「あ、あなたはあの時の…。」
「ん……、あぁ!?いつだった砂漠で会った!?」
交渉のテーブルに着いたのは、町長ロウガではなく彼の代理のサクラ。
いつだったか砂漠で食料を売った少年だ。
「へぇ…、また随分立派になって。」
「い…いえ…、ロウガさんから交渉に行って来いって言われただけでして。」
顔付きがあの日とはまるで違う。
すっかり男の顔になった少年がそこにはいる。
「で、どんな話か聞いているか?」
「はい、およそは。何でもオリハルコンが学園の裏に眠っているそうですね。」
「そうらしい。今日はその技術者も来てもらっているからそれも含めて話し合いがしたいと思ってな。」
お互いの自己紹介もそこそこに、俺は事のあらましを説明する。
兄弟分のルイがオリハルコンの鏃を作って、この町に提供したいということ。
そのオリハルコンがこの地に眠っていること。
オリハルコンの最新精製技術がこの町で生まれたということ。
「す、すごい話ですね。」
「だろ?俺なんか思わず酒を噴き出してしまったぜ。」
「そうですよね。オリハルコンって言ったらどんな宝石よりも貴重な金属ですから…、お目にかかることはないと思っていたんですよ。」
そうこう話していたら、セラエノ学園裏山の合流地点に到着した。
「えっと…、このへんで待ち合わせのはず……ん?おーい、デンエモン君。そんなところで腰を抜かしてどうしたんだぁー?」
「あ、あわわわわわ…。」
泡?
本日の案内人、デンエモンが腰を抜かして地面に座り込んでいる。
声にならないデンエモンは、俺たちにある一点を指差して震えている。
「おいおい…、一体何が出……………。」
指差す先には太陽の光を浴びて鏡のように輝く2mはあろうかという岩。
「ああ、この方はあまりこの町での生活が長くないんですね。この岩は学え…、じゃなくてロウガさんが『鏡岩』って名付けた岩でして、この時期のこの時間だけ、太陽の角度によっては数分間輝き続けるっていう珍しい岩なんですよ。」
「…お前ら、本当に知らないのかよ!?これがオリハルコンだよ!!!」
「へ?」
間抜けな顔をしてサクラが俺を見る。
本当に知らなかったのかよ…。
「ししし、信じられない!こんな純度の高くて、巨大なオリハルコン原石が存在するなんて…!!あ、あっちにも…、こっちにも転がっている!?」
デンエモンはキョロキョロと挙動不審者のようにあたりを見回した。
気持ちはわかるぜ、デンエモン。
「え…、この汚い石がオリハルコン…?」
「そうですよ!ええっと…、代表の方ですよね?正直に申し上げると、ここまで無造作なオリハルコン鉱山は初めてですよ。よく今まで誰にも知られずにこの山が存在したものですね…。」
「えっと、デンエモンさんでしたね。僕も話を聞いただけなんですが、この山はロウガさんが町で暮らすに当たって、何でもジパングの山に似ていたから買ったとか言っていましたけど…。」
デンエモンは開いた口が塞がらないらしい。
俺も呆れて物が言えない。
「僕も…ジパング出身ですが、そんな理由で山を買うんですか!?」
「ええ、あの人は人生を道楽と神レベルの気紛れで生きている悪魔ですから。」
「ヒックショイ!」
「うわ、汚いな…。ロウガ、風邪でも引いたのかい?」
「ああ、悪い。どうやら良い女が俺の噂をしているらしい。」
「………君の目の前の良い女は噂はしていないよ。でも、噂はしていないけど、せっかくベッドで君は寝ているんだし…、久し振りに夫婦水入らずの時間でも過ごそうか?」
「アスティア、冗談は止せよ。マロウ医師もいるんだぜ。」
ガラッ(扉が開く音)
「ごゆるりと。」
「ま、待てマロウ!?俺を一人にするな!!今お前に出て行かれたら俺はまた三途の川を渡りかねん!!!」
「今夜『も』お楽しみでしたね。」
ガラガラガラ…ピシャ…(扉が閉まる音)
ずるっぺしゃっずるっ…(マロウの足音)
「…………ロウガ。…さぁ、二人切りだよ。三十路の人妻女教師、タイトスカートのスーツ、そして二人切りの保健室。これだけ揃えば、据え膳食わぬは漢の恥というものだよ。」
「ア、アスティア!ま、待て!落ち着くんだ!そんな知識どこで仕入れてきやがったんだ!!俺はまだ死にたく…アッーーーーーー!!!」
何だ、今ものすごい叫び声が聞こえてきたような…。
「さわりの調査でもすごい結果だったのに…、何なんだこの場所は…!?ヘンリーさん、今すぐドワーフを手配して!!研究所職員の僕が言うのも間違っているけど、もう訳がわからな…あれ…?これって……。」
「ああ、それはロウガさんが『天上石』って名付けた透き通った不思議な石で…。」
水筒程もある透き通った石。
早い話、でかい水晶…。
「あ、でもそれ小さい方ですね。僕が子供の時にはもっと大きくて綺麗
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