act8・温泉に行こう@

セラエノ学園の裏山にオリハルコン鉱山がある。
だがオリハルコン鉱山とは名ばかりで、出てくるのはオリハルコンを筆頭に金、水晶、魔法石、化石、ウランなど実に多種多様な鉱石に恵まれている。
その日もそんな鉱山では、もはや珍しくもない光景の一つだった。
「………あれ?」
ドワーフたちが今日も鉱山を掘り進んで行く。
小気味の良いツルハシの音が坑道に響き渡る中、若手現場監督は図面とコンパスを見ながら自分たちが間違った方向に掘っていることに気が付いた。
もっとも、この山は間違った方向に掘っていても掘ったら掘った分だけ何かしら貴重な鉱石がドンドン出てくるので、レアな鉱石を前に誰もがハイテンションになり、間違いに気が付かない。
「お、親方〜。何か方向が違いますよ〜。」
「せっからしか!ええね、ワチらはおんしみたいな昨日今日入ったヒヨッコじゃなかと!ワチのツルハシがこっちじゃって言っとっと!!つまりこいつがこっちっち言いよる以上、こっちで間違いなか!!!」

ガキン……

明らかに今までと違う鈍い音。
「ほ、ほんとに大丈夫なんですか!?」
「任せんしゃい!!あ、せぇーのー!!!」

ボゴン………


ドドドド……


「………何ですか、この振動。」


ドドドドドドドド………


「……………すまん。」



ドドドドドドドドドドドドドドドドド


「「た、退却ぅーっ!!!」」
その声に作業に当たっていたドワーフたちが一斉に出口へと走る。
しかし振動の主は彼女たちを逃さなかった。

バッシャーーーーーン

「「温泉だぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!!!!」」
この山の水脈はどうなっているのか。
間欠泉のように横穴から温泉が噴出する。
その光景は麓の町からも見ることが出来、人々は後にこう語った。

『山がドワーフに小刻みに突かれて、潮吹いてイったのかと思った。』







――――――――――――――――――――



「はい、そんな訳で温泉だ。みんな漬かれよ〜。」
「「「「「「はーい♪」」」」」」」
せっかく湧いた温泉を放置するのはもったいない。
そう言ってロウガは急遽、オリハルコン鉱山横に露天風呂の温泉施設を作った。
ちなみに混浴。
男湯、女湯を作ろうとしたのだが、ロウガが狭い風呂の不愉快さ、そしてたったゴザ一枚で仕切られる女湯が如何に男たちにとって苦痛であるかを説き、ロウガの訳のわからない説得力により混浴として建設されたのである。
『待ちに待った時が来たのだ…。
 多くの英霊(のぞきたち)が無駄死にで無かったことの証の為に…
 再び混浴の理想を掲げる為に!
 理想を追い求めた者たちのために!
 同志よ、俺たちは到達したぁぁぁ!!!』
こんな言葉をロウガが言ったとか言わなかったとか…。
「ロウガ、普段家でも私の裸を見ているのに…。」
アスティアはロウガのお猪口に酒を注ぐ。
「わかってないな。家では家の、露天風呂では露天風呂での良さがあるんだ。」

ちゃぽ……

「あ……ん……!ロウガ……、いくら濁り湯だから……って……!」
「クックック…、どうした?湯に当たったか?」
「ゆ……、指で…弄ぶ…の…、だ、駄目…!」
アスティアはロウガにしがみ付いたまま、真っ赤な顔で艶やかな声を押し殺す。
ヌルヌルとした泉質に、真っ黒な濁り湯の中でアスティアは快楽に必死に耐える。
「………まったく、カズサ。お前もいい歳なのに、そんな好色だとは…。学園の生徒に手を出していないだろうな?」
「ふあ!?あ、あ、あ、アヤノ!?」
「アスティア殿、気付かぬ程、良かったのか?」
アスティアはぶくぶくと顔を半分沈ませながら、赤い顔で頷いた。
「…私はカズサと幸せな時間はなかったからね。次の妻が幸せなのは嬉しいことでもあるし、寂しいことでもあるな…。」
「……綾乃、お前は俺を責めるためにわざわざ風呂に入ってきたのか?」
綾乃は首を横に振って、ロウガからお猪口を奪い、クイッと飲み干す。
「恨み言を言うなら、わざわざ化けてまでこっちの世界まで出て来ないさ。私はただ、お前たちの楽しそうな輪に加わりたくて、こっちにいるんだよ。それとね……。」
「それと……?」
「認知してくれ。それだけで良いよ。」
「何だ、そんなことか……。そんな……ん?」
聞きなれない言葉にロウガはみ首を捻る。
「えーっと、綾乃さん。一体何の認知ですか?」
「馬鹿に丁寧だな、カズサ。気味が悪いぞ…。認知は認知だ。お前と私の子供を認知してくれってことだよ。」
「なるほど……、そういうこと……イィィィィィィィィィィィッ!?」
「ま、待て、アヤノ!?どういうことなんだ!」
アスティアが勢い良く立ち上がり、綾乃の肩を揺さぶる。
「……ま、若気の至りと稲荷様の術の結果だが、お前が日の本を出た後に生まれたんだ。」
「ちょ…、っ
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