外が明るい…。
私の腕の中でサクラが寝息を立てている。
昨日はお互い怖くて、抱き付いて寝ていたが…、それでも朝が来てしまう。
今日はこのオアシス都市を離れよう。
私たちは、異分子だ。
彼らは私たちを受け入れない。
私だけならともかく、サクラの身の危険も考えられる…。
それに長居してしまうと、あの親切な母子にも迷惑がかかるだろう。
「サクラ…、サクラ…、起きて…。」
「……ん…、あ、おはようございます…。」
「そろそろ町を出ようか…。長居をすると…、ご迷惑になる。」
「そうです……ね…!す、すすすすすみません!あの、ちょっとだけ時間をいただければ、すぐに起き上がりますので、先に準備をしていてください!後離れていただければ嬉しいです!!」
「…どうした。サクラは私に抱きしめられるのが好きじゃなかったのか?」
「そそそれはそうなんですが、お願いですから、ちょっと離れて…!」
…おや?
お腹のあたりに…、何やら固いものが…。
………あ。
「そうか、すまなかった。」
「わかっていただけて光栄です…。」
恥ずかしそうにサクラはズルズルと離れていく。
「ごめんなさい、マイアさんに邪な考えを持った訳じゃなくて…、男の朝の生理現象と言うか…。」
「気にするな。父上で見慣れている。」
「そうですか…ん?ちょっと待ってください!あの人、まだ朝から…!?」
「しょっちゅうだ。特に休みの日は寝起きそのまま夫婦の時間に突入してる。」
「な、何て教育に悪い家なんだ…!」
私はもう慣れたけどな…。
「それにな、サクラ。恥ずかしがる必要はない。お互い好き合っているし、こうして何度もお互いの温もりで慰め合っている。私としてはこんな危険な状況でなかったら…、いつでも襲っても良いんだぞ?」
「そ、それは出来ません。僕の中に納得出来ないものが消えない限り…、マイアさんを…、その…、抱くなんて…、恐れ多いことが出来ません。」
「父上に鍛えられてから、まるで修行僧だな。運が悪ければ一生童貞だぞ?魔法使いになるつもりか?」
「それはどこの世界の魔法使いですか…。」
本当にサクラは父の影響が強いな…。
そういえばサクラも…、美乳が好きだし…。
私は決して貧乳、つるぺたの類ではないのだ。
ただ周りが大きすぎるだけの話なんだ…、きっと。
「治まったか?」
「…治まりました。」
む…、恥ずかしそうに赤くなった顔…。
やはりサクラは可愛いな…。
「どうしました?」
「いや、何でもないぞ。食料を腹に詰めたら、挨拶に行こう。」
「はい。」
サクラが襲うとか襲わないとかどうでも良い。
彼はルックス、マスク、魂のどれをとっても私のど真ん中ストライク。
正直…、私が気をしっかり持たないと襲ってしまいそうだ…!
―――――――――――
納屋から出て、一晩の宿の礼を述べて僕らは町を後にする。
少しだけ落ち着けると思っていただけに、予想以上に僕らは落胆していた。
僕らは、あまりに知らなかった。
僕らは、あまりに幸せだった。
守ってもらっていたことに感謝して、後悔する。
あの貧民街に生きる人たちに悲しみはあっても嘆きがなかった。
リザードマンの誇りなのか、自分の状況を受け止めてそれでも生きている。
そんなあの人たちを前にして、僕らが出来ることなんて何もない。
僕らが何も言える訳がないじゃないか…。
「マイアさん…、力って何でしょうね。」
「…そうだな。どんなに剣の腕が立っても、どんなに弁舌がうまかろうと、救いたい人も救えない力に何の意味があるのだろうな。」
砂漠の日差しを避けるように僕らはまた穴を掘って身を隠す。
まだ…、僕らの視界の中に町は大きく映っている。
「あんなに大きな町なのに…、僕たちの町よりも…なんて貧しいんだろう。」
「サクラ、忘れるな。今日この目で見た光景を忘れるな。きっと…、父上が私たちの町の偉い人たちと争ってまで、学園を作ったのはこういうことなんだ。私は今になってわかった…。父上が何故私たちの住む家があんなに質素にしていたのか…。何故、魔物も人間もそこにいるのが当たり前かと思える環境を町全体で作ったのかも…。」
「…教会の人って、神様を祀っているんだよね。じゃあさ、神様って何を救うのかな?」
「…人間さ。それも自分たちを信じる者しか救わない…、せこい神様さ。」
「…僕は、あの町に生まれなくて良かった。あの町に生まれていたら…、あなたを…、訳もなく憎んで生きなければいけなかったから…。」
「ありがとう…、サク…!おい、何なんだ!あの煙は!?」
オアシス都市から黒い煙が上がっている。
あの方向は…、まさか…!?
僕らは日差しを避けることを忘れ、町へと駆け戻った。
―――――――――――
貧民街が炎に包まれていた。
逃げ惑う人々に容赦なく、矢が降り注ぐ。
「探せ、魔物と魔
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