ヘンな人達

目の前の床には、置かれた魔法陣が光っている。
「行ってらっしゃい、イルティネさん」
「ああ、じゃあ行って来る」
昨日は泉に行かなかった。気付いたら夜だったし。

あの後、ワンピースがユニッセでべとべとになっていて、洗濯したらユニッセの蒼で白のワンピースは綺麗に染まっていた。
ユニッセは『これで一心同体(一心?)ですね。キャー♪』とか言って浮かれている。
その蒼いワンピースを身につけて、またあの泉に行く。一日開けてしまったが、コトラは来てくれてるだろうか?



――ヴゥン

泉は今日も晴れている。
またコトラ以外の人間が来るかもしれないので、一昨日と同じく木に登って待っていた。
暫くしてコトラがやってきた。首を回して辺りを見回し、視線を上げて私を見つけた。
「いた」
「見つかった」
私は木から飛び降りるとコトラに近寄る。
「木登り好きなの?」
「そう言う訳じゃないんだけど、どちらかと言うと高い所が好き」
「そっか。昨日はどうしたの?」
お互いにここで会うと約束した訳ではないのだが。
「ちょっと、用事というか」
ユニッセと取っ組み合いしていたなんて言えない。
「ふーん」
「昨日待ってた?」
「え?あ、いや、そんなんじゃないよ」
コトラは私を待っていたようだ。
「今度は約束しておこうか?」
「そうだね」
会って何をする、と言う訳ではないのだけれど、待ちぼうけをするより良いだろう。
一昨日の会話から思うに、コトラは自分で食糧を得なければならないようだし、私と違い無駄な時間を過ごさせる訳にはいかない。


「そうそう。さっき、ヘンな人達に会ってさ」
コトラが喋りながら泉の方へ向かう。
「ヘンな人達?」
「うん」
人間の中にもヘンと思われる奴が居るんだな。
「『この辺りに数日前から不自然な魔力を感じる』とか言ってさぁ」
不自然な魔力って…。
「魔法とか魔力とかは良く解んないけど、どうせイルティネの転移魔法の事でしょ」
そうかも知れないけど、私から漏れている僅かな魔力のことかも知れない。
「…その事、言った?」
「ん?いや、言ってないよ?絡まれたら面倒だし『知らない』って言って別れた」
「…そっ、か。…その人達、どんな格好だった?」
「えーと、白い鎧を着た3人組。ローブ着てたけど、隙間からちょっと見えた」
まさか、教団騎士?
帰りたいけど、今日も夕方辺りで帰るとユニッセに言ってしまっているので、それも出来ない。
それに、さっき私が来た事で気付いてここに向かって来ているかも。
「そう…。コ、コトラ!違う所に行ってみたい」
逃げても森で迷ったらここに帰って来れないかもしれない。私が魔物と気付いていないコトラを連れて行った方がいいか?
「違う所?」
「うん。誰も人が来なさそうな所、行ってみたいの」
そう言ってコトラの手を取り、森の方へ歩き出す。何処でも良い。とにかくここを離れないと――
「!………そ、そうだなー。ここ自体人余り来ないしな…」
――ガサッ
コトラが突然止まり、森に目を向ける。
「誰かいる」
「え?」
私もコトラの見ている方を見ようとして、見るより早く身体が異変を知らせてきた。
大量の魔力が、身体に纏わり付いて来ている。やばい!
咄嗟に走って逃げようとしたけど、足が動かない。いや、全身が動かない!
「あうっ、く、っそ!」
「イルティネ?どうしたの?」
身体に纏わり付いた魔力が私の動きを封じ、その場に固定する。対象の動きを止める拘束魔法だ。しかも指先すら動かすのがままならない、かなり強力なものだ。
コトラが、何が何だか分からないみたいな顔で私を見る。
「う、動けないっ」
「動けない??」
「そこの少年。今すぐそこから離れなさい」
突然コトラのでも、私のでもない声が聞こえた。
首も動かないので眼を動かして声のする方を見ると、森の中から白い鎧と剣を身に付けた人間が3人出てきた。
全員の鎧の胸には教団のシンボルが輝いている。…教団の騎士だ。
「もう一度言います。少年、そこから離れなさい」
3人の騎士の内、黒い髪の女騎士が先頭に立ち、私に近付いてくる。
コトラがすっ、と私と騎士達の間に入って来た。
「俺達になんか用ですか?…と言うか、イルティネが動けないのってあんた達の所為ですか?」
「そうです。危ないのであなたは離れていてください」
「どちらかと言うと、初対面でヘンな事をするあんた達の方が危ないと思うんですけど」
コトラの右手が騎士達に見えない様に剣を抜ける位置まで移動する。
女騎士は後ろに居た2人に何やら命令している。…二手に分かれて近付いて来た。
「あなたとは先程会いましたが」
「イルティネに、って意味なんですけど」
「…用があるのはあなたの後ろのだけです」
「穏便な用件とは思えないんですけど」
「退いてくれませんか?」
「それは結構難
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