「娶ってくださいな」
彼女はいつもそう言って、僕の部屋のドアを叩く。
「こんばんはー」
「はい、こんばんは」
白蛇らしい白く美しい着物姿に、だけど袖から、食材でいっぱいのスーパーの袋を提げて。
ふとすると儚げな印象を受ける美貌に、けれど待ちきれないような、楽しげな笑顔を浮かべて。
なんだか僕にも良く分からない状態になっているのだけれど。
だけど、彼女と食べる晩ごはんはとっても美味しいから。
僕は彼女を部屋に受け入れてしまう。
「今日はクリームシチューにしますね」
「わぁい」
今日の献立はどうやら、僕の大好物みたいだ。
◇
ゲイザーちゃん「すぅ……すぅ……」
ゲイザーちゃん「ん…………」
ゲイザーちゃん「…………………………」
ゲイザーちゃん「……………はぅああぁぁっ!?」
ゲイザーちゃん「はぁ、はぁ……っ!」
ゲイザーちゃん「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
ゲイザーちゃん「アタシのバカバカバカバカっ! なんでアイツとキスする夢なんて見るのさっ!」
ゲイザーちゃん「この後ぜったい眠れないじゃんっ! 明日が初めてのデートだってのに〜〜〜〜っ!」
ゲイザーちゃん「これじゃ寝坊しちゃうよ〜〜〜〜っ! アタシのバカバカバカバカ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
◇
大切な言葉がある。
それは最愛の人が僕にくれた言葉。
「私たちアマゾネスは、伴侶を見つけられなければ半人前だ。その意味が分かるか?」
夜空の月を見上げる彼女は緊張した表情をしていて、いつもと違う様子に僕が首を傾げていると。
「この世界には誰も、一人前の人間なんていない……ということだ」
こっちに向き直った彼女が僕の手を取った。
「私もお前も、みんなが半人前なんだ。だけど、私たち二人でなら……二人一緒なら、一人前になれる。だから――」
そうして、すぅっと彼女は息を吸ってから――
「――私の夫になってくれないか?」
◇
ある日、独身に耐え切れなくなったファラオ様は、部下のアヌビスさんに命じました。
「世界中で一番と言えるような、とびきり良い男を見つけて来るのだ!」
数日後、アヌビスさんが息を切らして帰ってきました。
「ファラオ様、見つけてきました! もうこれ以上ないと言い切れる最高の男です!」
「素晴らしい! 早速その男を私の婿としようではないか!」
「いえ、ファラオ様! 残念ながらそれはできません!」
「なに、何故だ!?」
アヌビスさんは目を輝かせ、尻尾をブンブンと振りながら。
「あんまり良い男なので、私が夫にしてしまいました!」
おしまい♪
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