蒼い月の綺麗な夜。
ベッドでご主人様に寄り添っている。
最近は吸血鬼のご主人様に合わせて夜型の生活になってきている。早起きしてもご主人様は寝ているだけだ。彼女の眠りは深く、ちょっとやそっとじゃ起きない。大好きなご主人様が相手してくれないのは寂しいから起こす為にわざわざイケない悪戯をする。
彼女のおっぱいを鷲掴みし、下からすくい上げる様に揉みしだくのだ。
「悪い子ね」
ご主人様は眠そうな目をこすりつつ、おっぱいを勝手に揉んでいた玩具を抱き寄せてくれた。温かさ、柔らかさが心地いい。ぼくはこの人に全て捧げたい。
「血、吸って」
「貧血で倒れちゃうわよ。いいの?」
「いい」
ぼくの方からベッドの中で背伸びして。ご主人様はうずうずした様子でぼくの耳を甘噛みした。牙が耳たぶに立てられむず痒い。ご主人様の荒くなった息遣いを感じながら血を捧げれば頭がふわふわするけれど、嫌じゃない。体内に少しずつご主人様が入ってくるような不思議な感じ。全身をご主人様で包まれている様だ。ぼくはご主人様の供物だった。
「ふふ……美味しいわ。最初に吸わせてもらった時よりずっとね」
当たり前だ。ご主人様には毎日良いものを食べさせてもらっているし、綺麗にされている。たっぷり寝させてもらっているし、毎日スキンシップは欠かさない。一瞬ふらっとする。それさえも気持ちが良かった。
「ほら、貧血になっちゃってるじゃない。ベッドで寝てなさい」
「ごめんなさい。迷惑掛けて」
「ふふ…♪良いのよ。いっぱい甘えてくれて」
布団を優しく掛けられてしまう。後先考えずに血を吸ってもらうのをおねだりし、しょっちゅう貧血でふらふらしてしまっているのに、くすくす笑ってスキンシップばかりしてくるご主人様。つい最近まで貧民街でビクビクしていたのが嘘の様だ。全てが満たされ、毎日が温かい。
「血になる物たくさん作ってあげるから待ってなさい」
「……離れたくない…です」
布団から本音を覗かせると、ご主人様は笑顔を疼かせた。黒い笑顔だ。ぼくを玩具にする時の笑顔。でもこの笑顔が好きだった。食事が終わったらまたおっぱいをおねだりしたい。ぼくは楽しみにご主人様を待った。
「ふぇ〜
#9825;エミィ〜ルゥ
#9825;」
「!?」
扉を開けて顔が真っ赤なご主人様が戻って来た。足元はおぼつかず、目はとろんとしている。何があったんだろう。ベッドに飛び込んでくるご主人様の吐息は酒臭かった。
「お酒飲んだの?」
「のんれないよ?しゅこひなめたらけらよ?」
絶対嘘だ。酒は大人達が夢中になる危ない飲み物。貧民街でも誰かが酒を盗んでくると必ず騒ぎが起きた。酒の取り合いで殴り合いは起きるし、呑んだ人はおかしくなっていた。あのご主人様がこんなろれつの回らない姿で……
「何でお酒なんか…」
「らぁ〜ってぇ♪エミールにおいひぃおりょうり、つくったげるためらったのぉー♪」
料理酒を使っていたのか。でも今まではこんな事なかったのに。
「あのね、なのねぇ?エミールにげんきになってほひくてー、まかいわいんれぇ〜、にんにくとおにくをー、にこんれたんらけろねぇ〜?」
なんとなく想像はついた。ご主人様はぼくの為に酒とニンニクを使った滋養に良い料理を出そうとしてくれた。そうして味見か何かしている内に気分が乗って魔界ワインにを勢い任せに呑んでしまったに違いない。そのまま酔いつぶれてぼくの所に戻って来たんだろう。ろれつが回らない主人をベッドに寝かせる。布団をかぶせると上気した頬ととろんとした目で見つめられるとドキリとする。
「えへへ〜♪エミールのおかげでぇ〜♪もうひゃびひくないかりゃ〜♪」
「火、見てきますっ」
こんな様子じゃ火を消してきたか怪しい。厨房に入ると、美味しそうな匂いが漂っていた。火元はちゃんと消してあったが、調理具は乱雑に散らばったままだった。分かる範囲で洗って揃えておくと、自分とご主人様の分を持っていった。
「おひょい!」
「ふぇっ、ごめんなさい」
真っ赤な顔のご主人様はベッドで手足をばたつかせて駄々をこねていた。
「ごしゅりんひゃまをほぉってどこいってたのよぉ〜。ベアトリクスはおこってるりょ〜」
「お食事を持って来たんです」
べろんべろんに酔ってしまって威厳の欠片も無い。ベッドの彼女に料理を持っていくと、距離感が異常に近い。元からべたべたしてくるご主人様だったが、それでも理知的で母性的な女性だったのに。
「たべひゃへて」
「は、はい…」
折角寝かしてあげたのに、ベッドから上半身だけ起こし口をあけて瞳を閉じておねだりしてくる。年上の可愛らしい女性にスプーンを持っていく。ご主人様だった女性は素直にはむはむする。その様子がおっぱいをねだる子犬か子猫の様で、ひたすら胸が高鳴った。
「おまえもたべなひゃ
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