お見合い当日。
清楚な純白のワンピースドレスに着替え、客間にて待つ。
お相手は小国の伯爵。伯爵が一国を任されるのは極めて稀な事だが、生まれや能力の高さも相まって周りには充分信頼されているらしい。こちらの使用人からの評判も上々。
せめて名前は事前に教えて欲しかったな。
「あたしにこんなの似合わないよ…」
となりのラウラも純白の正装。恥かしそうに俯いている。
ぼくが出席する条件としてラウラの同席を認めてもらった。親戚の妹と言う扱いだ。
「大丈夫よ。とても可愛いから」
「…ほんと?」
上目遣いでこちらに訴えかけてくるラウラ。改めて後押しすると、今度は嬉しそうにターンし、ふわっと広がるドレスを見ていた。女の子だなぁ。
「サラ、相変わらずお姉さんなんだな」
「一応その…“する”時以外は姫として振る舞わないと」
ラウラは悪戯っぽく少年じみた元気な笑顔を向けて来た。
「少し怖いわ」
「だ、大丈夫だぜ!あたしがサラを守るし」
不安をこぼすぼくを無邪気になだめてくれる。一人でも味方は多い方がいい。ラウラは純真故にこういう時とても心強い。目線を合わせると、背伸びして撫で撫でしてくれた。
本当はトモエも同席させたかったが、表面上彼女は異国からの留学生であり、同席させるのはあまりに不自然だった。
使用人にも別室で待機させてある。向こうの使用人方とのお話は別室でやってもらう事になっていた。
客間にはこれから見えるお相手さん、ラウラ、ぼくの3人だけ。
「サラ君、また会ったな。この前はすまなかったね」
「!」
現れたのはかつて社交界でお会いしたシャルル伯爵。この人がお相手なのか…
トモエを連れて来なくて正解だったかもしれない。トモエと彼は社交界でやり合っている。
空気が悪くなる可能性もある。
「よろしくお願い致します」
「こちらこそよろしく頼むよ。……おや?そちらに見える可愛らしいお嬢ちゃんは?」
「あ、あたしはラウラ。サラの…親戚ですッ」
たどたどしい挨拶だが、お相手はにっこり笑う。
「さ、サラに相応しいかあたしが見極めるからッ」
「ラウラ、失礼でしょう?申し訳ございません。この子とてもいい子なのだけれど…」
ラウラをやんわり嗜め、頬を軽く撫でる。
「はっはっはっ…随分サラ君に懐いているようだ」
シャルル伯爵は全く気にしていない。にこやかに切り出す。
「小賢しい真似はせん。わたしと結婚してくれ」
「はッ!?」
「駄目ぇッ!」
いきなりの爆弾発言にぼくは戸惑いラウラは驚く。
「わたしもいい年だ。君の様な若く美しい姫君とは釣り合わんのは百も承知だ。だが全力で君に相応しい男になる。人間はいつでも成長できるからな」
困ったな。適当にかわしつつ破談に持ち込もうとしたが、いきなり直球で来られては…
「サラの、ど、どこが好きになったの!?応えて!」
ラウラが焦りながらもいいアシストをしてくれる。ありがたい。周りに助けられてばっかりだなぼくは。
「そうだね。率直に言ってまず見た目だな。長いプラチナブロンドの髪が綺麗だ。白い肌もとても美しい。さぞ丁寧に手入れしているのであろうな。そして見た目が良いと言う事は几帳面だと言う事だ。そこがまず惹かれた」
あまりにも正直に答えてくれる。見た目から入るとは……というか男のぼくにそんな事言われても。そんなにナヨナヨしてるのかなぁ。
「み、見た目だけ女の子を判断しちゃ駄目!」
ラウラが真っ赤な顔で反論する。ぼくの為に怒ってくれるのは嬉しいけれど、あまりお見合いで大きな声を出しては…
「ラウラ、ありがとう。少し落ち着いて。大丈夫だからね」
「そう言う所も好きだな」
シャルル伯爵はあごひげを撫でつつ、ぼくを見つめる。
「親戚をたしなめる物腰も柔らか。その懐き具合から察するに普段からとても愛情を注いでいるのだろうな」
「買い被りですよ」
なんとか柔らかくかわそうと思ったが、相手がどんどん熱を入れて口説いてくるので、こちらもある程度直球でお返ししなければならない。
「申し訳ございません。私、実は想い人がいるの。とても大切で、親しくて、たまに困った所もありますけれども、愛しくて。ですから申し訳ございませんがこの話はなかった事に…」
シャルル伯爵はやや驚いた顔をした。そりゃそうだ。お見合いまでしていて好きな人もないだろう。
「君の様な若く美しい姫君ならば思いを寄せる男もいるかもしれないな。どんな男だ?」
お相手は完全にぼくを女とみている。悲しい事この上ないけれど。
そうだ、それを逆手に取ってやろう。
「好きな方は女性です……その…私女の子にしか興味が無くって……この事は秘密なんですけれど」
ラウラの背中を撫でながら言う。ラウラは嬉しそうな顔をする。
いよいよシャルル伯爵は目を丸くする。嘘は言っていない。好きな人はラウラとトモエ。両方ともすでに
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