にひゃくごじゅうじ

「娶ってくださいな」

 彼女はいつもそう言って、僕の部屋のドアを叩く。

「こんばんはー」
「はい、こんばんは」

 白蛇らしい白く美しい着物姿に、だけど袖から、食材でいっぱいのスーパーの袋を提げて。
 ふとすると儚げな印象を受ける美貌に、けれど待ちきれないような、楽しげな笑顔を浮かべて。

 なんだか僕にも良く分からない状態になっているのだけれど。
 だけど、彼女と食べる晩ごはんはとっても美味しいから。
 僕は彼女を部屋に受け入れてしまう。

「今日はクリームシチューにしますね」
「わぁい」

 今日の献立はどうやら、僕の大好物みたいだ。



 ◇



ゲイザーちゃん「すぅ……すぅ……」

ゲイザーちゃん「ん…………」

ゲイザーちゃん「…………………………」

ゲイザーちゃん「……………はぅああぁぁっ!?」

ゲイザーちゃん「はぁ、はぁ……っ!」

ゲイザーちゃん「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

ゲイザーちゃん「アタシのバカバカバカバカっ! なんでアイツとキスする夢なんて見るのさっ!」

ゲイザーちゃん「この後ぜったい眠れないじゃんっ! 明日が初めてのデートだってのに〜〜〜〜っ!」

ゲイザーちゃん「これじゃ寝坊しちゃうよ〜〜〜〜っ! アタシのバカバカバカバカ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」



 ◇



 大切な言葉がある。

 それは最愛の人が僕にくれた言葉。

「私たちアマゾネスは、伴侶を見つけられなければ半人前だ。その意味が分かるか?」

 夜空の月を見上げる彼女は緊張した表情をしていて、いつもと違う様子に僕が首を傾げていると。

「この世界には誰も、一人前の人間なんていない……ということだ」

 こっちに向き直った彼女が僕の手を取った。

「私もお前も、みんなが半人前なんだ。だけど、私たち二人でなら……二人一緒なら、一人前になれる。だから――」

 そうして、すぅっと彼女は息を吸ってから――

「――私の夫になってくれないか?」



 ◇



 ある日、独身に耐え切れなくなったファラオ様は、部下のアヌビスさんに命じました。

「世界中で一番と言えるような、とびきり良い男を見つけて来るのだ!」

 数日後、アヌビスさんが息を切らして帰ってきました。

「ファラオ様、見つけてきました! もうこれ以上ないと言い切れる最高の男です!」

「素晴らしい! 早速その男を私の婿としようではないか!」

「いえ、ファラオ様! 残念ながらそれはできません!」

「なに、何故だ!?」

 アヌビスさんは目を輝かせ、尻尾をブンブンと振りながら。

「あんまり良い男なので、私が夫にしてしまいました!」



















 おしまい♪
18/05/13 21:04更新 / まわりの客
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