魔女の甘い囁き

「いらっしゃい。待ってたわ」
 露出度の高い濃紫のドレスに身を包んだ美女は開口一番に言った。
 森をまっすぐと横断しているさなか霧が立ち込み始め、それでも意に介さず進んだ矢先この女が目の前に現れたのだ。
 周辺は相変わらず数メートル先も見えない真っ白な濃霧に包まれており、鬱蒼としげる木々や腐葉土の積もった地面をのぞけば、自分と彼女しか居ない空間であった。
「…何者だお前」
 透き通るように白い肌、手には禍々しい杖を携え、とんがり帽子を被り、太腿まで届く長い髪は着込んだ衣装にほど近い色をしている。
 その異様な様相と雰囲気。普通の人間でないことは火を見るより明らか。
 杖を所持していることからおそらくは魔人系の魔物娘であることが伺える。俺は腰に差した護身用の短剣に手をかけた。
「そんなに殺気立つことないわ。大丈夫。私はあなたに危害を加えるつもりはないのだから」
 しかしながら、戦闘態勢に入った俺を警戒する様子はなく、彼女はその色めいた表情を一切崩さない。
「この霧はお前の仕業か?」
「そのとおりよ」
「なら、俺を迷い込ませたのはお前か」
「そうよ。あなたに私の家に来てもらおうと思って…ね?」
「悪いが俺は寄り道している暇はないんでね。早くこの霧を解いて帰して欲しいものだが」
 俺は短剣を抜き、鋭利な切っ先を魔女に突きつけてみせた。
「実力行使。という手段もあるぞ」
「あら、ただの人間ごときが私に勝てると思って?」
「どうかな。俺はお前みたいな手合と何度も戦ったことがあるんだ。腕にはそれなりに自信があるぞ」
「へぇ、そうなんだ」
「…なっ!?」
 魔女の姿が消えるとの背後から声が聞こえてくるのは全く同じタイミングだった。
「けっこう勇敢なのね。そういう人、嫌いじゃないわ」
 艶やかで透き通った声色が耳元に響き、生暖かい吐息が耳朶に吹きつける。
 背筋がゾクっとなり、鳥肌が立った。
「こ、この…!」
 後ろへ振り返り短剣の一撃を繰り出すが、すでに姿はなく研ぎ澄まされた銀色の刃は虚しく空を切る。
「どこへ消えた!?」
 全方位を素早く見渡すが、まるでどこかへ霧散してしまったかのように消え失せていた。
 闘争心はやがて恐怖へと変わっていった。
 さっきはあのように息巻いたものの、こんな恐ろしい相手は初めてだった。
「ねぇ、この霧はただあなたを迷わせるためだけのものだと思う?」
 どこからともなく聞こえてくる女の声。
 俺はその問いかけに答えようとするが、それはかなわなかった。
 突然、全身のあらゆる力が抜け落ちてゆく感覚が襲う。
 声をだすことはもちろん、立っていることすらままならなくなる。
 やがて俺の意識は白い霧の中へと溶け込んでいった。


*


 ちゃ…ぴちゃ…じゅる…
 なにか変な音が聞こえてくる。
 一体なんだろうか?
 重い瞼をこじ開けてゆくと、ぼやけた視界に赤色の天井が映った。
 腰にじんわりと甘い痺れが広がっている。ゆっくりと意識を覚ましながら下半身へ視線を移した。
「んっ…んぷっ…ちゅく…じゅるる…」
 俺は目の前で繰り広げられている光景に瞠目した。
 天井から壁まで紅一色、薄桃色の怪しげな灯りが一面に照らされた部屋。俺は白いシーツのベッドの上で仰向けに全裸で寝かせられていた。先程の魔女が股間に顔を埋め、屹立しきった男根を口に含んでいる。
「な、お、お前…!」
「んっ?…ふふ、気がついたのね」
 意識を取り戻したことに気付いた魔女はこちらを見据えて頬笑んだ。
「一体なにを…!」
「何って、決まってるじゃない。あなたを味見させてもらってるのよ」
 さも当たり前のように言い、何事もなかったように奉仕を続行させた。
「ぐっ…ああっ」
 性器を温かい口膣に包まれ、悦楽が駆け巡る。
 はね除けようにもなぜか身体が鉛のように重く、身動きが取れない。
「ふふふ、ふふぁほぉ(ふふふ、無駄よ)」
 魔女は口に含んだまま勝ち誇ったように言う。
「じゅる…ちゅぷ、ちゅる、んん…」
 一定のリズムで口の中と外を膨張しきった肉棒が往復する。
 ただ単純に出し入れするだけでなく、舌先を素早くチロチロと動かして亀頭や裏筋といった局所を舐め回してゆく。
(なんだこれ…!? 巧すぎる…!!)
 あたかも自分の心を読んでいるかのように、抽送する速さ・タイミングを把握し、確実に的確に責めている。
 手練手管の娼婦でさえ難しい技巧を彼女は平然とやってのけていた。
 魔物娘は男を籠絡するためにあらゆるテクニックを生まれながらに熟知していると聞いたことがある。彼女の技巧も産まれたばかりの鹿の子が自力で立ち上がれるように、ごく自然に身についたものなのだろうか。
「んっ……じゅるるるるるるるる!!」
 極限まで快感を高めていった末。暴発寸前になった肉棒にトドメを
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