街と街を繋ぐ街道。右にはハニービーやアルラウネの生息する森。左には静かにせせらぎを奏でる川。
そんな道を、俺とバフォメットの少女は歩いていた。
「ひとまず、今日は次に着く街で宿をとるかの?」
「そうだな。確かこの先にある街は親魔物領のはずだ」
「どんな街かのう?楽しみじゃ」
少女はワクワクという表現が似合う笑みを浮かべる。
そんな彼女の頭を、俺は軽く撫でた。
彼女の名前はロード=ヴェルベット。俺の妹だ。
もちろん俺は人間なので、血の繋がりは無い。バフォメットにとっての『兄』とは、他の魔物にとっての『夫』と同義だ。
ロードは俺を『兄』として慕ってくれるが、俺は彼女に兄らしい事は何一つやれていない。
できている事と言えば、ただ彼女の傍に居る事だけだ。
けど、それが何より嬉しいと彼女は言ってくれる。
結局、俺は彼女の優しさに甘えてるだけだ。
彼女のためにも、俺はもっと強くなりたい。肉体的にも、それ以上に精神的にも。
「ラクスー?どうしたー?」
目の前で、ロードが心配そうに訊く。
どうやら呼ばれていた様だ。全く気付かなかった。
「ワシが話し掛けておるのというのに、上の空とは心外じゃのう。何を考えておったのじゃ?」
「ああ…、いや、なんでもない」
咄嗟に平静を装うが、ロードは俺が悩み事をしていた事ぐらい感づいているだろう。
「ふむ、なら良いがの。可愛い妹の前でぐらい明るくしてはどうじゃ?」
それでもロードはしつこく言及したりせず、そう促した。
「ああ、なるべくそうするよ」
「うむ。ではさっさと行くぞ!お腹減ったのじゃー」
俺が答えると、ロードは納得した様子で歩きだした。
そんなロードの背中を、俺は地図を見ながら追い掛けた。
「『隔壁の街』、か。どんな街なんだろうな」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ふおお…、大きい城壁じゃのう…。ワシらの街とは大違いじゃ」
街に着くや否や、ロードはそう感嘆の声を漏らした。
この街は、外壁が異常に高い。まるで街自体が塔か何かの様に錯覚するほどにだ。
「ま、とりあえず入るか。どこかに門番が居るだろ」
「そうじゃな…、む?もしやあれではないか?」
ロードが指差す先には、灰色の城壁とは違う茶色の扉と、数人の人影が見えた。
「そうだな、じゃ行くか」
ロードの手を取り、門番の所まで歩を進める。
「人間一人とバフォメット一人。しばらくこの街に滞在したいのですが」
「はい、かしこまりました。どうぞ楽しんで下さい」
門番にそう告げると、愛想よい笑顔を返してそう言った。
その後ろで、別の門番が何やら手続きをしている。
「さ、行こうロード」
「うむ」
俺とロードは、『隔壁の街』へと足を踏み入れた。
「中は意外と普通の街だな」
ロードと街を散歩する最中、俺はふと呟いた。
「そうじゃの。まあ平和って事で、良い街ではないか」
「まあ、な」
そうロードと他愛のない話をしている時――、
「もしもーし?そこのお兄さんとお嬢さーん?アイス買わなーい?」
出店らしき物を出しているラージマウスに話し掛けられた。
「…もしかして俺達?」
「そうそう、そこのラブラブカップル♪いや、バフォメットだからラブラブ兄妹の方が良いかな?」
ラージマウスの店員はニコッと八重歯を光らせながら言う。
「え、えへへ…ラブラブ…。ワシと兄上が、ラブラブ…、うへ、うへへへ…♪よ、よし。気を良くしたからアイス一つ買ってやろう」
うわっ!見事に店員の話術に嵌まってる!
「ホントッ!?さっすがバフォ様!何味にする?どれでも一本15ドル!」
ラージマウスの店員は上機嫌でアイスを乗せるコーンを取り出す。
「どれにするかの…。ラクスはどうする?」
「俺はチョコ味」
「お、意外だねー。お兄さん甘党?」
コーンにアイスを乗せながら店員は驚いた様に聞いてくる。
「別に…。ただ、チョコが好きだから」
「そっか、バフォ様は何にする?」
「バニラ味!」
「ほいさ!」
やたらとテンションの高い二人を見ながら、俺は妹の事を考えていた。
(あいつ…、今どうしてんのかな)
頭の中に、幼い頃のリィナとの思い出が蘇る。
(リィナもチョコ味が好きだったっけ。二人で良く買いに行ったよな)
今更ながら、サバトに置いてきたリィナの事が心配になってくる。
(俺は…、この旅に出て良かったのかな…)
もう会えないと思ってた妹に再会出来たのに、また妹を一人にして旅に出て…。
俺って最低な奴じゃないだろうか…?
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録