「お姉ちゃんは好きですか?」
「……はい?」
……突然何を言い出すんだろうか、この人。
いや、姉ちゃんはラミアだから、別に人ではないんだけれど。
「キミは、お姉ちゃんのことが、好きですか?」
「……はぁ」
部屋で宿題をやっていた俺のもとにやって来たのは、ニコニコ顔の姉ちゃん。
漫画でも借りに来たのかと思えば、口から出てきた良く分からん言葉。
「お姉ちゃんはぁ、好きですかぁ?」
「姉ちゃん、俺は宿題やってんの」
そう言って俺は、ちゃぶ台の上のプリントと参考書を指差した。
この姉ちゃん、ラミアらしく人(弟)にベタベタ巻きついたりするのが大好きで。
しょっちゅう俺とスキンシップを取りたがるのは、まあ良しとしよう。
でも宿題をするのを邪魔されるのはかなーり困るのだ。
我が学び舎で宿題をやってこないヤツは、漏れなく白澤の先生に居残りをさせられてしまうのである。
そして放り込まれるのは、宿題そっちのけでイチャコラしているバカップルの群れと同じ教室……冗談じゃないっての。
「お姉ちゃんは好きですか?」
「宿題終わったらマリオカートでもスマブラでも付き合ったげるから。後でね」
手をフリフリ、再び問題に向かおうとすると、姉ちゃんはスルスルこっちに這ってくる。
そのまま俺の隣にまでやって来て、ニコニコ顔のまま俺の顔を覗き込み。
「お姉ちゃんは好きですか?」
「姉ちゃん、俺の話聞いてる?」
「お姉ちゃんは好きですかぁ?」
駄目だ、聞いちゃいない。
仕方ないからスルーしてよう……ええっと、こっちの構文は何だったかな。
「……お姉ちゃんは、好きですか?」
「…………」
「お姉ちゃんはー、好きですかー?」
「…………」
とまあ、姉ちゃんのことを無視して宿題を進めていたところ。
むー、と隣から聞こえてくる、不満げな声。
すると今度は、ぷに、と俺の頬を姉ちゃんの指が突っついて。
「……何?」
「お姉ちゃんは、好きですか?」
俺が顔を向けたのに気を良くしたのか、姉ちゃんはニコニコ。
ぷにぷに、ぷにぷにと頬を小突かれ……されるがままは癪だが、こうなったらまた無視だ。
「お姉ちゃんは好きですか?」
「…………」
「お姉ちゃんは好きですかぁー?」
「…………」
俺からの反応が無くなったためか、姉ちゃんは俺の頬に悪戯するのは止めて。
次にちゃぶ台の向かいに移動すると、俺の筆箱をごそごそと漁り始た。
そこからペンを取り出し、俺の宿題プリントに勝手に文字を書き出すと……えぇっと、何々?。
『お姉ちゃんは好きですか?』
逆向きから書いてるのに器用だな、姉ちゃん。
とりあえずこんな一文を乗せたままプリントを提出したら何を言われるか分からないので、イレイザーでイレイズする。
姉ちゃんは尚も不満顔だが、スルーだ。今は姉ちゃんと遊ぶ時間ではない。
「……お姉ちゃんは、好きですかぁー」
姉ちゃんはまた俺の方にやって来たかと思えば、今回は背後に回った。
むにゅ、っと俺の背中に柔らかいマシュマロの感覚。肩に乗せられる、姉ちゃんの顔。
そして耳元から、至近距離でしつこく同じ言葉。
「お姉ちゃんはぁ、好きですかぁ?」
むにゅ、むにゅっと、俺のリアクションを引き出すかのように、姉ちゃんは自分の胸を押し付けてくる。
セーターを伸び伸びにしてしまう胸囲から来るインパクトは確かに脅威だが、これしきのことで集中を乱す俺ではない。
……姉ちゃん、またブラジャー付けてないな。やめてくれ、その感触は俺に効くんだから。
「お姉ちゃんは、好きですかっ」
「…………」
ダブルマシュマロアタックに効果が現れないことに業を煮やしたのか、姉ちゃんは更なる一手を打ってきた。
「……っ!?」
俺の耳の周りをペロリ、と舐め上げ、耳たぶをカプリと甘噛み。
それから……脳みそを揺らし、俺の心臓を鷲掴みにするような甘ったるい声で。
『――お姉ちゃんは、好きですか?――』
瞬間、俺の心臓が早鐘を打ち始め、息がどんどんと荒くなっていく。
や、野郎……ついに魅了の魔法を使ってきやがったな……。
もはや英文なんて頭に全く入らなくなっているが、こうなったら俺も意地だ。絶対に姉ちゃんが諦めるまでこのちゃぶ台から動かんぞ……!
幸いガキの頃から散々に魅了の声を聞かされてきてるんだ。常人に比べりゃ俺は抵抗力が付いている……!
「お姉ちゃんは、好きですか……?」
「ぅ……ぐっ……!」
「お姉ちゃんはぁ、好きですかぁ……?」
「ぐぉぉ……!」
姉ちゃんの声が届くたび、すぐにでも姉ちゃんに抱きつきたくなる衝動が俺を襲う。
しかしそれでは姉ちゃんの思う壺だと、頭の
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