エルフィーのことを話します。
エルフィーは世界で一番素晴らしい犬でした。
僕たちは一緒に大きくなった。
でもエルフィーの方が、ずっと早く、大きくなったよ。
僕は、エルフィーの暖かいお腹をいつも枕にするのが好きだった。
そして、一緒に夢を見た。
父さんや母さんもエルフィーのことが大好きだった。
でもエルフィーは僕の犬だったんだ。
エルフィーと僕は毎日一緒に遊んだ。
エルフィーはラタトスクを追いかけるのが好きで、マンドラゴラの花壇を掘り返すのが好きだった。
時々、エルフィーが悪さをすると、うちの家族はすごく怒った。
でもエルフィーを叱っていながら、みんなエルフィーのこと、大好きだった。
好きなら好きと、言ってやればよかったのに、誰も、言ってやらなかった。
言わなくても、わかると思っていたんだね。
いつしか、時がたっていき、僕の背がぐんぐん伸びる間に、エルフィーはやせ細っていった。
エルフィーは年をとって、寝ていることが多くなり、散歩をいやがるようになった。
僕はとても心配した。僕たちは、エルフィーを獣医さんに連れて行った。
でも、獣医さんにも、できることは何もなかった。
「エルフィーは年をとったんだよ」 獣医さんはそう言った。
間もなくエルフィーは階段も昇れなくなった。
でも、エルフィーは僕の部屋で寝なくちゃいけないんだ。
僕は、エルフィーに柔らかい枕をやって、寝る前には、必ず、
「エルフィー、ずうっと、大好きだよ」って言ってやった。
エルフィーはきっと分かってくれたんだよね。
ある朝、目を覚ますと、エルフィーが二本足で立っていた。
夜の間にクー・シーになったんだ。
「これでまた、ご主人様たちと一緒にいられます」って、僕らに向かって、そうしゃべった。
みんな泣いて肩を抱き合った。
父さんや母さんも、エルフィーが大好きだった。
でも、好きって言ってやらなかった。
僕は、ちゃんと言葉にしないとだめだって、父さんたちに言ったよ。
そうしたら、その好きは、二人のものだけにしておきなさいって、父さんも母さんも言った。
僕の方はといえば、嬉しくてたまらなかったけど、なんだか不思議な気持ちにもなった。
だって毎晩エルフィーに、「ずうっと大好きだよ」って言ってやっていたからね。
エルフィーってば、なんだか女の子らしくなって、ちょっとドキドキしちゃったんだ。
隣のサキュバスさんが、「子供はいつ生まれるかしら」って言った。
それを聞いて、エルフィーはなんだか顔を赤くしていたけれど、僕はよく分からないよって言った。
それから、サキュバスさんは、赤ん坊用のバスケットをくれた。
僕らに、どうしてバスケットなんてくれるのか、変なことをするよね。
これからも、僕は、エルフィーと一緒に暮らすし、二人で仲良く眠るんだろう。
もう、エルフィーのお腹を枕にするのは、恥ずかしくてできないけれど。
けど、何があったって、毎晩、きっと言ってやるんだ。
「ずうっと、ずっと、大好きだよ」って。
おしまい♪
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