あの日は傘を打つ音がいつもより強く感じた雨の日、探偵稼業の帰り道、彼女は倒れていた。
「おい、大丈夫か」
返事は無い、生きはどんどん弱くなっていく。
このまま見捨てるのは容易い、しかし助かりそうな命を見捨てるのも後が悪い。幸いこの国は医療費がタダ。俺は彼女を抱きかかえ病院まで連れていく。
「この子を、道に倒れていた。恐らく7〜8歳くらいの女の子だ」
彼女はすぐに病室へ連れていかれる。その後何回かサインをして病院を去る。
書類仕事をしているとあの病院から電話がかかってくる
「もしもし」
「こちら○○病院です。カジヤ様でしょうか?
「そうだが?」
「子どもの治療が終わりました。今の身元引受人はカジヤ様なので迎えに来てください」
そこまでする必要があるのか…まぁそうせゴネた所で規則としか言わんのだろう、俺はいつも着ているコートを羽織り病院へ向かう。
病院に着くとすぐに病室へ通される。
「あ…あなたは…」
そこにいたのはあの日のボロ雑巾みたいな子とは似ても似つかない子がいた。
「一応嬢ちゃんの保護者…だな」
「…」
「孤児院…は」
「連絡してみましたが何処も断られてしまいました」
近くにいる看護師が答える
「嬢ちゃん、このままだとどうなる」
「そうは言っても…病院にいつまでも置いておくわけにはいきませんし…」
となるとこのままじゃまた路上で行き倒れるだろうな。
「はぁ…嬢ちゃん」
「なぁに?」
「一緒に来るか、また死にかける。どっちがいい」
言い終わった後に少し後悔する。こんな子供には難しい質問だったか。
「もう寒いのやだ…」
「そうか、じゃあ一緒に来るか?」
彼女はコクリと首を縦に振る。
その後彼女用の服をいくつか買い我が家兼オフィスに帰ってくる。
幸い部屋はいくつか余っている、そのうちの1つを彼女の部屋にする。
「クローゼットにベッド、生活に必要な物は一式揃っている。何か必要な物があったらまた行ってくれ」
「あの…」
「なんだ?」
「おじさんの…名前…」
そうだ、そう言えば名前を言うのを忘れていたな。
「カジヤキョウ、ついでに言うと26歳でまだお兄さんだ。次は君の名前を教えてくれ」
「キョウお兄さん、私の名前は…エマ」
「そうか、エマ。これからよろしく」
エマはその年の子に比べて一段と賢い子らしい。掃除洗濯、料理に教えればすぐに何でも覚えた
エマと暮らして早い物で2年がたった、もう既に家事は買い物以外エマの仕事となっていた。その事について不満を言う事も無くずっとやってくれるので助かる。
「キョウさん、ご飯が出来ましたよ」
「そうか、いつも悪いな」
「いえ、これが私に出来る事なので…」
食卓にはシチューとサラダがすでに用意されていた。椅子に座り彼女といただきますを言う。早速シチューから頂こう。
スプーンで掬い口に運ぶ。
「うん、美味しいよ」
「良かったです」
「そうだ、エマ。午後は俺の仕事の手伝いできるか?」
「わかりました」
彼女にこの時間までは休めと言った1時30分ぴったりに部屋に入ってくるエマ。
「なんの手伝いをすればよろしいでしょうか?」
「いつも通り書類整理を頼む」
「わかりました」
渡した書類を黙々とファイリングする彼女。正直かなり助かる。
「終わりました」
「結構渡したんだがな、やはり早いな。何かあったら呼ぶからそれまで休憩してていいぞ」
「では読書を。この部屋で読んでも?」
「構わん」
彼女は近くにあった本棚から一冊本を取ると一人掛けソファに腰かけ本を読み始める。
俺のペンが走るカリカリと言った音と、本が捲れる音だけがする。そのどこか落ち着いた雰囲気が俺は好きだ。
それから5年と暫く。彼女の自己申告でこの国の成人、15歳になった。その頃俺が今住んでいる国にも魔物娘がやってきてあっという間に共存状態となった。もとより教団圏ではなかったし、魔物娘のもたらした技術は目を見張る物ばかり。最初こそ反対を言うものもいたが今ではほとんどいない。
彼女の体はまだ少し幼さを残しながら着々と肉付きがよくなり始めている。一般ではそろそろ婚約を考えてもいい頃…
そろそろか
俺は彼女を仕事部屋に呼び出す。
「何か御用でしょうか?」
「お前ももう十分大人になった。そろそろ独り立ちだな…「いや!!」
突然の叫びに唖然とする
「私はもういらないのですか?もっとお役に立ちますからっ!捨てないでください」
「そうじゃない、お前ももう大人になったんだ。だからそろそろ身を固めた方が…」
「私にはキョウ様が居ます。いや、キョウ様しかおりません」
「俺は育ての親、家族だ。結婚相手にはなれない」
何度断っても言う事を聞いてくれないエマ、俺はいったいどうすればいいんだ。
「私がどれ
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