騎竜の契り

 この国に住む男であれば、誰しも竜騎士を一度は夢見る。あの雄々しく美しい竜を従え、それに跨り大空を舞う。そして国の為に戦う。まさに男の夢というやつだ。
 しかし、竜騎士になれる人間は極小数で、夢やぶれた男達は羨望と嫉妬が入り混じった目で竜騎士を見ることになる。その中には教団に入り、魔物はワイバーンは悪だと声を上げるものも少なくはない。そうして自分の夢見たものを汚し、自尊心を保とうとする人だっている。それほどまでに竜騎士とは男達にとって強い憧れだ。
 だから、幼い頃から竜騎士として未来を嘱望されてワイバーンと共に育った僕はとても恵まれた存在なのだろう。
 この国のワイバーンの多くはタマゴから孵り、幼い頃から親ワイバーンと共に人間に馴染んでいくが例外はいくつかある。その一つが、親ワイバーンが戦死して子育てができなくなった場合だ。
 そうした場合、誰がそのワイバーンを育てるのか。この国ではそれを選ぶ為に子ワイバーンと多くの子供を対面させるというシステムがある。母の愛に飢え、啼くワイバーンと対面させその泣き声を止める事が出来た少年がその竜を引き取ることが許されるのだ。
 一体何がどうして僕が選ばれたのか、それは分からない。ただ幼い僕は泣き喚く彼女を見ていたら無性に悲しくなってきて、彼女と一緒に泣いてしまって。気がついたら泣いているのは僕だけで僕は彼女に頭を撫でられていた。
 こうして彼女は僕の家に引き取られ、彼女は僕を兄と慕うようになった。弱虫で泣き虫な僕だったけれど、それでも彼女は僕を兄と呼ぶ。
 僕を僻む人も多かった。多くは僕と同じ日に彼女に会って、選ばれなかった男の子だ。お前なんかそのうち竜になった妹に喰われるぞ、と言われ石を投げられ、泣きながらそんな事ないと言っても誰も彼女は化物だと言って憚らず、結局怒った妹がいじめっ子を追い散らす。そんな毎日。
 それでも彼女は、僕を兄と呼ぶ。
 大人になって竜騎士を志した。親も、妹もそれを歓迎してくれた。槍の使い方も、騎乗の仕方も必死になって覚えた。
 しかし、僕が妹と戦い勝てた事も、発情した彼女を満足させて組み伏せた事も未だに無い。竜騎士に大切なのは主従の信頼関係だという。つまり、僕はまだ彼女に主人として誇れる事をしていないのだ。
 僕は弱かった。幼い頃からずっと彼女に泣き顔ばかり見られて。彼女に守られてばかりで。こんな男よりもきっと彼女に相応しい竜騎士はいくらでもいるはずだ。認めざるを得ない。悲しいけれど、そして気が違いそうなほどに悔しいけれども。
 それでも、まだ彼女は呼ぶのだ。僕のことを、兄と。

                *

 竜騎士見習いは城のすぐ近くに建設された訓練場で、日夜激しい訓練を課される。相方の竜とは別行動をとらされ、ワイバーンはワイバーン専用の訓練を施される。
 朝早くに始まり、日が沈むまで。夜遅くまでやらないのは、パートナーとの親睦を深めるための配慮という名目だが、実際には騎竜の性処理をするためである。
 その日も訓練に疲れた体を自室のベッドに横たえていると、控えめに扉をノックする音が聞こえた。
「兄者、すこしいい……?」
「ああ、いいよ」
 返事を待ってから、妹が扉を開ける。すりすり、と床に尻尾を引きずる音が響く。
 ベッドから状態だけ上げると、妹が僕に近づいてこちらを見下ろしていた。アッシュグレイの前髪の下から覗く瞳の色で要件を悟る。
「その、ガマン、できない、から」
 途切れ途切れに言うなり、彼女が僕の上にのしかかってきた。瞳が劣情にぎらついていて、飢えた目線が僕の腰元に注ぎ込まれていた。器用に翼爪を動かし、僕の肌を傷つけないようにズボンを引きずり下ろす。
「するの?」
「うん、兄者は動かなく大丈夫」
 彼女が発情し、こうして夜に相手をするたびに必ずこう言われる。彼女は僕に尽くしているつもりなのかもしれないが、なんとなくそれが寂しい。しかし、そんな気分とは裏腹に股間の逸物は固くなり始める。
 その感触に表情を和らげながら、彼女は僕にしなだれかかった。せめて口づけは僕からしようと彼女の頭を抱き寄せ、唇に舌を差し込む。彼女は甘えたように鼻を鳴らしながら、僕の舌に応えて絡める。
 ちゅっ、ちゅとお互いの唇を吸い合う音が二人きりの部屋に響く。その音がなんとも淫猥で、僕たちはその音に酔いしれるように互いの唾液を求め合い、さらに激しく絡まりあった。
 彼女が焦れて、僕の上で軽く前後に腰を揺らす。彼女から滴る蜜がしとどに僕の肉棒を濡らし、秘所と重なり合ってねちねち、と湿っぽい音を立てる。
「ぷはぁっ。兄者、気持ちいい……?」
「ああ、すごくいいよ」
 ようやく唇が離れ、彼女の唇から垂れた銀糸が僕の顎を汚した。キスと軽い素股だけでもう僕のモノは膨れ上がり、それを見た
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