君と夏祭り 前編

「あと3日かぁ…」

 エアリスとのお付き合い(仮)も残す所あと3日にあったある日の昼下がり。幸人は縁側で寝そべりエアリスは庭の掃き掃除をしている。

そこに会話はなく裏山から聞こえるセミの鳴き声が響くのみであった。
だがその沈黙を破ったのはエアリスの方だった。

「幸人さま」
「どうかしました?」

 エアリスはメイド服のポケットから一つの紙を取り出す。それは2日後隣町で行われるお祭りのチラシのようだ

「お祭りデート、行ってみませんか?」
「いいね、行ってみようか」 

お祭りかぁ…そういえば前行ったのっていつだっけな?

「そうと決まれば浴衣の準備をしなければいけませんね」
「そうゆう事なら私の出番かねぇ」
「っつ、うわぁびっくりしたぁ」

 何処からか舞さんが現れる、その手には大きなトランクケースが握られており地面におろすとドスンと重そうな音を立てる。
この人は普通に出てくることは出来ないのだろうか

「早速で悪いが採寸をさせてもらうよ」

 そう言うと舞さんはテキパキと俺の体を巻き尺で図る、正直こそばゆいが我慢する。採寸が終わるとトランクケースから一着の浴衣を取り出す。

「これとかはピッタリじゃないかね?お値段もお安くしとくよ?」
「えっ?俺は浴衣は…「着ないんですか?」

エアリスさんよ、そんな目で見ないでおくれ…

「まあまあ彼氏君よ、エアリスもそう言ってることだしさ」

 結局その浴衣を買うことになった。驚くほど安かったがそれに関して聞いてみてもニヤニヤするだけだった。

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2日後

「似合ってますよ、幸人さま」
「そうかなぁ?俺浴衣なんて初めて着たから…」

当日の夕方、二人とも浴衣に着替え準備万端。しかし…

「エアリスさんも浴衣似合ってますよ」

エアリスさんの浴衣姿が似合いすぎててまっすぐ彼女を見れないのだ。

「じゃあそろそろ行こっか」
「はい、今日は私をエスコートしてくださいね」
「はい、誠心誠意エスコートさせていただきます」

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電車で揺られ20分ほど、目的の隣町に着く。駅の時点で人が多くかなりにぎわっている。

「さ、早く行きましょう」

エアリスさんも浮かれ気味なのか尻尾をブンブンと揺らしている。
駅から歩いて程なくして祭り会場に着く、もうすでに結構人がいる。もっと混む前に食べ物とかを買っといたほうがよさそうだ。

「エアリスさん、もっと混む前に食べ物を…ってもう買ってる」
「幸人さま、焼きそばとたこ焼きです。それとそれと、ソースせんべいにあんず飴も外せません」

エアリスさんは花より団子な子だったか…それも可愛いけど

「早く行きましょう幸人さま」
「うん、そうだね」

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「結構食べたね」
「そうですねぇ…じゃあ次は沢山遊びましょう。お小遣い沢山持ってきましたし。あっ、射的です。やりましょう幸人さま」

俺はエアリスさんに引っ張られて射的屋の前まで行く。

「おじさーん、一回」
「あいよ〜」
「あ、俺もやります」

店主のおじさんからコルクを貰い銃に詰める。狙いは無難にお菓子で行こう

「幸人さま幸人さま、一緒にあのぬいぐるみ狙いましょう」

エアリスさんが指さしたのは少し大きめのクマのぬいぐるみ。コルクで狙うには少し威力が心もとない気がする。

「大丈夫です?威力足りない気がしますが」
「私と幸人さまが協力すれば大丈夫です」
「じゃあとりあえずタイミング合わせて撃ってみましょう。いっせーのーで撃ちますよ」

取り合えずタイミングを合わせ撃ってみたもののぬいぐるみは少し後退しただけだった。

あっという間にコルクは底を尽き最初の課金が終わった。

「今回は残念でしたね。次に…「…けです」
「え?」
「もうこうなったらヤケです悔しいです。取れるまでお金を落とします」

エアリスさんこんなキャラだったっけ?いや、これがお祭りの魔力か…?

『聴こえてる?幸人君』

頭の中に詩織さんの声が聞こえる…疲れてきたのか幻聴が…

『幻聴じゃないわよ、私の術で聴こえてるようにしたの。それよりエアちゃんの事なんだけど』
『エアちゃんはこういう遊びの場だといつも抑圧した心を100%開放する欲望の化身になるからちゃんと手綱握っておいた方がいいわよ』
『えぇ…だからこんなキャラ変わるのか…』
『引かないであげて、彼女のありのままがこれなのだから。それよりもう2000円は溶かしてるわよ、止めてあげて」

「エアリスさん、もうあきらめましょう。お祭りはまだあるんですからここで破産しちゃ
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