不思議の国の淫乱ピンク

 どうしてこんなことになってしまったんだろう……。
 僕は一回りも二回りも小さくなってしまった手のひらを見つめ、絶望に打ちひしがれていた。
 成人していたはずの僕の身体は、かつての幼い頃の姿へと逆行してしていた。
 飢えに負け、道端に落ちていた得体の知れぬクッキーを口にしてしまったのが原因だろう。
 きっとこれは、この愛らしくも狂気に溢れる、不思議な世界の呪いなのかもしれない。





 冒険者ギルドのしがない構成員である僕は、とある行商団の道中護衛の依頼を受け、一行ともども行商ルート上にある森を進んでいた。
 道中の護衛といっても、特別危険な魔物の棲む地域を通るわけではないので、どちらかと言えば念には念を入れた保険の意味合いが強い、簡単な依頼なはずだった。
 ところが、運悪く魔物の群れに遭遇してしまった。弱い魔物同士が同種異種問わずに群れをなし、協力して人間を襲う例が稀にあるらしく、僕も魔物の群れに出くわすのは生まれて初めてのことだった。
 僕は魔物が男性を優先して襲う習性を利用し、自ら囮となって魔物たちを引きつけ、何とか行商団一行を森の外へと逃がすことは出来たものの。
 血眼で執拗に僕を襲ってくる魔物どもの追跡からなかなか逃れられず、どうにか振り切った時には行商団一行とはぐれたばかりか、右も左も分からない森のなかで遭難してしまったのだ。
 僕はそのまま数日前もの間、魔物たちの襲撃を掻い潜りながらも彷徨い続けた。
 食料や水の殆どは行商団の荷物の中に置いてきており、最低限のものしか携帯していなかった。
 普段ならこういったサバイバルの状況を想定した装備を整えているのだが、気楽な依頼だと高をくくり、準備を怠ったことが仇となったのだ。
 いつしか極限状態に陥った僕は樹の幹にもたれかかったまま、意識を失った。
 そして、次に目を覚ますと何とも形容しがたい珍妙な世界へと迷い込んでしまったというわけだ。
 飢えを凌ぐためなら雑草でさえ厭わず食していた僕にとって、この世界で最初に目にした食べ物らしい食べ物を何の疑いの余地無しに口に入れてしまったのは、我ながら不可抗力であったといえる。 
 兎にも角にも、どうにかしてこの世界から戻る方法を探さなくては。
 そう思い立った時だった。
「あは。可愛い坊や、みっけ」
 気怠けで甘ったるい少女の声が背後から聞こえる。僕は声のする方へと振り返った。
 すると、そこに居たのは両腕から先に薄桃色の羽が連なる巨大な翼を生やし、それらの羽と同じ色のショートヘアの妖艶な美少女。その特徴的な翼と足の先の鉤爪から察するに、所謂ハーピー族であろう。
 しかしながら、彼女は何だか僕の知っているハーピーとは少し様相が異なるようだ。
 常に発情しているのか、紅潮した顔に蕩けた目つき。股ぐらからは溢れる透明な液が太腿を伝って滴り落ち、身じろぐたびにぐちゅぐちゅと音を立てている。
 それに加え、もはや隠すことを放棄しているとしか思えない露出度の高い衣装。ファッションに拘りのないことの多いハーピーにしては珍しく趣向的だ。
 また、飛行に特化したハーピー族は肉付きの少ないスレンダーな体型であることが一般的とされているが、彼女の体つきはおおよそスレンダーとは言いがたい。
 むしろ健康的な肉付きをしており、はちきれんばかりに膨れ上がった乳房は申し訳程度にニプレスで大事な箇所が隠されているだけで、堂々とその存在を曝しており、否が応にも目を引く。
 まるで空を飛ぶことよりも男性を誘惑することに特化しているかのようだ。
「こんにちは坊や。……いや、もしかしてお兄さんかな? くふふ」
「お前はここの住人なのか? なぁ、俺をここから元の世界に戻る方法を教えてくれないか」
「元の世界に戻る? それは無理だと思うよ〜。だって……」
 ハーピーは口角を鋭く上げ、僕の方へとにじり寄ってきた。
「坊やはこれから、私のダーリンになってここでずっと暮らすんだから……!」
 ハーピーは地面を強く蹴って跳躍し、僕へ飛びかかってくる。
 僕はすんでのところでかわし、そのまま何の躊躇なく走りだした。
 この小さい体では持参してきた剣も満足に振り回せない。丸腰のままハーピーを相手にするのは正直かなり厳しい。
 ここは一旦逃げるのが上策だといえよう。
 それに見たところ、相手は僕の思惑通りあまり空を飛ぶのは得意なようではなく、飛ぶのではなく走って僕を追いかけてきた。
 幸い走るスピードもそこまで早くはなさそうだ。奇っ怪な家が幾つも立ち並ぶ建物群の中へと逃げ込めば上手く撒けかもしれない。
 そう確信した僕は、遮二無二に建物群へ目指した。
 しかし、僕の目論見は甘かった。
 僕の今の身体年齢はおよそ10歳。運動神経は大人よりも遥かに劣る。
 だから、たとえまっ平らな道
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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33