第八章 予感

その後暫くしてレスカティエに呼び出された。
白い大聖堂に集まる各国の姫や女王。十数人いる。皆反魔物勢力だ。
年端もいかない幼い少女から、結構な年輩の女性までみえる。
「あ、サラ様も見えたのですね」
「貴女は…」

強いウェーブのかかった銀髪のロングヘア。華奢な体を正統派の白いドレスで飾ったお姫様がいた。いつかの社交界で魔物を受け入れてみようかと発言し、手痛い目にあった美少女だった。
「あ、あの時はありがとうございました。えっと、まだ名乗っておりませんでしたね。私マリアンヌです。よろしくお願いしますね」
ラウラほどではないが、小柄で華奢な身体。しかし凛としていて一国の姫として頑張ろうとしているらしい。精一杯気丈に振る舞っている様が見て取れた。
挨拶をほどほどに、姫騎士たちの意見交換が始まった。
「西の砂の国が魔物に堕ちた。東の水の谷も人魚どもに堕とされたとか。離脱者は増える一方だ」
重々しく口を開く最年長の女性。この人も何処かの国の女王だろう。
「もはや一刻の猶予もない。我々は一致団結し、これ以上離脱者を増やさぬ様相互に監視を……」
一同が頷く中、マリアンヌさんだけは曇った表情をしていた。何か言いたそうで、言えない様な表情。まさか…この空気で前と同じように言うんじゃないだろうな。また批難の的になってしまう。
「……っ、あの…っ私がここに来たのはっ、皆様にお伝えせねばならない事があったからです」
決死の表情で切り出した。
「私は、魔物達を受け入れるつもりです。魔物と共存するのも不可能ではないと思うんです。勿論無秩序には受け入れません。入国審査をしっかり行います。仕事のある者、人間を闇雲に襲わない者に限定して、徐々に受け入れようと思っております」
恐れつつも、自身の意見をしっかり述べるマリアンヌさん。勇気がある人だ。
だが会場の色は変わった。
「血迷ったか!?そなたの国は最も由緒ある反魔物国家ではないか!?」
「裏切りものだ!ここで殺せ!」
「マリアンヌさん……信じてたのに…」
会場は批難一色。また委縮してしまう。嘘がつけない人なのか、自分が正しいと思った事を実行したいと思う人なのか。
血の気の多そうなマッシブなお姫さまが本気で斬りかかっていく。
「おやめなさい」
咄嗟にマリアンヌさんの前に出て庇ってしまう。
「ここは議論の場であり殺し合いの場ではありません。神聖な場所を血で汚さない様にお願致します」
「てめぇは……王家の至宝さまじゃねぇか」
毎回言われるのね…
もはや慣れっこだった。恥かしい二つ名で呼ばれる事より、知り合いの死の方が遥かに嫌だから。
「これ!そこの若造二人。鎮まれ。………マリアンヌは後で話がある。独りで談話室に来なさい」
最年長の女王は厳しい表情で言い放った。
その後も、どこかが魔物の手に堕ちた、あそこの動きが怪しい、こちらの魔物を追いだした、等様々な話が語られた。
だが戦略的な物は全くなかった。ただ魔物を滅ぼせの一点張り。このまま考えなしに強硬路線を続けていても先はないだろうに。

全ての話が終わると、各々が流れ解散する。続きは明日だそう。
マリアンヌが素直に独りで談話室に向かうのを見て、不安に思い後をつける。男が女の子をつけるなんて最低だ…
自己嫌悪しかけるが、そんな余裕はない。後ろから声をかける。
「マリアンヌさん。胸騒ぎがするんです。この話、忘れた事にしましょう」
小柄な体が振り返る。ほっとした顔になる。
「サラ様。いえ、約束や条約は守る主義なんです。お話があるならばお受けしないと」
「……そうですか。では御一緒いたします」
「え、でも、私一人でと…」
戸惑う彼女を半ば強引に押し切り、一緒に談話室に向かった。



突如閃光。
これは強力な攻撃魔法だ。
咄嗟に強力な結界をはり、マリアンヌさんを庇う。
「……独りで来いと言った筈だが」
目の前に居たのは最年長の女王。完全に殺す気だ。目には光が無く、もはや人間として認識していないのだろう。厄介なのに目を付けられたな。
「いきなり他国の姫に攻撃するなんて、宣戦布告と取られてもおかしくないですよ」
ぼくは攻撃してきた女王に言い返すが、相手はマリアンヌさんにのみ視線を送っていた。
両手で口を押さえ唖然とする銀髪の姫様。いきなり攻撃されるとは思っていなかったらしい。危機感が無さ過ぎる。余程お育ちが良いのだろう。
「魔物に与する者に用はない。消えろ」
「失礼いたします。私の話を聞いていただけますか?」
軽く光の弓矢で威嚇しつつ、こちらに向いてもらう。女王は全く同じ性質の矢で撃ち返してきた。
「…お前も敵か?」
「どうでしょう。ただ、あまりに急進的すぎませんか?まだ検討の段階ですよ?」
マリアンヌさんに目をやると、さっきまで震えていたのに前に出てくる。
「サラ様は関係ありま
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33