サキュバスと男の子

むにゅう…
男の子を、女性が膝枕していた。
男の子は女子と見紛うほどあどけなかった。
「おはよう。坊や、眠れた…? 」
目覚めると同時に視界に入ってきた官能的な美女に、男の子はきょとんとする。

美女の年の頃は十八歳から二十歳(はたち)位か。
非常に整った美貌。普通の男なら目線を送っただけで虜にされるだろう。
長いまつ毛の吊り目は、意地悪そうだが妖艶な魅力もある。
耳にはハートのイヤリング。
ビキニかボンデージ風のきわどい衣装はそこら中がハート型に切り抜かれ、より露出度を激しいものにしている。
ほっそりと長い腕を脇の近くまで包む手袋や、すらりと伸びた長い足を包むブーツ。片方だけ穿かれたニーハイソックスは、食い込む太ももをいやらしく強調する為か。
何より官能的な体つき。窮屈そうに衣装に収まったバストとヒップは、余裕で三桁はあるだろう。
きゅっとくびれたウェストも非常に立派なお尻とおっぱいを強調している。
八頭身の長身も大人っぽさを引き立てている。



しかし、意識がはっきりすると少年はぎょっとして美女から飛び退いた。
自分を膝枕しながら、優しく撫でている美女は、たっぷりした鮮やかな瑠璃色の髪をツインテールに縛っている。そこから伸びる立派な巻角や尖った耳、腰から広がる蝙蝠のような翼。
尻あたりから生えた長い尻尾とその先のハート型のひらひらは彼女が明らかに人間でないことを示していた。
「お姉さん、魔族でしょ!? 」
「あら、よく知ってるのね。お姉さんはサキュバスのリゼ。」
美女の言葉を聞いた瞬間、男の子は小鹿のようにかたかたと震えだす。
サキュバスは人間の男を食べる魔物だと聞いていたからだ。
目からは涙が溢れ、全身からは冷や汗が吹き出し、真っ白になる頭。
「食べられちゃう…!」



ふわッ。
優しく甘い匂いが少年を包む。
妖艶な美女は、優しく少年を抱きしめ、ゆったりと背中をさすった。
「怖かったね…大丈夫大丈夫。お姉さん痛いことしないよ…?」
澄んだ声が怯える少年の耳から警戒心を解いていく。温かい。
「坊や、お名前は…? 」
「ぐすッ…エディです…」
「エディくん、いい名前ね。」
ひっく…ひっく…
名乗った事で緊張の糸が切れ、しゃくり上げる男の子。
「いい子ね…好きなだけ泣きなさい。お姉さんが全部受け止めてあげるから…」
ぐすッ、ぐすッ…
サキュバスは、少年の小さな泣き声を、爆乳で受け止め包みこむ。女性の甘ったるい香りが漂う。
「ぼくのッ、おうちが、ぐすッ…ひっく…」
「よしよし……泣いてすっきりなさい。もやもやした気持ち、全部吐き出して。」
「ぼくのおうちがッ、せんそーで、もえちゃって…ひっく! 」
「戦争で…怖かったね。エディくん…」
サキュバスの美女は、少年が泣き終えるまで、包みこんで愛撫した。




エディと名乗った少年の事情は、サキュバスの胸の中で、泣きじゃくりながら身の上を語った。
生まれたばかりの頃に両親を亡くし、親を知らない事。
老女の営む孤児院で育てられた事。
孤児院の院長先生にサキュバスは男を食べる魔物だと習った事。
人間同士の戦争で孤児院が焼かれ、逃げ惑った事。
食事も、飲み物も、休む場所も無く、気を失って倒れた事。
そうして気が付いたらサキュバスに膝枕されていた事。
全部話して、泣きやむエディ。






「落ち着いた? 辛くない…? 」
「…はい。」
色っぽいお姉さんの爆乳に包まれているエディは、内心ドキドキしていた。
生れて始めて見る妙齢の美女。しかもまだ幼いエディには、刺激が強すぎる官能的女性である。それまでは孤児院の院長のおばあさんか、同年代の女の子しか見たことがなかったから、どんどんドキドキは激しくなってくる。
「…リゼ…さん…」
「なぁに? エディくん。」
「胸がドキドキします…それに、なんだか、全身が熱くて…恥ずかしい…」
「……ッ。」
きゅんとするリゼ。
「…ッ、エディくん、これからどうする? お家が見つかるまでリゼお姉さんと暮らす? 」
とっさに口を滑らせてしまう。言ってからしまったと後悔する。
「いいん…ですか? 」
「いいよ。この家にはお姉さんしかいなかったから、寂しかったの。帰る場所もないんだったら、好きなだけ甘えなさい。」
まずいと思いながらも、リゼの口が勝手に動く。歯止めが利かなくなっていく。
「…リゼさんにご迷惑でなければ…」
「決まりね♪これからよろしく、エディくん♪ 」
嬉しそうなお姉さんの表情と、きょとんとするエディ。
ちゅッ。
突然エディは唇を奪われる。
「ぅむッ!?」
あまりの出来事に、何が起こったか理解できないエディ。
今まで自分を優しく抱きしめていた若いお姉さんが、一瞬妖艶で危険な淫魔になった瞬間だった。
リゼは慌てて唇を離す。一瞬だけ優しく唇が触れあった程
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