act21・うろこ日和〜おやすみなさい〜

暖簾を潜って、
ガラリと戸を開ければ…。
「いらっしゃいませ…あら、ガーベラちゃん。今日は遅かったわね。」
「こんばんわ、アケミさん♪」
やってきました、フラン軒。
本当だったらお姉ちゃんと一緒じゃなかったら、居酒屋のフラン軒には子供一人で来ちゃいけないんだけど、学園長先生から店長のアケミさんに話が行っているおかげで、好きなだけ大好物の鶏の唐揚げを食べることが出来る。
もちろん、お金は学園長先生持ち♪
「カウンターで良いかしら?」
私の指定席、カウンターの端っこの席に座ってアケミさんに注文をする。
もちろん唐揚げ定食、ご飯大盛り♪
飲み物はウーロン茶。
「へぇ、こんな子供もお店に来るんだね。良い店を作ったじゃないか、アケミ。」
「作ったんじゃないの。そういうお店になったのよ。」
あれ?
この人、誰だろう?
見たことがないけど、すごく綺麗で、天使様とは別の何だか妖しい感じの女の人。
たぶん、サキュバスだよね。
何だかアラビアンナイトに出て来そうな服装…。
「ああ、気にしないでおくれ。この格好は趣味みたいなものだよ。私の名は……、そうだね…。ルシィと呼んでくれないかな?色んな名前がありすぎて何と名乗ったら良いかわからないものでね。」
「えっと…、色んな名前ってもしかして役者さんなんですか?」
「そうだね。そうかもしれないね。ルシフェル、アンリ=マユ、ノブナガ、サタ…、いやいや。私がこれまで名乗った芸名を数えればキリがないよ。確かに役者かもしれないな。今の職業に就くまで何でもやったね。ゴミ掃除、後片付け屋、今じゃプログラマーとして日々忙しい毎日さ。ああ、昔はポルノ女優もやったことがあったなぁ…。」

こつん

ルシィお姉さんの頭をアケミさんが小突いた。
「こぉら、こんなお嬢さん捕まえて何を語ってるの。ごめんねぇ、ガーベラちゃん。この人、私の幼馴染なんだけど酔っ払うと昔話したり、訳のわからない言い回しで話し出す悪い癖があるのよ。それにルシィなんて、何世紀前の名前を名乗るつもり?」
「ひどいじゃないか、親友。わざわざ君を訪ねて遠方から来たというのに、そう邪険にしなくても…。せっかく口煩い部下から解放されたと思っていたのに、君まで昔のように口煩く私を諌めるのかい?」
「………はぁ。ロウガもそうだけど、あなたって相変わらずなのね。」
何だかよくわからないけど、お姉さんとアケミさんは昔話をしている。
よくわからないから、とりあえず持って来てもらった定食を食べちゃおう♪
じゅ〜っと揚げたての唐揚げにレモンをかけて〜♪
ついでに塩胡椒を私好みにパッパッとかけちゃって♪
ご飯、よーし!
味噌汁、よーし!
アケミさんお手製の漬物、よーし!
「では、いっただっきまーす!!」

ぱくっ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪
モモ肉のジューシーさと、レモンのサッパリ具合が堪りませんな〜♪
やっぱりお仕事やった後の、フラン軒名物、しょっぱい味噌汁もか・く・べ・つ♪
ご飯が進むよ〜♪
特製ドレッシングのかかったキャベツの千切りもウマーーー♪
まいう〜ってやつだよ♪
「………アケミ、おつまみに私にも唐揚げを単品で頼む。この子を見ているとお腹が空いてしまった。それとお酒のお代わりを頼むよ。テキーラをピッチャーで持って来てくれ。」
「ガーベラちゃんは本当においしそうに食べるからねぇ。唐揚げとテキーラね。」
「そこのボトルを開けてくれよ。」
「……これ、ロウガのよ?」
「大丈夫。あいつの物は私の物、私の物は私の物という格言がジパングにはあるというじゃないか。しかし……、うちの中将のアルヴァロスの嫁…。あのバフォメット、名前は何だっけかな?私も昔はあの娘みたいにジパングの着物を着ていた時期があったんだが、どうも私は似合わないらしい。」
学園長先生の名前の入ったお酒の瓶を、お姉さんは遠慮なくピッチャーの中に入れていく。
あっという間に空になった瓶をアケミさんに渡すと、お姉さんはまたピッチャーが溢れんばかりになるまで注ぎ続けていた。
「請求書は、ロウガ行きっと♪」
「あいつの方が最近稼いでいるしね。」
あ、悪(あく)い…。
そういえば、たまに学園長先生や他の先生たちとフラン軒で鉢合わせすることがあるんだけど、みーんな学園長先生宛で支払いをしていたような…。
アヤノ先生も。
宗近お姉さんも。
ダオラお姉さんも。
アキ先生も、ルナ先生も、マロウ先生も、アスク先生も…。
それで学園長先生はいつもベロベロに酔っ払わされていたっけ。
「お嬢さん、お飲み物のお代わりはよろしいでしょうか?」
「え、あ、それじゃあ……。」
ウーロン茶をお願いします、と言おうと見上げるとどこかで見た顔が…。
フラン軒の従業員の制服。
綺麗な顔しているけど男の人で、土気色の肌をしているからゾンビだってのはわかる。
いや
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