開いた窓からは初秋の涼しい風が流れ込み、目を向ければ夜に輝く街の光が見える。
最近はようやく残暑も薄れ、訓練の時もだいぶましになってきた。暑さはともかく汗の匂いを夫が気にしていないか気がかりだったが、そろそろその悩みも解消されそうだ。
日々の疲れを吹き飛ばすのには夫との交わりが一番、そんな悩みがあっては存分に愛し合う事の邪魔になってしまう。ちなみに二番目はこうやって守るべき街を眺めながらお気に入りのお酒をゆっくり飲むことだ。
「ねえ〜、ちゃんとはなしきいてる〜?」
……こんな酔っぱらいがいると話は変わってくるが。
まったく。いつの間にやら机の上には空き瓶がいくつも転がっている。相手が持ち込んできたものだから文句は言わないが少しペースが早いのではないだろうか。
「ほんとに〜?」
「ああ。また失敗したのだろう?」
「しっぱいじゃない!きちんとカップルせいりつしたもん!」
「…元々相手の男を、なんだっけ…プ、プロデュースだったか?それをしたあとに結婚相手にする予定なのだろう?なんで結婚してないんだ?」
「…ほかにもあのこにほれちゃったこがいたの……。」
「別に問題ないだろう?お前はハーレムOKだったろう。」
「だって!!なぜかあいてが5にんになってたんだもん!はいるところがなくなっちゃたんだもん!」
「…前にもそんなことなかったか?」
この目の前のリリムと、魔王軍の一拠点の司令官とはいえ、ただのデュラハンである私がこうしてお酒を飲み交わす関係になったのはこの彼女の酒への弱さが切っ掛けだった。
別の街の拠点に勤めていた時、まだ一兵士であった私が酒場に困った人物がいると聞き、対応したのが出会いだった。
酒場に行ってみるとそこにいたのがベロべロに酔っ払った彼女だった。普通ならそんな客は店員が何とかするのが普通だが、相手が魔王の娘であるリリムとなると下手なことができずに困っていたのだ。
それ以来何故か彼女は私に懐いてしまい、司令官になって別の街に転勤してもこうして会いに来るのだ。なんだかんだ言いつつも、私もこうやって彼女の愚痴にたびたび付き合っているのだった。
「…うう。」
「ほら、そんなに落ち込むな。」
「…きもちわるい。」
「……はぁ、水を用意するから大人しくしてるんだぞ?」
「はぁい……おぇ…。」
こんな彼女の残念な点は酒への弱さに加え、もうひとつある。それは彼女の男運のなさだ
仮にもリリムなのだから相手が見つからないのならまだしも、相手がいるなら堕とすのなんて楽勝と思いがちだが彼女の場合は違う。私の知る限り連戦連敗だ。
そもそも彼女は相手をみつけると堕とすより先に相手に世話を焼いてしまう。(彼女いわくプロデュースと言うらしい。)
そうして相手をプロデュースして、堕とす段階になると決まってカップルがもう出来ていたり、ハーレムが出来上がっていたりするのだ。
普段は各地で魔物娘達の恋愛を応援しているらしいで職業病と行ってもいいかもしれない。 彼女自身も「相手が自分の力でどんどん魅力的になっていくのがイイ!」と言っているので満足かもしれないが、果たしてそれが連敗の原因だと知っているのだろうか。
そんなわけで彼女は未だに結婚式には恋人同士を結び合わせた仲人や恩人として出席して、自分は花嫁の座を射止めていないのだ。
そんな彼女の姿が愛らしいので、私もこうして世話を焼いているのかもしれない。
「ほら、水だ。……ん、それは…。」
「ありがと……うぅ…。」
水を用意して部屋へ戻ってくると彼女が目を向けていた一枚の報告書が目に入った。確か近隣の反魔物国家の街にいる者からの情報だったはずだ。
「…ねぇ、それ…。」
「あぁ、大丈夫だ。きちんと作戦は用意して…。」
…そうだ。もしかしたら彼女にぴったりかもしれない。伴侶が見つかる可能性もある。
「…?、どうしたの?」
「実はその作戦というのは……」
私が作戦の内容を話していくにつれ、澱んでいた彼女の赤い目が爛々と光を放っていくように見えた。
翌日、私と彼女は街から南西方面の森へと向かっていた。
大きな山々を背後に背負ったこの広大な森は、名義上は私の住んでいる地域の一部となっている。
……のだが、実際はこの森の代表者によってまとめられ、独立した領地になっている。
そもそも森の中は建物がポツポツとあるだけで、ほとんどが鬱蒼とした森になっている。そのため外部の者が管理するよりも住んでいるものが自治したほうが良いと判断されたのだった。
もし、私達のように地図を持っていなければ森の奥へと進む道を見つけられないだろうし、森の奥からうっすらと上がる煙も見逃してしまうだろう。
「ねぇ、確かこのまままっすぐだったけ?」
「あぁ。このまま真っ直ぐ進めば代表者のいる広場に
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