ざく、ざく。と砂浜を歩く。現在時刻午前2時。暗く、深く、黒と青の絵の具を溶け合わせたような海は今にも僕を飲み込んでしまいそうだ。
家出してきて正解だったかもしれない、こんなに綺麗な光景が見れるなんて。最後に見るのがこの景色でよかった
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「なんで100点じゃないのなんでお母さんから生まれたのに完璧じゃないの。ねえ、なんでなの」
この世に生まれてはや18年、何時もこんなばっかりの人生だ。
口を開けば完璧完璧、小さい頃からスポーツに勉強、美術に音楽。今考えただけでも吐き気がしてくる。母さんは僕を完璧超人にして一体何をするつもりなのだろうか。 僕は完璧なんかになれないのに…
「今日はこの遅れを取り戻せるまでご飯も寝ることも許しません。さぁ、お勉強です」
「はい、母さん」
このままじゃ僕はきっと、これからも母さんの鎖に縛られる。しかし僕はもう疲れたのだ、完璧を追い求めることも、完璧を押し付けられるのも。
だから僕は自分で自分の命を絶つことにした。これは僕のささやかな復讐だ、母さんが完璧という論理で僕を育てたなら、僕が死ぬという結果が残った。それでいいのだ。
ここまで来るのは難しくはなかった。前から不眠気味だったから睡眠薬を手に入れるのに苦は無かったし母さんの料理に盛るのも苦労はしなかった。
あぁ…これでもう母さんの呪縛から解放される
暫く歩くと飛び降りにちょうど良さそうな岬についた、
「さよなら、クソみたいな世界」
僕は海へ飛び込んだ
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「ここは…」
目の前にあるのは藍色のキャンバスに白色の絵の具をちりばめたような星空。塩のつんとした匂い。恐らく自殺は失敗したのだろう
「あら、起きました?心配しましたよ〜」
突然聞こえてきた声はおっとりしていながら芯があるようで…とにかくいい声だった。歌手をすれば大成するだろう。
その方向を向くとそこには水色の人魚がいた
ににに、人魚?
僕の反応が面白おかしかったのか彼女はクスリと笑い
「そうでしたね、こっちの世界には魔物はいませんもんね」
彼女はその後魔物について、自分はフォンテーヌという名前のシー・ビショップという魔物で各地を旅している事を聞いた。
「それでねぇ…ってもう朝日が出てきたよ。そろそろ帰んなきゃいけないんじゃないの?」
「そうですね。じゃあさよなら」
そこから僕の完璧の日常が戻ってくるはずだった、
しかし
一日、一週間、一ヶ月
頭から離れないのだ、あの夜の光景がフォンテーヌの美貌が、声が頭にこびりついて取れないのだ。
朝も、昼も、夜も、授業中も、寝る前も、寝てる時もフォンテーヌを考えている自分がいるのだ。
そして今日、僕はまたフォンテーヌに会いに行く。また会える確証などみじんもなかった。
しかし僕にはわかるのだきっと彼女は今も待っていると
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一か月前、僕が彼女に出会った場所へ向かった。しかしそこに彼女いなかった。しかしこの程度でへこたれる僕ではない。彼女がいないなら彼女をこさせればいいのだ
だとしたらする事は一つだ
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「あなたねぇ…いくら私がいないからって飛び込みだなんて…」
「それ位貴方に心酔してるんです」
「とにかく。これからじゃ飛び込みはしない事、私を呼びたいときは名前を海に叫んでくれたら来るから。いいね」
「はい」
そこから僕は一週間に一日くらいのペースでフォンテーヌさんとおしゃべりした。
フォンテーヌさんの話は僕たちが住む世界とは違う世界の話ばかりでとても楽しかった。
しかし、終わりとは突然やってくるもの
「今日でここら辺のカップルは全員式を終えたからね、また旅に出るの」
「そうなんですね…残念です」
「でもね…」
フォンテーヌさんの顔が赤らみ始める
「あと一つ…式をしようと思うの…」
「?」
「あ、貴方と…私の式…」
……。それって…つまり
「フォンテーヌさんは僕の事が好きだという事ですか?」
「ああああもうはじゅかしいから言わないでください」
「あ、噛んだ」
「///」
その後僕とフィンテーヌさんは2人だけの式を挙げ旅立った
END
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「これがお父さんとお母さんのは馴れ初めなんだんぁ…いいなぁロマンチックだな
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