「rebg」ギャリン
「きゃっ」
「『遅い』、と言っています」
私の今の状況を簡単に説明すると、ミルアレスさんと剣持って試合して尻もちつかされた…で良いかな?
私がこの世界に来てもう一カ月位たった。毎日、昼間は剣とかちょっとした魔法とか戦いの訓練をして、夜はエヴィさんとお話をする毎日が続いている。
訓練での疲れのせいなのか、なにを話したのかはほとんど覚えていない。ちょっとエヴィさんに失礼かなぁ。
ちなみに、エヴィさんは時間がある時や訓練中の同時通訳をしてくれている。これである程度はみんなと会話が出来る。…会話する機会がほっとんど無いんだけど。
言葉は覚えようと思っているんだけど、流暢過ぎ(本当に流暢かはわからないけど)て全く聞き取れないでいる。
言葉なんて、その国に住めば否が応でも覚えられるって聞いた事はあるんだけどなぁ。
「gth、iffrt」
ミルアレスさんが尻もちをついている私に剣を振り上げ、振り下ろして来た。
「え、ちょ、きゃあ!」
何とか身体を横に転がせて剣を避けた。
「あわわわ」
「cnfsdfmzsielpessw!!」
「『立て、行くぞ』、『無駄死にしたくなければ構えろ!』と言っています」
エヴィさんが通訳している間に2回程なんとか攻撃を逃げ切った。
というか、全然“同時”通訳じゃないよ!
「きゃあああっ」
「fermkxmr!htrmddyaedl!!」
ミルアレスさんの目が怖いったらありゃしない!
「『下手に逃げるな!相手から目を離すな!!』と言っています」
「はいぃぃぃっ!」
……
……
……
「今日も散々な目に合った…」
「お疲れ様です、勇者様」
私の今の状況を簡単に説明すると、エヴィさんと一緒に夕食を食べている…って、簡単に説明しなきゃいけない様な事じゃなかったね。
本日のメインは近くの海で取れると言う魚のムニエルっぽいやつ。
「どうですか?こちらの生活には慣れましたか?」
確かに、慣れたと言えば慣れたかな?魚をフォークで食べながら考えてみた。
初めて訓練した次の日は全身筋肉痛で動けなかったけど最近は次の日も動けるし、このなんだかくせのある魚とか酸味の強いスパイスも美味しく食べられるようになって、広いお屋敷の中もあんまり迷わず歩けるようになった。
初めて身に付けた剣とか鎧とかの重さも知って、本とか漫画とかの中だけのものだった魔法にも触れて、他にも見たことのない花とか動物とかも見た。
180度変わった生活は思いのほか充実している。
「うん。そこそこ慣れてきたよ」
そう返すとエヴィさんは少し悲しそうな顔になってうつむいてしまった。
「ど、どうしたの?どこか痛いの?」
「…いえ、ただ、申し訳なくて…」
申し訳ないって…なんで?
「え?」
「魔物も居ない世界で平和に暮らしていた貴女を、貴女の意思とは関係なしに連れて来てしまって…」
…なんだ、そんなことか。
「そんなこと思わないで?」
「でも…」
「この世界には私が必要なんでしょ?自分達の事に必死になるのは悪い事じゃないよ」
「しかし」
ああ、もう。大丈夫だって言ってるのに。
「私は勇者だからね!」
そう、私は勇者なのだ。私はこの世界の、エヴィさん達の力になるよ。
エヴィさんは私の言葉で笑ってくれた。
「…そうでしたね。貴女は勇者ですものね。ありがとうございます、勇者様」
「えへへ」
まだなにもしてないのに感謝されちゃったよ。
「でも、『勇者様』は止めて欲しいな」
「しかし勇者様なのでしょう?」
エヴィさんが小首をかしげる。なんだかいちいち動作が可愛いんだよなぁ。
「そうは言ったけど…せっかく私がエヴィさんの事エヴィさん、って呼んでるんだしさ、私の事も名前で呼んでよ」
エヴィさんは私の世話もしてくれて、言葉のわからない私に一日中付き添ってくれているんだし、もっと仲良くしたいよ。
「名前、ですか?」
「だめ?」
「だめ、と言う訳ではありませんが、私は『勇者様』とお呼びしたいのです。それに、私は勇者様の付き人と言う様な立場にいますので…」
付き人だから敬意を払う、ってこと?付き人じゃなんだかそっけないな…。
「でも、なぁ…うーん…あ、じゃあ、付き人じゃなくて私の友達、ってのは?」
「私が、ですか…?」
「うん」
どうよ。ナイスアイディアでしょ。
するとエヴィさんはくすくすと笑って、
「友達、ですか……考えておきます。勇者様」
「えー…。名前がいいなー」
まあ、本人がそう呼びたいって言うなら別にいいけど。
「ふふふ。さあ、早く飲んでしまわねばスープが冷めてしまいますよ」
「そうだね。じゃあ、考えておいてね?」
「……」
―タッタッタッ……
―――
かんらんの月 15日
勇者の訓練、干渉を始めて一カ月が経った。
やはり勇者は戦闘に関
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