「うわー まもの の しゅうげき だ。 もう だめだー。」
「きちまったもの は しょーがねーなー。」
「しょーがねーよ。んじゃ エロくなるかー。」
「うわーん まってよぉー。」
ドット絵時代のRPGのモブキャラたちを思わせる棒読みのセリフを残して、王城の兵たちは最初から諦めていたかのように、超無抵抗で城を捨てて逃げ惑う。
しかも国が魔界に侵食されていっているというのに、まるでアドンとサムソンのような超兄貴的素敵スマイルで、自ら鎧や服をパージすると、生まれたままの姿で魔物娘たちの群れに突撃しているのであった。
身体の一部はまるで新兵のように臨戦態勢なのは言うまでもない。
そんな兵士たちに
「え、あ、あの……い、いいの?」
と、逆に魔物娘たちの方が戸惑い、気を使っている始末である。
阿鼻叫喚、もとい酒池肉林満ちるレスカティエ教国。
はっきり言って初心者だらけの草野球チーム並みにザル以下の守備を突破し、軍団を率いる高貴なる淫魔は、レスカティエ王家最後の一人となったフランツィスカ=ミステル=レスカティエを守らんとする一派が立て籠もる王女の間へ、レスカティエ教国陥落の最後の仕上げのため、部下であるサキュバスたちを引き連れて暗い廊下を闊歩していた。
もちろん王女をエロくするためである。
「公式では飛んで窓から入るようなんだけどね。」
「デルエラ様、誰に言っているんですか?」
高貴なる淫魔は、名を『デルエラ』という魔王第四王女である。
魔王第四王女という肩書きは伊達ではなく、その肩書きに相応しい強大な魔力を持ち、強力無比な軍団を率いて、このレスカティエ教国も瞬く間に侵略してしまった現時点でのラスボスと言っても良い存在である。
「デルエラ様、各ブロックの制圧は完了致しました!」
「御苦労様。……ほら、9割9分9厘制圧したからってここはまだ戦場よ。御褒美は最後のメインディッシュを堕としてから……ね?」
了解しました、と目を輝かせるのはワーウルフ。
御褒美というのは、無論デルエラが彼女に魔力を注いでやることなのだが、このSSではそこまで厳密な描写をする気がないので、ぶっちゃけて彼女への御褒美が漫画チックな骨であっても何の問題もない。
「では伝令をお願い。各々好きに相手を見付けて楽しんで、と。」
「了解ですわお〜ん!!」
忠犬ハチ公よろしく、ワーウルフは伝令を携えて駆け抜けていく。
もはや戦局は何があろうと動くことない。
魔物娘たちによる凌辱の宴が繰り広げられるのは間違いないだろう。
ケダモノ的な意味で。
びゅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
その時、突如屋内だというのに激しいつむじ風が吹き荒れた。
「うわ、目にホコリが!?」
「一応王城なんだから掃除ぐらいしとけって…ぺっぺっぺ口に入った!?」
「何なの!?何なのよ、この突風はぁ!?」
「う、うろたえるんじゃあないッ!魔界軍人はうろたえないッ!!」
サキュバスたちがつむじ風に舞い上がったホコリで狼狽している中、一人デルエラだけは主役としてのプライドに賭けて、何とか冷静さを保とうと努めていたのであった。
(おかしいわ……レスカティエ攻略シナリオってこんなはずじゃ…。)
しかし攻略シナリオとか脳内で浮かべている時点で、本人が思っている程あまり冷静でないのは一目瞭然であり、動揺が顔に出ていないのは彼女の異常に分厚い面の皮のおかげでもある。
(………ナレーション、いつか堕とすわ。)
………な〜んにも聞こえません。
「おいらを呼んだかい?」
物陰からを話の流れを完全無視して僧侶姿の男が現れた。
俗に言う『つむじ風と共に現れたニヒルなあいつ』的な雰囲気を醸し出している僧侶姿の男は、何故かタバコを咥えるような仕草でスルメを噛みながら、両手をズボンのポケットに突っ込んでポーズを決めている。
一見して只者ではない。
別の意味で。
「………どこからツッコミを入れたら良いかしら。」
「こんばんわ、ニーソの素敵なお嬢さんたち。それにしても面白そうなことを企んでいるようですね。フフフフ、私も混ぜてくださいよ。」
「お願い、会話をしてちょうだい。」
人の話を聞かない僧侶姿の男。
デルエラの説得虚しく自分の世界に入り込んで自己陶酔している男は、デルエラの話などこれっぽっちも耳に入らず、まるで邪魔な置物のように、王女の間へ向かう彼女たちを阻んでいる。
「デルエラ様、ここは我らにお任せを。」
「見ればあの男、なかなかの精の持ち主。」
「ふふふ、ここまでプンプン匂ってきやがるぜぇ。」
「我らサキュバスの合体奥義にて見事に堕としてみせましょうぞ。」
デルエラの前に出るサキュバスたち。
デルエラ自身も人間界の制度とは異なっても王族であるために、部下が手柄を立てようとする姿を見守る役目があり、『やってごらんなさい』と一言だ
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