ここは紳士の社交場、娼館『テンダー』。
時に抑えきれない欲望を叶えに、
時に冷たい心の隙間を埋めに、
時に運命の導きのままに、紳士たちが集う秘密…でもない場所。
今日も紳士たちは心にやり切れない寂しさを持ち寄って、
魔物という名の天女たちに会いに来る。
さて…、今日はどんなお客が来るのやら。
…うん、やっぱりこのくだり、前にもやったような気がする。
これって、デジャブ?
―――――――――
【閉店二時間前】
今日も忙しかったぁ。
やっぱりサービスデイはお客が混む…。
うちの店の立地条件は決して良くはないけど、色々アイディア出して今日まで生き残ってきたもんね。割引サービス日だったけど、売り上げ自体は大幅に伸びていそうだ。ルゥさんと相談して、オッケーが出たら女の子たちに臨時ボーナスを出してあげよう。
今日も彼女たちが頑張ってくれたから、僕も食べていけるんだし。
おや、閉店ギリギリのお客さんですね。
「もう一軒行くぞ〜〜。」
「先輩、飲みすぎですよ!」
「バカモン、俺ぁ、ぜ〜んぜん酔っちゃいねぇって〜の。」
どうしてこうなったんだろう…。
僕は松井電衛門。
名前の通りジパングから大陸に留学してきた、学者志望です。
親しい人は短縮して『マツD』と呼んでいます。
今夜は先輩の研究が学会に認められて、そのお祝いがあり、現在酔っ払いと化した先輩のお供ではしご酒の真っ最中。
…先輩が何かしら粗相をしそうなので、安心して酔えない。
「よし!次はココ行くぞ〜!!」
「こ、ここ…ですか?」
飲み屋街のはずれに佇む、5階建ての建物。
周りの喧騒から逃れるように、その建物は建っていた。
小さなランプの灯りに『テンダー』という文字が見える。
研究仲間の間で聞いたことがある。
娼館『テンダー』、色々な魔物娘が在籍するという風俗店。
一度入ったが最後、抜け出せなくなるとか何とか…。
「せ、先輩、やめておきましょうよ…。」
「だいじょーぶ!俺を信じろ!!」
信じられないから言ってるんですよー!
静止を振り切って、先輩は扉に手をかけた。
「いらっしゃいませ、ようこそ『テンダー』へ。」
僕たちを出迎えたのは、僕とそう年が変わらないようなやわらかい空気を持った男の人だった。
外の寂しい雰囲気とは違い、ロビーは明るく、フカフカの赤い絨毯とシャンデリア、綺麗に飾った色取り取りの花が娼館という雰囲気も微塵も感じさせない。娼館とは、どこか設備的にもみすぼらしいものを想像していたけど、ここなら下手なホテルよりも品がある。
「おう、予約していないけど、いいかい?」
「ええ、構いません…が、お客様。泥酔しておいでですね?」
「酔っちゃいないで〜すよ〜。ガッハッハッハ。それとも何だい?酔ってたらこの店は、客を門前払いするのかね?」
「いいえ、そういうことは致しませんが、当店の女の子は全員、激しい娘たちばかりなので、泥酔されているお客様の命の保障を出来かねないだけです。」
「はい、酔ってます!」
さすがに先輩も死にたくないらしい。
「でも性欲を持て余して、如意棒は戦闘形態であります!」
「…そうですねぇ。では女の子にお客様のプレイは負担をかけないように頼んでおきましょう。お好みの女の子は……。」
「おおなめくじの女の子いる!?」
「…おおなめくじの女の子ですね?ええ、います。少々お待ちください。んんっ、あーあー。こちら店長代理、こちら店長代理。おおなめくじ希望のお客様です。シグレさんにスタンバイ要請してください。どーぞー。」
店長代理という男の人は天井に向かって大きな声を出した。
そして、しばらくすると。
『ぴんぽんぱんぽーん、こちらセイレーン、こちらセイレーン。シグレさんのスタンバイ完了しました。ロビーまでは間に合わないと思いますので、3階プレイルームにてスタンバイしてくれています。どーぞー。(ブチ)』
美声のアナウンスが返ってくる。
セイレーンの声って初めて聞いちゃった。
「店長代理、ラジャ。なお、お客様はお酒が入っていますので、プレイ内容はあくまでソフトにとシグレさんに伝えてください。健闘を祈る、メリークリスマス(地獄で会おうぜ)。」
『メリークリスマス(地獄で会おうぜ)。(ブチ)』
「と、いう訳ですので、お客様。こちらのエレベーターに乗って3階までお行きください。エレベーターを降りて左の4号室にておおなめくじの女の子のが待機しておりま…。」
「ひゃっほーーーー!!!ヤヴァ!ダヴァ!ドゥゥゥゥゥ!!!!!」
獣のように走り去る先輩。
「やれやれ、話を聞かない人だ。」
「すみませんすみませんすみません、本当に困った人ですみません!」
「いえいえ、お気になさらず。さて、お客様の方はいかが致しましょうか?」
「へ?あ、あの、僕は…、ただの付き添いなので…。」
「
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