オアシス都市に着いた。
途中、道に迷ったかと不安になったが、僕たちは間違いなく辿り着いた。
途中で何かの声が、こっちだと囁き続けていたような気がする。
砂漠の太陽にやられてしまったのかもしれない。
「サクラ、早いところ宿を取ろう。」
「そうですね。」
二人ともろくな休息も取っていない。
宿で腰を落ち着けよう。
ああ、ちょうど良い。
あの宿に行ってみよう。
「うちは満室だね。」
「そ、そんな!?」
部屋を借りたいと言うと店の主人が即答した。
「どういうことだ、部屋はまだあるように見えるが。」
「それはあんたの目がおかしいんだ。うちは満室だ。」
埒が明かない。
何が一体どうなっているんだ。
「親父、2人だ。部屋あるかい?」
「あいよ、2階の奥の部屋だ。」
「サンキュー。」
後から来た男たちはすんなり部屋に通された。
「おい…、どういうことだ…。何故、私たちには部屋を貸さない。」
「魔物なんかに貸す部屋はうちにはねぇんだよ!さっさと帰れ。それとも営業妨害で教会騎士団に来てもらうかい?」
「貴様…!」
「いいよ、マイアさん。行こう…。」
これで5件目…。
ここは中立地帯だと聞いていたのに、この有様だ…。
さっきから遠目で僕たちのことを見てヒソヒソと話している。
宿屋の店主も酷かった。
「魔物はお断り。」
マイアさんを見て、
「それはペットか?」
人を一体何だと思っているのか…。
そういえば、まだこのオアシスで魔物を見ていない。
コン
頭に何かぶつかった。
石が転がっている…。
コン
まただ…。
投げる力から子供だと思う。
僕たちの町よりも発展した都市なのに…、
僕らは異質なものとして弾かれる。
何て、貧しい町なんだ。
「サクラ…、気にするな。私なら平気だから…。」
「僕が平気じゃないですよ。マイアさんを…、魔物を一体何だと思っているんだ…!」
中立地帯が今や反魔物に染まりつつある。
「彼らはよくわからないものを恐れているにすぎない…。母上もこういう思いをしながら…、生きてきたのだな…。」
「マイアさん、ごめん。今日はまた野宿になりそうだね…。夜が明けたらすぐにここを出よう…。ここに僕らの居場所はない…。」
「…ああ、そうしよう。だが、サクラ。君だけでも宿に泊まっても…。」
「それは言わないで。そんなことをしたら僕はあんな人たちと一緒になってしまう。」
それは何よりも耐えられない。
「あの……、お恵みを……。」
物乞いの子供が近付いてきた。
こんな発展した都市で、こんな小さな子が…!?
リザード…マン…?
「お願いします…、何か…食べ物を…。」
思わず僕はその子を抱きしめてしまった。
栄養が足りていない痩せた身体、埃だらけの汚れた顔。
そして彼女たちリザードマンにあるべき目に光がない。
気が付けば泣いていた。
「お願いします…、病気の母が…。」
「わかった、サクラ。薬を…、それと私たちの食料を…。」
「うん…、うん…!」
言葉にならない。
漠然とした反魔物、そういう勢力があることは知っていた。
でも実際に肌で触れて理解した。
こんなのは間違っている…!
「でも…、君はこんなことをしちゃいけないんだ。君は誇り高い種族、リザードマンなんだ…。君は…、君は…!」
「行こう、サクラ。君のお母さんのところに案内してくれるかな?」
「うん…、ありがとう、ございます。」
―――――――――――
辿り着いたのは町外れのあばら家だった。
そこに少女は母と二人で住んでいる。
町外れの貧民街に来て初めて魔物に巡り会えた。
「これは些少ですが、今後にお役立てください。」
マイアさんは僕たちの旅の資金から半分以上を抜いて少女の母親に渡す。
「こんなに…!何とお礼を言ったら良いでしょうか…。」
「いえ、お気になさらず。それよりもお聞きしたい。ここのオアシス都市は中立地帯のはずですが、何故こんなにも反魔物の空気が流れているのですか?」
「同族のあなたに言うのも恥ずかしい話なのですが…、今から2ヶ月程前の話です。町は今みたいな状況ではなく、私どももあの町の中で住んでおりました。ところが教会から宣教師の方が町に見えまして…、それからです。徐々に反魔物主義を唱える人々が町に入るようになって、最後に来たのは教会に忠誠を誓う騎士団でした。彼らは次々に私たち魔物を襲い…。」
「とうさま、死んじゃった…。」
息を飲む。
言葉が見付からない。
「…そうです。夫も人類に対する裏切り行為という罪で広場で斬首刑に…。この貧民街に住む者は皆同じなのです。魔物を妻に持つ者、または我々魔物であったり…、そういった者たちの最後の棲家なのです。」
「そうでしたか…。」
「ああ、そうです。宿が見付からないのでしたら我が家をお使いください。せめてものお礼として、何もありませんがせ
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