「くそ…、あの男…!明日の朝一番に首を落としてやる!!」
コーネリアが地下牢から息巻いて出てくる。
顔には足の形の青痣がはっきり残り、これが残っているうちは彼の屈辱は晴れないであろう。
「お前は教会騎士だろう。ならば怒りを露わにする時は、揺るぎない誇りを傷付けられた時と神を冒涜された時のみと知れ、痴れ者。」
地下への階段の前に甲冑に身を包んだ大柄の赤い髪の女が立っている。
彼女の名はヴァル=フレイヤ、20歳。
名もなき町制圧のために潜入した教会騎士団の女性騎士、そしてこのクーデター作戦、及びロウガ逮捕計画の指揮官である。
中立地帯の村出身だったのだが、彼女が13歳の時、彼女の村が魔物に襲われ、幼馴染だった恋人を魔物に奪われたという経歴から教団に帰依し、魔物を憎んでいる反魔物派の急進的な思想を持つ騎士。その憎しみから剣を取った彼女は、数々の対魔物の戦において比類ない強さを誇り、その美貌と信仰心から聖女として祭り上げられ、教団におけるプロパガンダ的な役割も担っていた。
コーネリアにとっては面白くない年下の上司である。
「…チッ、で、一体どうしたってんだ?」
何か用か?と不遜にコーネリアは訊ねる。
「…悪い知らせだ。議会場が落とされた。」
「な、何だと!?この町の魔物は腰抜けだって報告があったばかりだろ!」
眉間に皺を寄せて、彼女は答えた。
「あの男が上に立っていた間は、な。我々が捕らえたと同時にやつらは我々に反旗を翻した。魔物風情に遅れを取るのは、制圧のための兵を預かる者として恥ずべきことだが…、伝令、間者からの報が途絶えた。」
「まさか…!?」
「この町の悪しき穢土である娼館、酒屋などの施設も破壊しに出た部隊も誰一人戻っていない。連中はすでに我々の兵の要、武器を貯蔵している警察署を襲っている。見ろ…、ここからでも煙が見える…。」
教会の窓から町を見下ろすと赤い炎と煙が夜空に上がっているのを見て、コーネリアは愕然とした。
「まさか…、あの男が平然としていたのは…、これをすでに指示していたのか!?」
「かもしれん。騎士、コーネリア!」
「ハッ!」
彼は反射的に敬礼をする。
「お前は本陣である神の家を守る全兵力80名を率いて、警察署に向かいやつらを蹴散らせ!あそこを落とされてしまったら、我らはこの町で大司教猊下の…、いや神の理想を地上で実現することが困難になる。」
「了解しました!」
「慈悲など与えるな。やつらを殺すことこそが唯一の功徳、慈悲と心得、根絶やしにしろ。教会に逆らわなければ特別に計らってやっても良かったが、所詮魔物は魔物…。人間の恐ろしさを骨の髄まで叩き込め、良いな!」
敬礼をして、コーネリアは外へ飛び出ると、馬に跨り全軍を引き連れて町へと下る。
彼と剣を腰に携え、フレイヤは入れ替わるように地下牢へ下りていく。
ロウガに尋問をするために…。
――――――――――――
地下牢の前に行く。
鉄格子の中には一見乞食のような格好の男が一人、拘束魔方陣の中で横たわっている。
あれが…、神敵ロウガか…。
「…ん?おお、さっきのむさ苦しいのよりは華があるじゃないか。」
「…こうして顔を合わせるのは初めてだな。私はヴァル=フレイヤ。この町の指揮を預かる者だ。ロウガ、貴様に聞きたいことがある。」
「はいはい。」
何故、この男はこの五人もの魔導師の張る魔方陣の中で平気な顔をしているのか…。
「貴様は…、自分が捕まった後、反旗を翻すように指示していたのか?」
「ぬ?いきなり何を?」
「とぼけるな!今、町がどんな状況か知らぬはずがあるまい!魔物どもが我らに反旗を翻し、我々は今窮地に陥っている…。貴様が指示していたのだろう…。普段、腑抜けのフリをし、時来たらば我ら人間を抹殺し、この世のすべてを魔王に捧げるように!!」
私の声が地下一杯に響き渡る。
「…それは、教団が教えたことか?」
「そうだ。魔物はこの世のすべてを魔王に捧げ、人間を襲い、喰う憎むべき者ども。そしてその魔物に心寄せる人間は悪魔の手先となって神を、真理を闇へと葬る唾棄すべき存在。その証拠に…、私の村は魔物に襲われ…、愛しい人を私は失った…!」
ロウガは何も言わない。
「…さぁ、吐け!お前が魔物たちを煽動したのだと!!」
「せっかく綺麗な顔をしているのに…、もったいないな。」
「貴様!」
「まぁ、聞けよ。煽動したのは俺じゃない。俺はあいつらが暴発しないように大人しく獄を抱いた。まさかな…、それが裏目になったとは…な。俺は人間も魔物も関係ない…。この目に映る彼らの姿は何一つ変わらない。俺には魔物も人間も、もちろんお前たち教会騎士団も同等の価値でしかない。魔王?神?知ったことではない。俺はただ妻みたいな子供を、これ以上増やしたくないだけだ。」
「それが…、世界を正しき姿から逸らしてい
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