『…婚約指輪?大きくなるまでこれで我慢してって?………ありがとう、大事にするね!///』
安っぽいおもちゃの指輪を左手の薬指につけて、目の前の女の子が嬉しそうに笑う。
指輪を太陽に掲げ長い間見つめ、腰まで届くような艶のある"黒髪"が揺れる。
……………。
「………ここは」
目を覚ますと見慣れない…じゃなかった。涼花のベッドに寝ていた。
「あっ、兄さん起きましたか?」
椅子に座っていた涼花がこっちを見る。先ほどのようなおかしな雰囲気は消え失せており、少し顔を赤らめてベッドに近づいてきた。
「…さっきはすみませんでした。どうしても我慢が出来なくて」
ハーフとも言えど、吸血鬼の性質も持っている涼花には血の香りはきつ過ぎたのだろう。そして定期的に来る吸血衝動と重なってしまい理性より、魔物としての本能が勝ってしまった。
涼花と暮らしていく上でいつかは起こり得るだろうと覚悟はしていたが、普段大人しい彼女がこうも乱れるとは思わなかった。つい、昨晩の感触を思い出し顔がだらしなくなった所を涼花に睨まれた。
本人曰くあまり魔物娘の性質を良くは思っていないらしく、選んでもらうまでエッチな事は避けていたようだ。
なぜ、良く思っていないかは教えてもらえなかった。まぁ、あまり深く聞くことでもないだろう。
「いや、大丈夫だよ。こっちこそゴメンな……それよりだけどあの後なんだが」
朝からこんな話題はどうかと思ったが聞かずにはいられなかった。
『最後までシたのか』と
「…ふふふ、心配しなくても最後までしていませんよ」
「そうよ、『処女同盟』に違反するもの、あの後すぐに私が邪魔しに入ったわよ」
ひょこっとドアの覗き込むようにして楓が顔を出す。
後半の同盟に関しては突っ込むと面倒なことになりそうなのでスルーを決め込むことにした。どうせ大方ハニトラは仕掛けないとかだろう。後どうやって俺の家に入ったのかもだ
「それより涼花。早くしないと学校遅れるわよ」
「…言われなくても分かっていますよ。じゃあ、兄さん行ってきますね」
不機嫌そうな顔をしながらも涼花は部屋を出て学校へと向かった。
「…なぁ、楓。お前昔から金髪だったよな?」
楓としばらくの間見つめ合うと、不意に言葉がそう零れる。
さっき見た夢が頭の中をチラつく。
「……何言ってんのよ。昔からよ」
呆れたようにため息を付きながらそう言う。
所詮夢だし何かと混ざったかもしれないが、妙な違和感がぬぐいきれないままだった。
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