ザクッ……
ザクッ……
冷たい雨が降る中、僕は土を掘り続ける。
ザクッ……
ザクッ……
深く深く埋められたアレを掘り出さなければ。
ザクッ……
ザクッ……
一度掘り起こされた土を、何度もシャベルで掘り返す。
ザクッ……
ザクッ……
段々と腕が重くて持ち上がらない。
ザクッ……
ザクッ……
肉体労働などしたことがないというのに、僕は一心不乱に土を掘り返す。
ザクッ……
ザクッ……
…………ガッ
ぶつかった。
やっと目的の物へと辿り着いた。
僕は喜び、さっきまでの疲れなど忘れて周囲の土を掘り返し、その目的の物の形がハッキリとわかるまで掘り続ける。
現れたのは、蓋に教会の祝福の施された縦長の匣。
ここは村の共同墓地。
冷たい雨。
冷たい風。
無音、静寂。
ただ僕の荒い呼吸だけがやけに耳に付く。
鼓動が耳の傍で聞こえるくらいに大きく聞こえている。
怖い。
ただ一人、墓場にいることが怖いのではない。
今この瞬間に道徳観念を取り戻して引き返してしまうことが何よりも怖かった。
僕は、この棺の中にいる者を想像して、期待に胸を膨らませている。
抑えられなくなった性欲に、股間を大きく膨らませている。
ガッ……、バキッ…、ベキッ……
僕は乱暴にシャベルを叩き付けて、棺の蓋を抉じ開けようと試みる。
釘でしっかりと封印された棺はなかなか開かない。
乱暴にしすぎたせいか、いつの間にか手を切ってしまって血が流れていたが、僕は自分のことを気にしていられる余裕など、すでになかったのである。
どれくらい、時間が経っただろうか。
やっと蓋が持ち上がり、苦労の末に棺の蓋を開けることが出来た。
掘り返す時や蓋を外す作業と同じように、乱暴に棺の脇に蓋を投げると僕はカンテラの灯りで棺の中を照らして、その中で眠っている者を確認すると、自分でも気味が悪いと思ってしまうくらいににやけてしまった。
中に眠っていたのは女性。
僕より確か5つ年上の美女。
二度と目を覚ますことない死者。
それは冒涜。
だけど僕には神聖な儀式。
この眠れる永遠の美女を犯したい。
募る想いは、墓荒しという行為で現実のものとなった。
―――――――――――――――――――――――
彼女、エルザと生前に会話をしたことはない。
むしろ生きている頃には何の魅力を感じなかった。
村で擦れ違う程度なら何度か数えるくらいはあったような気がする。
その程度しか印象のない彼女の墓を、掘り起こすに至ったのは至極簡単な理由だ。
彼女が暴漢に襲われて命を落とし、その葬儀に僕も参列したからだ。
彼女を襲った男は逮捕され、つい先日に簡単な裁判の後に首を吊るされた。
そんな慰みと悲しみの中で行われた葬儀に参加した僕は、事件の簡単なあらましと、どのように彼女が死んでいったのかを村人同士の噂話を頼りに聞き、密かに欲情していた訳なのだが、最後のお別れの時、棺の中で眠るエルザに僕は心を奪われた。
後は朽ちていくだけの永遠の美女。
乱暴された跡だとわかる唇の傷。
首に残された男の手形。
その痛々しい抜け殻に僕は、初めて恋をした。
葬儀が終わって数日経っても、僕の頭の中に彼女の死に顔が焼き付いていた。
何度も彼女の最期を想像し、彼女の死に顔を思い出しては、勃起した分身を自分で慰めてはみたものの、何度精を吐き出しても治まる気配はなかった。
寝ても覚めても、絶望のうちに死んだ彼女を思い出して欲情する僕は、ついに日常生活すら困難になり、家に閉じ篭って色々な手を尽くして自分を慰め続けた。
無論、そんな生活が長続きするはずもなかった。
そして、ついに雨の降る夜。
僕はエルザを掘り起こすことを決意し、今こうしてエルザと対面したのであった。
持って来たナイフで彼女の死に装束を胸元から切り裂く。
慣れない作業に時間がかかってしまったのだが、時間をかけて人生を終えた彼女を生まれたままの姿に戻していく。
「嗚呼……、なんて…。」
綺麗なんだろう、と僕は感嘆の声を上げた。
死後数日経って土気色になった肌。
生気をまったく感じさせないパサパサの髪の毛。
筋肉の張りがなくだらしなく垂れている大きな胸。
そして服の上からではわからなかった腹部の大きな刺し傷。
「ここを……、ここを刺されたんだね。」
エルザに寄り添い、物言わぬ彼女に刻まれた傷に指を突っ込む。
まるで愛撫するかのように周囲をなぞり、やさしく傷口の感触を指で確かめる。
ぬるり、ぬるりと血液とも体液とも付かない感触に背筋がゾクゾクした。
僕は今、彼女に触れている。
その事実だけで、僕は射精してしまいそうなくらいに勃起していた。
服を着ていれば、その摩擦だけで往ってしまう。
そう思った僕はその場で服を脱ぐ。
冷たい雨と風に、身体が震えたけど、そんなこ
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