第二話・殺しの調べ

「あたしを満足させたら生かしておいてあげる。」

その言葉を信じて、男たちは彼女を満足させるべく、彼女に言われるがままに屈辱的で義務的な快楽を、恐怖と生き残りたいというささやかな望みから提供し続ける。
「……ふっ……くっ…。」
男は泣きながら、必死なって腰を振る。
だがどんなに突いても女は退屈そうに喘ぎ声の一つも漏らさない。
漏らしたのは、
「あふ………。」
という可愛らしい欠伸を一つ。
フウム王国残党が村を占拠し、虐殺と凌辱、私刑(リンチ)に明け暮れている中、女は罪人として捕らえた村の男たちの中でも屈強な身体付きをした男たちを選り抜き、彼女は自分の精処理のために誰もいなくなった空き家へと連れ込んだ。
薄ぼんやりとした蝋燭の灯りに照らされた室内で、男たちは震えながら彼女を犯す男を見守っていた。
彼女は退屈だった。
町から町へ、戦場から戦場を退屈凌ぎに渡り歩く彼女は、偶然フウム王国残党軍の行軍に立会い、一切の情けを掛けることなく虐殺と凌辱に明け暮れる彼らを面白いと思い、居候同然に残党軍に従軍し、図々しく居座っていた。
時に残党軍に手を貸し、彼女が望む強者がいなければ退屈凌ぎに男を漁る。
この日も、彼女にとっては退屈以外の何者でもない時間。
殺したくなる程、愛しい強者はいない。
狂おしい程の刺激もない。
そして退屈凌ぎに選りすぐった男も怯え切って、完全に勃起しないので話にならない。
ふと、男に突かせながら彼女は自分の座る椅子に意識を向けた。
女の座る椅子は、四つん這いになった少年。
彼女が男たちの肉棒で疲れる振動を背中で感じつつも、少年もまた死にたくない、死にたくないと恐怖に震えながら、ぐらついて彼女に不快な思いをさせてはならないと必死に耐えていたのである。
「……………もう、良いや。飽きた。」
女がそう言ったかと思うと、彼女に腰を振っていた男がゆっくりと膝から崩れ落ちる。
ドサリと男が横たわると、パックリと首が裂けて頚動脈から血液が噴水のように溢れ出す。
死への恐怖が張り付いた表情で死にたくないと口が動き、ビクン、ビクン…と何度も何度も男の身体は痙攣し、跳ね続け、さっきまで女の膣を往復していた肉棒からは、ドロリと決して宿ることのない生命の源がまるで粥のように溢れた。
女はそんな男に興味を持つことなく、また欠伸を一つ。
左手には銀色に輝く短剣。
喉を切り裂いた刃は血に濡れて妖しい輝きで見る者を魅了する。
「う………、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
女を悦ばそうと必死だった男が殺されて、見守る男たちは悲鳴を上げた。
ある者は取り乱し、
ある者は腰を抜かし、
ある者は気を失い、失禁し醜態を晒していた。
女の尻の下で、椅子になっていた震える少年は叫びたいのを必死になって堪えた。
溢れ出そうな悲鳴を必死に飲み込んだ。
横たわる男と目が合っても、目を瞑って顔を背けた。
いつしかその恐怖さえ、腹の底に飲み込んだ。
このまま殺されるんだと覚悟したその時、少年の頭を撫でるやさしい指。
鮮血に塗れた女の美しい姿態は、さながら官能的で淫靡な女神のようだった。
女は乾いた唇を艶かしい舌で嘗めると少年に言った。
「良い子だねぇ、坊や。いくつだい?」
「…………じゅ………14です…。」
震えて上擦った声で少年が答えると、女は目を細めた。
「あたしの4つ下かい?へぇ……、じゃあ、女も知らないんだ。」
これまでの日常であったなら、少年は強がって否定しただろう。
だが、少年は素直に首を縦に振る。
非日常、非現実的な状況下に少年は見栄を張ることが出来なかった。
「可愛いねぇ…。あたしはそういう素直な子は好きさね……。じゃあ、ちょっとだけ待っておいで。頑張ってあたしの椅子として支えてくれたんだ。飴玉ぐらいの御褒美は上げなきゃね。」



「キリア殿……、キリア=ミーナ殿…!!」
女の名を叫びながら残党軍兵士が空き家の扉を勢い良く開くと、一瞬の間を空けて
「ひぃぃぃぃっ!!!」
と、声にならない悲鳴を上げて男は腰を抜かし、這うようにしてドアから離れた。
すえた臭いのする室内。
彼女、キリアを満足させることが出来なかった男たち。
壁に頭を叩き付けられて、まるで潰れたトマトのように死んでる。
彼女の短剣で顔を縦に割られ、脳髄と血液を垂れ流して、壁にもたれて死んでいる。
手足を斬られ、床に芋虫のように蠢いた血痕を残して死んでいる。
腹を斬られて、糞尿と臓器を床にばら撒いて死んでいる。
無事な死体など何一つない。
排泄物の臭い、血液特有の鉄の臭い漂う室内。
男が腰を抜かしたのは、そんな地獄の光景だけではなかった。
地獄の底で、交わる男女の姿。
吐き気を催すような惨劇と不快な臭いの中、恍惚とした表情を浮かべてキリアは肉の椅子として彼女を支えた少年を犯し続けていた。
すでに少年も正気で
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