彼ことオーダーは新しい国で働くこととなる。オーダーが住んでいた教団国家とは全く別の親魔物の国家。不安ではあるオーダーであったが自由に生きたいと願った彼には期待する心が大きかった。
砂が敷き詰められた大きな広場にオーダーは立っている。何百人と人が収まるであろう広場だがそこに見える人影は人間、魔物ともにまばらだ。
なぜ、このような殺風景な場所にいるかといえばオーダーにあてがわれた仕事の為だ。
「ちゅうもーく!!」
荒野を突き刺すほどの大声が響く。散り散りになっていた人、魔物が広場の中心に集まる。
「本日は嬉しい報告がある。我が軍に新たに入隊する仲間を紹介する。」
心地いいまでの滑舌と張りのある声に導かれオーダーは隊長らしき人物の隣へと歩を進める。
「彼は特別入隊となったオーダーだ。皆よろしく頼む。オーダー挨拶を。」
オーダーは簡単な説明で軍に入隊することは知らされていたので簡潔に挨拶をする。なにより教団国家での軍での生活は長い。どこも似たり寄ったりのものだ。
挨拶をすれば隊列の最後尾に整列する。オーダーの経歴に関する噂が流れているのか好奇の目で見られるのはしょうがないことなのであろう。
「あんた連れて来られた翌日に入隊とは変わっているな。普通は奥方が出来て一ヶ月は離してもらえない。独り身でこの国に籍変えできるなど珍しい。」
そうやって休息中に話しかけてきたのは緑色の皮膚に頭に角が生えた魔物だった。助けられた彼女の下半身は蜘蛛のそれだったがこちらは二本足だ。
「いや、急にすまない。私はオーガのミカという。」
沈黙していたのに気にしたのかミカは右手を出し握手を求めてきた。
「こちらこそ、すまない。慣れない土地で緊張しているのかもしれない。俺ははオーダーだ。よろしく。」
手を握るとオーダーはミカに強い力で引っ張られミカにもたれ掛かってしまう。耳元にさっきとは打って変わる野性的な声が入る。
「あんた、美味そうだ。今ここで私のものにならないか?」
強く抱き寄せられ今にも首元にしゃぶりつかれそうになった時に首元につけていたペンダントが服の隙間から落ちる。
「ひっ」
ひきつるような悲鳴をあげ急いでオーダーを引き離す。
「あんた、まさか。カナコ様のお手つきなんて…… オーダー私はあんたに何もしていない。だからこのことはカナコ様に言わないでくれ。頼む。」
ペンダントの先の角の装飾品を見たミカは先ほどの獣のような声音が嘘のように泣きそうな顔で懇願してきた。
「いや、少し驚いたが怒ってはいないよ。でもカナコ様とはいったい誰のことだ?」
「は?」
ミカは涙を引き驚きとともに顔を歪ませる。
「あんた、わたしをおちょくっているのか?」
ミカが何に怯え、何に怒っているのかわからないが相当にまずい。
「そのカナコ様の角を首からぶら下げておいて、カナコ様が誰だと?己が身の幸福を足蹴にするとは許せない。なにより我が国への侮辱だ。」
「待ってくれ!俺にはなんのこ…」
「問答無用!」
反論の言葉は遮られ怒気とともに拳が振り抜けられる。
教団国家の軍として働いてきたがその拳を見ることも叶わず、体も動かない。一瞬にして魔物との能力の違いを肌に感じながら、意識が遠のく。
晴れやかな水色の淡い空を見上げながらオーダーは意識手放した。
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