むか〜しむか〜しの〜ことぉじゃった〜。
山奥に治平という名のおとぉこが〜、おった〜そうなぁ〜。
……………………うん、やりずらい。
こほん……。
昔々、ジパングのあるところに治平という名の若い男がいました。
治平は山奥に一人住んで、薪を拾っては麓の町に売りに行く若者でした。
「薪〜、薪は〜いらんかね〜。」
「うるせえ、今時薪なんか使わねえよ!今はIHコンロの時代じゃー!!」
そんな感じで薪は売れず、生活は大変苦しいものでした。
いつものように薪が売れず、治平は肩を落として家路に着きました。
折りしも季節は冬。
雪深い山道に治平は難儀しながら、思い悩んでおりました。
「今日も一つも売れなんだ…。このまま傘地蔵の爺さんの真似して、寒くて震えていそうなお地蔵さんの周りに薪を積んで火でも点ければ、ワシも爺さんのようにお礼を貰ってウハウハになれるじゃろうか…。」
やめておけ。
きっと祟られるぞ。
治平がとても不謹慎なことを考えていると、どこからか助けを呼ぶ声が聞こえてきます。
「だれか〜……寒いの〜…!誰か助けて〜!!」
「おや、こんな山奥に誰じゃろうか?」
茂みを掻き分けて、治平が声のする方へ向かうと、そこには……
「うおあ!?」
立派なワニの頭が顔を覗かしていました。
「何故こんな場所にワニ!?『見た』ことも『聞いた』こともないのに、ワシはこれがワニだと『知っている』!?馬鹿な、何故これがワニとわかるんだ!!まさか、これがヤツの『スタンド』の能力だと言うのか!?」
「スタンドって何ですか〜。そんなことより助けてくださいよ〜。」
パクパクとワニの口が動いたかと思うと、その口の中には可愛らしい女の子の顔がよよよ、と涙を滲ませて治平に助けを請うように見詰めていました。
よく見ると、そのワニの頭は被り物で、少女には腕の代わりに立派な翼が生えています。
「何じゃ、鳥人間コンテストの参加者か。」
「どこをどう見たらそんな結論に行き着くんですか〜!鶴ですよ〜、とっても優雅で美しい鶴のハーピーですよ〜!罠にかかってしまって、動けなくって困っていたんです〜…。どうか罠を外していただけないでしょうか〜。」
なるほど、と治平は罠を外してやろうと足を見ましたが、罠が見当たりません。
「おかしいのぉ。罠なんざ、どこにも見当たらんぞ?」
「あるじゃないですか〜、私の目の前に〜!」
「目の前?」
ハーピーの目の前にあるのは、罠なんかではありません。
ちょっとだけエッチな本が開いて置いているだけです。
「………………それ、罠?」
「罠に見えないのも仕方がありません〜…。実は…これには恐ろしくも悲しい理由が…。」
ハーピーが涙ながらに語りました。
冬を越すために南の島にバカンスに行く途中、今年最後の思い出にサバイバルゲームをしていたら、この恐ろしい『エロ本トラップ』に引っ掛かってしまって、動けなくなったところを、仲間に額を麻酔銃で撃ち抜かれてしまい、うっかりこの雪の中で眠ってしまったというのです。
しかも仲間たちは楽しむだけ楽しんだら、『鶏脳』全開でハーピーのことを完璧に忘れてしまい、彼女を雪の中に取り残したまま南の島に旅立ってしまった、と鶴は泣いて治平に語るのでした。
「………で、それで何でエロ本が罠なんじゃ?」
とりあえず、目のやりどころに困って治平がエロ本を閉じると、金縛りのように動けなかったハーピーが、急にマイケル=ジャクソンのように激しく動き始めました。
どうやら呪縛は解けたようです。
「わかってないですね〜。サバゲー中にエロ本を地面に置かれるとついつい読んでしまうじゃないですか〜。そんなこともわからないんですか、このど素人。」
子供の頃から貧乏のどん底で、プレイステーション2もプレイステーションポータブルも持っていない治平は、ハーピーが暑苦しく語るメタルギアソリッドのネタがわからず、首を傾げます。
「……で、話は変わるんじゃが。何でワニの被り物を?」
「ワニの被り物は戦場の淑女の嗜みです〜♪」
「……………あっそ。まーよくわからんが、無事動けるなら仲間のとこに行くと良い。追い付けない距離じゃないはずじゃ。少ないけど、このおにぎりを持って行け。途中で喰えば腹ごしらえにはなるじゃろうて。」
「ありがとうございます〜。このご恩は………。」
ハーピーが治平の耳元で囁きます。
「必ず晴らしてやるからね。」
バサバサ、と大きな羽ばたく音を立てて、鶴が飛び去りました。
「ま、待つんじゃ!日本語の使い方が違う…、いや、何かワシ、恨みでも買ったかぁー!!」
治平は鶴に向かって精一杯叫びましたが、ハーピーは振り返ることなく雪の降りそうな重たい雲の彼方へと飛び去り、治平に大きな不安だけを残して、その姿を雲の中に隠してしまいました、とさ。
「……何だったじゃ、あいつは。………ま
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