戦争とは何か?
利害の不一致、思想の相違によって起きる対立?
いや、そんな形骸だけを聞いているのではない。
戦争そのものの意義、その真意に興味があるのだ。
それを踏まえた上で改めて問おう。
「…戦争とは何か?」
「下らぬ事を考えるのは戦が終わってからにしろサウロ。」
白い軍服を纏った茶色がかった総髪の男は、戦場を眺めながら哲学に浸る聖職者を諌めた。
「いや、これは実に重要な課題ですよ。何せ我々は、神の代弁者を語りながら戦争に明け暮れる大罪人なのですから。」
「口を謹めサウロ。今の発言は教皇陛下のご意志に背くものだぞ。…少なくとも私以外の狂信者の前では口にするな。」
「ええ、分かっておりますとも。ですから貴方に語るのです。…真の罪人が誰であるかなどどうでも良い。私は、私が信じる神が望む世界を創るだけですよ。」
「…それは貴様の望みそのものではないのか?」
「…人は誰しも己の中に神を作り出す。自らの行いを正当化する為にね。
それは必ずしも統一されてはいない。人の数だけ神があるのです。
それは同時に、教団という組織の存在意義に疑問を投げ掛けるものだ。万人の中に神があるのなら唯一つの神を頂き統治する世界を作り出す事は不可能に近い、いや、不可能だ。」
「…何が言いたい。」
「つまり我々は一生分かり合うことはないのです。人と魔、人と他の存在ではもはやなく、人と人の間で既に分かり合う事が出来ないのです。」
サウロは歓喜の笑みを浮かべて両手を広げながら熱弁する。
「…」
ディルバードは暫し目を伏せた後、剣に手を掛け歩き出した。
眼下に広がる混戦状態の戦場を眺める。そして振り返る事なくサウロに声をかけた。
「…私も出る。あとは任せたぞサウロ。」
そう言ってディルバードは勢いよく床を蹴り、飛び降りていった。
「…あとはお任せください、ディルバード。」
サウロは薄ら笑いを浮かべながら、恭しく一礼した。
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「…ふぅ、今日はこの辺にしとくか。」
バルスは額の汗を拭いふぅ、と息を吐いた。手には木剣が握られている。
彼の朝の日課はもっぱら剣の訓練と決まっていた。
身を守る為に兄から教わった剣術は初歩の初歩でしかなかったが、兄の死後独自に改良した我流剣術を用いて、毎日訓練だけは続けてきた。
「まあ、使う機会もあまり無いのだけど。」
訓練だけは続けているものの、実際戦ったのは2回ほど。それも小さな盗賊団の捕縛と近くの山に住み着いた、これまた小さな山賊団の討伐である。
というのも彼の住むこの村は、戦争ばかりしている地域からは遠く離れた戦争とは無縁ののどかな田舎の村だからだ。
首都からも遠く大した産物品もないため、いざ戦争になっても狙われる事はまず無い。
「…平和に越した事はないんだけどなぁ。いまいち刺激が足りないというか…。」
だが、彼のような若者にとっては少しばかり刺激の足りない日常だった。
朝早くから起きて畑仕事をしては、家に帰って眠るだけの毎日。なるほど若者にとってはなんとも味気のない日々である。
「…まあ、お隣のテスナさんから教わった畑仕事にもようやく慣れてきたところだ。今更ここを出て行く事もあるまい。」
味気ない日々であっても、今ここを出て行く気にはなれなかった。
というのもー
彼がこの村に移り住んできたのは数ヶ月前だった。
諸事情により職もなくやってきた彼は、越してきたばかりという事もあって相談できるツテもなく途方に暮れていた。
そんな時声をかけてくれたのは隣(と言っても数百m
#63615;も離れているが)に住んでいるテスナという村娘だった。
彼女は幼い頃に両親を病で失ってから、1人で畑仕事をして稼いできた。
その知識を、「お隣だから」というだけで一から彼に教えてくれた。
昔から物覚えだけは良かった彼は、それを瞬時に覚え実践していた。そして、つい先日最初の収穫時期となった。
結果は上々だった。
テスナに言わせれば「初めてにしてはよく出来ている」らしい。しかし、彼にとっては、何個か病気でダメにしてしまったものがあった為にイマイチといったところだ。
「…もう少し、肥料の量を減らした方がいいかもな。テスナさんも、肥料に頼り過ぎるのは良くないと言っていたし。」
収穫を
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