「なんじゃこりゃ…」
城についた俺は思わずそう呟いた。
目の前には半壊した領主の城。
俺たちがついた時には既にこうなっていて、辺りには打ちのめされた教団員らしきやつらが地面に倒れ呻き声を上げていた。
城のあちこちから悲鳴と喝采が交互に聞こえてくる。
正直、何が起こっているのか全くわからない。
「あ、ケイン!!」
突然、遠くの方から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「バ、バッツ?!」
城壁の上から俺を見下ろし笑顔で手を振っていたのは俺の元同僚たる遠征軍の仲間だった。
バッツは城壁から飛び降り一気に地上まで降りてきた。彼も俺同様に並外れた力を持つ人物なのである。彼の場合は『異常な脚力』だ。
「よぉ!無事だったんだな!」
困惑する俺にバッツは「よかったよかった!」と気楽にも肩を叩いてきた。そしてー
「待て待て、これは一体どうなってんだ?」
「ん?知らないのか?てっきりお前が寄越してくれたんだとばかり…」
と意味不明なことを言っている。
「ケイン様、この方は?」
カミラさんも突然現れた俺に馴れ馴れしい相手に少し警戒気味だ。
「こいつは俺の元同僚でバッツと言います。敵ではありません、多分。」
「ああ、ケインさんの同僚ということは貴方も人質を取られて?」
「おう、だけどそれもつい先日助けられたけどな。」
「なに…?」
驚く俺たちにバッツはこれまでの経緯を語った。
俺たちが逃亡したのが先日。その日のうちに怒り狂ったクソ隊長とクソ貴族の命で俺たちの捜索部隊が編成された。皆、不本意だったがまさか逆らうことは出来ないためしぶしぶそれに加わり、いざ出発と迫った頃、突然、森の中から黒装束の集団が現れて襲撃してきた。
敵襲と思い構えたバッツたちだったが、黒装束たちは彼らに見向きもせずに軍中の教団員だけを狙って攻撃していった。
バッツたちが呆気に取られているうちに教団員は皆殺しにされ、クソ隊長やクソ貴族共は捕らえられた。
驚くバッツたちに黒装束たちのリーダーと思しき人物がこう語りかけてきた。
「我々は『教団狩り』。腐敗した教団を排斥するために活動する武装組織です。…あなた方の大切な方達は我らが救出致しました。これ以上、教団に従う必要はありません。」
いきなりそんなことを言われても信じられない、とバッチたちは答えるがそれを予期していたかのようにリーダーの男は近くの仲間に合図を出して1人の少女を連れてきた。
その少女はバッツたちの仲間の肉親だったらしく両者は感動の再会を果たした。そうして何人かの人質を連れてきた彼らは自分たちの言葉が嘘ではないと改めて言った後、力のこもった声でこう宣言した。
「楔は打ち砕かれた!さあ、今こそ巨悪たる教団を滅ぼし、世界の膿を取り除こうではありませんか!!」
人質に関しては一応、信用したバッツたちだが彼らの扇動じみた発言には賛同しかねた。しかし、実際に人質との対面を果たした仲間の何人かは彼らについて行くと言い出した。
リーダーの男はその後も教団の悪事についてや自分たちの正当性を熱弁した。次第にバッツたちもその考えに賛同するようになって、遂には共に教団を滅ぼそうという話になったそうだ。
「では手始めに城に囚われた魔物たちを救出致しましょう。…もちろん、皆様もご理解いただけますよね?」
それは無意味な問いだった。元々、教団に反発したがゆえに人質を取られた彼らはその殆どが魔物と友好的に接してきた地域の出身だ。だから男の言葉に全員が力強く頷いた。
後顧の憂いを絶たれ、強力な援軍をも味方にした彼らは意気揚々と城へと攻め入ったという。
そして今に至る。現在、城の大半はバッツたち元遠征軍と『教団狩り』の同盟軍によって占領され残すは上階と地下の牢獄のみとなっていた。
ちなみに城の兵士たちは皆、襲撃と共に抵抗することなく降伏し、一部の者は同盟軍に加わって共に戦っているらしい。つまり敵は生粋の教団員のみというわけだ。
「なんというか…すごいな。」
「ああ、教団狩りの奴らには本当に感謝している。奴らが居なけりゃあのまま俺たちは魔物を殺しにいくしかなかった。…だからその詫びも含めて魔物たちを解放してやりたい。ケイン、お前も力を貸してくれ!」
深々と頭を下げるバッツ。カミラさんとミルラは困惑しているが、普通はここで快く了承するのだろう。しかし、俺には懸念がある。それは教団狩りという組織に対する疑念だ。
そもそもあの教団狩りとかいう組織、一体なにを目的にしているんだ?
世界に絶大な影響力を持つ教団に対して与するどころか敵対するなどただの自殺行為だ。もし敵対などすればその国は干されるか直接教団に滅ぼされる。だから皆、教団に従っているんだ。
あの教団狩りとかいう組織は話を聞く限りでもかなり大きな組織
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