公園の隅にある砂場で女の子が泣いている。この辺りでは見かけない髪の色をしている。金色と茶色の中間くらいの綺麗な髪だ。
女の子の顔は小さな手で覆われて良く見えない。
『きみ、どこからきたの?』
女の子に問いかけてみる。しきりに何かを呟いていたその子は、静かになると恐る恐るといった感じでこちらを見てきた。
とても綺麗な子だ。きっと大きくなったら美人になるだろう。
見とれている間にまた女の子が泣き出しそうになる。
今泣かれたら確実に警察にお世話になりかねない。慌てて女の子をあやす。
『……ふふっ』
そうすると、不安なのが和らいだのか、はたまた慌てふためく俺の姿が滑稽だったのか、薄く女の子が笑った…気がした。
そして、立ち上がり俺の方に近づいて来る。
『………ん、また…あ……ね』
そして、小さな声で呟いた。
――――――――ピピピピ……
夢、か。
ベットから起き上がり、朝から煩い程に騒ぐ目覚ましを黙らせる。
部屋着から着替えて居間に行くと、一枚の紙がテーブルの上にあった。
『旅行に出かけています。探さないでください。 父より』
とりあえず手に持った紙をちぎり、さっさと朝飯の支度に入る。
「…おはようございます。兄さん」
ちょうど朝飯を並べ終わったころに二階から降りてきたのは、妹の涼花だ。
涼花とは小さい頃からちょくちょく会っていたが、近くの高校に進学するらしく、この春からは一緒に生活をしている。
詳しい話は聞かされていないが、母さんと共通の知り合いのダンピールとも関係を持っていた挙句、二股を今まで引きずってきたらしく。開き直ったのか、涼花を認知し、彼女の母親を内縁の妻にした。
親父、もといクソ野郎は、母と浮気相手から”旅行”と称して、各地を回って楽しんだツケを払わされているというか搾り取られている。
余談だが、涼花も含め、ダンピールは価値観も人間よりのため正直助かっている。
「おはよう、朝ご飯出来てるから早く食べろ。今日から学校だろ?」
「寝起きからご飯とかきついです。兄さんが食べさせてくれるなら話は別ですが」
軽くスルーをして、テレビを付けてニュースにチャンネルを回す。
視界の端で涙目になっている涼花が見えた気がしたがこれもスルーすることにした。
ボーと眺めていたらそろそろ出発する時間になった。涼花もしたくは出来たようで玄関から俺を待っているのかじっとこちらを見ている。
テレビを消して俺も玄関に向かう。
ふと、涼花と夢の中の女の子が重なったような気がした。
続く
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