ep・1 魔界の男子校の悲劇
魔界にも学校はある。
幼稚園から小学校、中学校、高等学校、大学までキッチリ存在し、人間と魔物娘の間に争いごとが起こらぬように、お互いのことをしっかり理解するために創設されており、もちろん基本的に男女共学である。
しかし、何事にも例外が存在する。
魔界に一校だけ、小中高一貫性の男子校が存在するのである。
魔界に男子校が?と疑問に思うこともあるだろう。
むしろその存在自体が怪しいものだが、それは魔王城のすぐそばにあり、なんとかのデルエラ王女誕生を記念して創立された由緒ある男子校なのである。
いやマジで。
教師(サキュバス)
「えー、それでは本日は性行実習を行う」
教壇で弁を取る白衣姿の教師(サキュバス)が教科書を片手にやる気のない声で授業を進めていく。教室の中の生徒たちは全員男子生徒。その目は真剣に……否、鬼気迫るほど血走って食い入るように、気だるそうな教師の姿を凝視している。
教師(サキュバス)
「んじゃ、教科書の33ページを開いて…」
男子生徒(青木)
「はいっ、先生!!」
教師の言葉を遮るように男子生徒の一人が手を挙げた。
もう辛抱たまらん、と目が叫んでいる。
教師(サキュバス)
「何だ、青木。先生の授業の邪魔すると……ブチのめすぞ?」
サキュバスのクセに随分と物騒な教師である。
ブチのめすと言いながら、メリケンサックを鳴れた手付きで右手に装着するサキュバスに、手を挙げた生徒(青木)はビビる様子もなく、むしろブチのめされた方がマシだと言わんばかりに教師を無視して喋り続けた。
男子生徒(青木)
「実習実習って、もう耐えられません!!」
教師(サキュバス)
「あんだよ、せっかくアタシら魔物が気持ち良いセックス教えてやろうってのに……あ、そうか。お前、さてはゲイだな。女の身体より男の身体の方が良いってか?このケダモノめッ!」
男子生徒(青木)
「何その理論!?何を言ってるのかわからないよ先生。俺はゲイじゃありません。信じてくださ………ってお前らまで信じるなよ!!俺はBLには興味がないって、信じてくれよぉぉ……ってそういうこと言いたいんじゃないんですってば。」
急に浮上した青木ゲイ疑惑に、ガタガタと机が移動されていく。
完全に孤立した青木だったが、気分はたった一人の最終決戦。
これを言わねばならない、という使命感が彼を奮い立たせた。
男子生徒(青木)
「いい加減に、ダッチワイフじゃなくて、生身の女の人と犯りたいんです!!」
教師(サキュバス)
「却下」(即答)
男子生徒(青木)
「もう俺たちの欲求不満は限界です!他の学校じゃ不純異性交遊が推奨されてるってのに、何で俺たちだけが強制的に男子寮に入れられて、こうして貞操帯付けられて自慰も出来ずに毎日を悶々として暮らさなきゃならんのですか!!!せめて“エロ魔物娘”って冠が付いてるんだから、先生が俺たちの相手してくださいよッッ!!」
教師(サキュバス)
「ハッ……誰がお前らみたいなケツの青いガキなんかと。アタシは“女教師”って響きがエロいから教師やっているだけであって、男なら誰でも良いって訳でもないんだよ。残念だったな、童貞ども」
男子生徒(青木)
「チクショォォォォォォォォーーーーーーッ!!!!」
青少年の魂の叫びであった。
毎日毎日、刺激的な魔物娘の教師陣をその目に焼き付けながら、自慰することすら許されず、劣悪な寿司詰め状態の男子寮の部屋で悶々と暮らしている生徒たちの唯一のガス抜きは、極上の美女に見守られながらのダッチワイフ相手にセックスの実習の時間だけである。
ちなみに誰も同性愛に走らなかった要因は、そういう特性がありそう、もしくは芽生え出したのを教師たちがいち早く察知し、その手の生徒は“特別アルプ学級”へと送られて、立派な魔物娘に転生するためである。
つまり残りカス、ゲフンゲフン……選抜された男子生徒たちこそ、『エリートの雄』なのである。
あまり嬉しい表現ではないが……。
しかもこのダッチワイフ。
近年の造形技術の向上により、まるで人間のようなシリコン素材の一般的に“ラブドール"と呼ばれているような代物ではなく、とても昭和の香りがプンプンするようなビニール風船にオナホを突っ込んだだけという、魔界とは思えないほどの粗悪品である。
これでは生徒たちも浮かばれまい。
教師(サキュバス)
「それにしても失礼なヤツだな、青木。良いか、お前たちを気持ち良くしてくれるこのダッチワイフ、六代目さとみちゃんはだな、お前たちより15代前の先輩からずっと受け継がれてきた、云わば歴戦のポルノヒロインなんだぞ。このさとみちゃんに性技を習得した先輩たちこそ、今現在魔王軍の中核を成す勇者部隊にいる。その先輩との絆を感じないか?いや、感じるはず
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