今日もレスカティエは平和です

「大変だ!デルエラ様がまた逃げたぞ!!」(;゚д゚)

「な、何だと!?警備の連中は何をしていたんだ!!」

「アリスがわざわざ手料理のアップルパイを持ってきてくれたらしい。それに夢中になってフゴフゴやっていたら、気が付いた時には執務室の椅子に大人しく座ってはずのデルエラ様が、ぴにゃこら太に変わっていたんだ、と聞いている」(・ω・;)

「うちの警備は本当にザルだな!?」

「しかも黒くて目付きが悪くて声が低かったらしい」(・ω・;)

「知らねえよ!!」

「まあ、それがレスカティエの伝統みたいなものだけどな」(`・ω・´)キリッ

「捨てちまえそんな伝統!今すぐ!ハリー!ハリー!ハリー!!どうするんだよ、これバレたらまたウィルマリナさんに怒られちまうよ。あの人の説教長いんだぞ。しかも汚物、というか養豚場の豚を見るような冷たい目で」

「ウィルマリナ様のお説教は我々の業界ではご褒美れすわ〜♪」(^q^)

「顔文字うぜえ!何なんだよ、さっきから!!」

「いやね?俺、幹部Cの後釜を狙おうと思ってね」(´・ω・`)

「お、おう……が、頑張れ…」

「そういえば今宵様が『ウチな、未だに信じられないやけど、魔法とか妖術をあらゆる意味で冒涜するようなもの見たんや。言っても信じてもらえへんやろうけど、風船……バルーン、そう、ちっちゃいバルーン一つで空に飛んでく貨物コンテナを見てん。ウチ疲れてるやろか……アハハ…』とか言っていたような?」(・ω・)

「言っていたような?じゃねえ!!何だよ、そのクソ怪しい情報!?明らかに不審すぎるし、それ聞いてお前ら何も調べなかったのかよ!?いくら何でも無能すぎるだろ情熱的に考えて!!」

「困惑する今宵様を堪能してた。反省はしているが後悔はしてない」(`・ω・´)

「…………お前、しばらく昇進はないわ」





 今頃、城ではてんやわんやしているだろうな、と思いながら私は路地裏で着替える。
 ダメージジーンズにその辺で買ってきた『働いたら負け』とデカデカとヘタウマな字がプリントされたTシャツ、ちょっとオシャレな伊達眼鏡、大手スポーツメーカーのごく一般的なスニーカー、およそサキュバスらしくない露出のやたら少ない格好になる。
 これは異性を誘うためではない。
 むしろ敵(?)の目を欺くためのカムフラージュ。
 私の名前はデルエラ。
 この魔界国家レスカティエの黒幕(フィクサー)……いや、よそう。
 今の私はデルエラでも美しき影の支配者でもない。
 退屈な日常を飛び出した一人のリリム、それで十分かしら。


 (ジャジャジャ♪)

 Midnight 気合上等!夢に特攻 Let's Go! キメるぜ
 さぁ限界なんて追い越して 風に乗ってその先の未来へ行こうぜ
 Oi Oi Oi そうさ今宵は Ai Ai Ai 愛の集会(つどい)さ
 Boom Boom Boom 胸のエンジン 今 うなりを上げて 伝説になる

 (ピッ♪)


「あ、はい、お疲れ様ですデルエラです」
『もっしー?デルさん?』
「あ、メルセ」
 私のスマホに電話を掛けてきたのはエキドナのメルセ。昔、ちょっとした縁があって堕とした筋肉メスゴリス。てっきり魔物化したらバイオゴリラみたくなるかと思ってワクワクしていたけどそんなことはなかった。いざ堕落させてみるとそれはそれは艶めかしいエキドナになってしまい、当時はかなりガッカリしたのも良い思い出だったりする。
 彼女の内面は意外と乙女チックだったのだろうか。
『さっきフルトン回収装置で飛んでったのデルさんだろ?』
「…見てたの?」
 この子もそうだけど、相変わらず私への敬意が感じられないわね。
 人間社会みたく身分云々でうまくいかないものかしら。
『あー………やっぱりかぁ。じゃあ、今はいつもの共存区?』
「ええ、そうよ。息抜きにはちょうど良いもの」
 現代の魔界国家レスカティエの首都には三つのブロックが存在する。
 一つ目は『天外魔境区』と呼ばれるブロック。通称、アウター・ヘル。天国ではない。これはレスカティエを最初に堕とした時には生まれたブロックで、謂わば魔界そのものと言っても過言ではない。王城やレスカティエ主要人物の屋敷は主にこのブロックに集中している。何故か『陸のロアナプラ』として旅行番組に紹介されたこともあるけど、そのあたりは私の関知するところではないので知ったこっちゃない。
 二つ目は『移民区』と呼ばれるブロック。ついこの間(確かパリにエッフェル塔が出来たぐらいかしら?)出来たばかりのブロックで、住人のほとんどは人間で魔界国家レスカティエの玄関口とも言える。当然のようにここが一番人口が多い。ここから希望者は天外魔境区で堕落してもらうことになるのだけれど、興味はあっても性風俗
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