「らいか、ベッドの前に立ってみて。そう、そのへん」
これまでは大きな翼の陰に隠れてよく見えなかった少女の服装だったが、少女が男の指示を受けてカーペットの上に直立すると、ようやくその出で立ちが明らかになった。
ビビッドイエローが目に眩しい薄手のキャミソール。
白く細い太股を際立たせるカーキ色のホットパンツ。
稲妻型の髪留めは、羽飾りにも似たツインテールの形に後ろ髪を結い上げている。
肩紐が十字にクロスするキャミソールの背中側は大きく生地が開いていて、くっきりと浮かび上がった肩甲骨が体格の薄さを強調していた。
高画質のハンディカムは、いかにも歳相応の女の子といったコーディネートを、そしてそれに身を包む幼い女児の肉体を。まるで門外不出の秘蔵品でも取り扱うかのように、しかしながら厭らしく厚かましく撫で回していくかのように、上から下まで、ゆっくり、ぐるりと一周しながら撮影していった。
派手めで活発な見た目に違わず、少女は普段から身体を動かすのが好きなタイプなのだろう。骨格からして華奢な肢体には、しかし確かな筋肉の付きがそこかしこに見られ、全体的に引き締まった印象が見受けられる。
それでいて筋張らない柔らかな感触も介在しているのは、皮膚下に微かな脂肪を纏っているからに他ならない。
それは第二次性徴を迎え、女性としての成長期に突入しかけていることの証左であり、特に胸部や臀部に見られるふくらみかけの兆候は、その筋の人間にとっては垂涎モノの光景であることを、絶えず画面に溢れる不埒なコメント群が物語っていた。
「イイヨーイイヨー。あ、そうだ、何かポーズ取ってみてよ。『だっちゅーの』みたいな感じで」
「……何その『だっちゅーの』って」
「……あー、そうだよねー今の子供が分かるわけないよねー……」
「む、なにそれ、もしかして子供だからってバカにしてる?」
「いやいや逆ぎゃく。むしろ、僕も歳を食ったなぁって……」
「?」
男は乾いた笑いを漏らす。しかしすぐに立ち直ると。
「そ、それはともかく……どうかな、少しは緊張取れたかな」
「……ちょっと。……いや、やっぱ全然ダメ、かも」
「そっか……」
少女の若干強ばった声を聞いた男は思案するように、数秒黙り込み。
「……いやそれにしても、相変わらずらいかのママは良いファッションセンスしてるよね。今日着てる服も、可愛らしくてらいかにとっても似合ってる」
「そ、そっかな。こないだイ○ンで買ってもらった、フツーの服なんだけど」
「駅向こうの国道沿いにある?」
「うん。……あ、そうそう、聞いてよおにーちゃん。それなのにママったら、あーでもないこーでもないってさ? 『彼氏とデートのときくらいもっと可愛い格好しろぉいっ!』って、フツーの服一つ買うのに一時間も悩んじゃってさ? そしたらいつの間にか、ボク自身が着せかえ人形みたいになっちゃってて……ちゃんと選んでくれるのは嬉しいんだけど、ちょっとやりすぎ」
「……そんなことはないと思うよ? 事実らいかの可愛らしい格好を見られて、僕はすごく嬉しかったし。……らいかのママは天才的だと思うよ。自分の娘をこんなに綺麗に生んであげただけじゃなく、バッチリな洋服まで真剣になって選んでくれる。幸せ者だね、らいかは」
「……えへ、そっかな」
「そうそう!」
肉親を、そしてさりげなく自分を褒められたのが嬉しかったらしく、少女は照れ臭そうに微笑む。場所と状況が違ったならば、それは何処にでもいる純真無垢な一少女にしか見えなかっただろう。
「まぁ個人的にらいかに一番似合う格好は、生まれたままの姿だと思うけどね! 肌着姿も捨てがたいけど、やっぱりらいかの真っ白ですらりとした素肌が一番キレイあだっ、いだだだっ!」
「もぉっ! おにーちゃんデリカシー無さすぎ! 台無し! そんなんだからボクが恋人になってあげるまで彼女の一人もできなかったんだよ!」
「こ、こんな美少女と恋仲になれたんだから結果オーライです……でも、そう言うわりにはらいか自身、僕の家に居るときはハダカなことの方が多イダイ!」
「もおっ!」
鉤爪の付いた鳥脚でゲシゲシと男を蹴りつけながらぷんすかと憤る少女は、それでもどこか愉しげで、いくらか緊張がほぐれてきたようだった。それを察知したのだろう、男はさりげなく。
「か、身体もいいカンジに暖まったところで……始めても、いいかな?」
「あ。……うん、えーっとぉ……」
少女は辺りに目を泳がせて。
次いで、床へとじっと目を落として。
数秒後、上目遣いで、カメラを見上げて。
「……よろしく、どーぞ……?」
コメントが湧き上がった。
「……じゃあ、まずはリクエストその一。服を脱ぎましょう。できるだけゆっくりと、ね?」
「……あぃ」
消
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