廃墟の町 下

 広場は喜びに包まれた。
 だが・・・。


「だまれぇーーー!ワシは認めんぞ!我が愛しい娘が、あの憎き男の息子と結婚するなぞ、断じて認めんぞぉぉぉーーー!!!」

 ミットンの全力の叫びが、鳴り響いた拍手を吹き飛ばした。

「お前たちぃぃー!早くあの小僧を殺せぇー!!」
 半狂乱の叫びに押されて、スケルトンと怨霊達が広場に向けて突撃していく。

「兵士!迎撃態勢を!ミハお義母さん、冒険者殿すみません。もう一度お願いします。」
 冒険者は笑いながら剣を掲げ、兵士とミハノアは向かってくる死霊たちに慌てて向き合う。

「奥さん辛そうだが、大丈夫かい?」
 剣を掲げながら冒険者が横のミハノアに声をかける。

「ええ、大丈夫です。この像に触れていると、誰かが隣で励ましてくれてる気がするんです。神さまが見て下さってるんですかね?」
 ふふふと笑うミハノアを見て、冒険者が大丈夫かよと呆れる。

「シノン・・・待っていてくれ!必ず助けるからな!」
「・・・うん」
 ジエフがシノンと視線を交わし。冒険者と兵士たちもいつでも来い!と身構えたその時・・・。

「もう良いでしょう!ランドラ、貴女も満足しましたね?」
 ツイーズの声にジエフが「あ!」っと振り向く。この2人が「なんとかできる」と言っていたのを完全に忘れていたのだ。

「うん! 満足!
 それじゃあ、勇気ある人の子達の願いをお姉さんが叶えて上げましょう!」
 ランドラの言葉にジエフや周りが目を丸くする。

「ランドラさん、願いを叶えるって・・・一体? ミットンさんや魔物達を抑えることですよね??」
 ランドラの正面ではツイーズが魔術の印を結んでいる。
 その横からジエフが問いかけると、ランドラがニッコリと笑った気配が伝わってきた。

「お互いの心も体も使って精一杯愛し合えるようにするって意味・・・よ
#9825;」
 驚き固まるジエフの前で、ツイーズの印が結び終わる。

「スケルトン来ます!」
「怨霊来るぞ!」

 兵士と冒険者の警告が上がる。
 だが、ツイーズは動じない。2本の指を揃えて、切り上げる様にランドラのフードを捲った。

 ドン!

 その途端、ビリビリっと大気が震えた。
 今まで封じ込まれていたランドラの膨大な魔力が大気を震わせたのだ。
 彼女を中心に強風が辺りに吹きつける。
 軽いスケルトン達は風に押し倒され、怨霊たちは木の葉の様に吹き飛ばされていく。

「!?」
 ジエフは吹き付ける強風に半身になり顔を腕で覆って耐えると。
 フードから現れたランドラの顔に目を見張った。

 淀んだ沼の様な緑の肌。色が綺麗に抜け落ちた長髪。そして何よりも目立ち、なによりも異常性を際立たせる深緑の2本角。 

「ランドラさん・・・貴女は・・・!?」
「プハァァァン。ア
#12316;
#9825;ナ
#12316;
#9825;タ
#12316;
#9825;」

 ジエフの驚きなど目もくれず、ランドラは目の前に立つ愛しい夫にしなだれ掛かる。
 その声は甘く、熱い吐息はどんな熟れた果物よりも甘い匂いを辺りに振りまいた。

「済まない。妻は封を解いてしまうとマトモに理性が働かないんだ。だが大丈夫、このまま任せてくチゥッ。」
 ツイーズがジエフに安心させようと声をかけるが、最後まで言わせて貰えずランドラに唇を奪われた。

「チュッチュ、クチュ、クチュ。プハー。ン!クチュ、レロレロレー。」
 ツイーズとランドラの淫らなキスの音と甘い匂いが吹き付ける風に乗って全ての者達に届けられる。

 遠くにいたミットンやシノンですら、届く音と匂いに、2人の痴態がまるで目の前でが繰り広げられている様な錯覚に陥った。

 広場にいる全員が急に始まった痴態に驚き固まってしまう。
 場違いな行動に目をそらそうと考えたり、不快に感じる者も確かにいたが、実際に顔を背ける事が出来た者は誰もいない。
 例えどれだけ清廉な紳士でも、例えどれほど潔癖な淑女でも2人の痴態からは目を逸らすことができなかっただろう。

 それは生きている者達だけでは無い。
 吹き飛ばされたスケルトンや怨霊達、勿論シノンやミットン含めた死者達でさえ、異型の女と人間の男の愛の交感から目が離せなかった。
 いや、その視線は生きているもの達よりもさらに熱く、遠慮なく、強い憧れが込められていて・・・。

「ん・・・」
 ツイーズがキスを続けながらマントの肩口を広げる。

 ストン

 ランドラの全身を隠していたマントが滑り落ちた。

「!?」
 現れたその姿にジエフは息を飲む。
 いや、息を飲んだのは2人を見つめる全員がそうだっただろう。

 一番に目に飛び込んで来るのは、肌よりも濃い深緑の翼と骨が浮き出た尻尾。
 どちらもとても大きい。
 腰から生えた翼はラ
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