堕落〜フォーリンダウン

「おかーさーん、遊びに行ってくるねー!」
「あまり遠くまで、行くんじゃありませんよー」
「うん!いってきまーす!」

とある国のとある街
幸せな一般家庭に生まれた、この少女、名はシンシア
今日は街外れのお花畑の方へお花を摘みに行こうと、意気揚々と出発しました

「今日は〜いい天気〜♪かわいいお花も〜たくさんとれるといいなぁ〜♪」

足取りも軽く、歌を口ずさみながら、スキップ気味にお花畑を目指すシンシア
街の人たちも、そんなシンシアの姿を微笑ましいと見守っています

「シンシアちゃん、今日はお出かけかい?」
「うん!お花を摘んでくるの!」
「そうかいそうかい、気を付けていくんだよ?」
「はーい!それじゃーね!」

シンシアは顔見知り程度の商店のおじいさんたちにも気さくに話しかけ、更には飛び交う鳥や虫たちにも、挨拶をしながら、ルンルンと歩を進めていきます
だけど、そのシンシアを見下ろす影がいる事に、誰一人として気付く者はおりませんでした・・・


「うわーやっぱりお日様出てるから、お花もよろこんでるのかなぁ」

お花畑にたどり着いたシンシアは最初にそんなことを思いました
やはり渇望していたものが目の前に現れるとそれは普段より魅力的に見えるものなのでしょう

誰もいない人々の喧騒のない鳥の声や木々のざわめく静かな自然の音だけが自分を包み、色とりどりの花が咲き乱れ、美しい蝶の舞うその空間をシンシアはまるで楽園か何かのように感じていました

「私は〜♪白いお花好きー♪白が好きだから〜♪」

少女独特の、特に意味のない歌詞をただただ思いつく限り、鳥たちと歌う
シンシアは歌う事が好きでした
その美しい声は、街の中でも住民たちの心を少しだけ照らすほど素敵な声をしていました

そう、人以外の心をも魅了してしまうほどに

誰もいなかった花畑を急に怪しげな空気がつつみます
重いような、甘いような、不思議で黒い雰囲気がゆっくりと近づいて来ます
まだ幼いながらも、シンシアにもそれがはっきりわかりました

「な・・・なに・・・?」

怯えた表情であたりをきょろきょろと見渡しても、人影どころか、他の生き物がいる気配さえしません
いつの間にやら風は止み、鳥たちも蝶たちも、姿を消していました

「可愛い女の子・・・みーつけた」
「だ、誰!?」

先ほどとは違う意味で静まりかえったその空間に妖艶な声が響き渡ります

「ここよ、こ・こ」
「ど・・・どこにいるの・・・?」

恐ろしい気持ちでいっぱいになったシンシアはその場から逃げようとしますが、恐怖から体が石のように固まってしまい、動かすことができません

「ほら、首を上げなさい?
「え・・・」

硬直してしまった体が、その言葉を聞いただけですぅっと、まるでマリオネット人形が糸を引かれ首をもたげるようにその言葉に勝手に従い、その目線は上空、高い木々たちよりも少し上に向けられます

その目線の先に彼女はいました

「声と同じで、ずいぶんきれいな蒼い瞳じゃないの」

黒い翼をもった、人影が、温かくも冷たい黒く紅い瞳でシンシアと目を合わせ少しうっとりとしたようにつぶやきました
そして、その影はゆっくりと下降してやがてシンシアの目の前まで下りてきたのです
シンシアはその間も声も出ない程怯えているのにもかかわらず、まるで磁石が引きあうかのように、それから目を離す事が出来ずにいました

「あ・・・あなた・・・だれ・・・?」

やっと絞り出した声は泣くのを我慢しているのが解るほどにかすれていました

シンシアの前に現れた彼女は、黒い翼と瞳だけではなく黒い尾、黒い露出の多い装飾を身にまとい、ところどころからのぞかせているその魅惑的な肌は薄青く、圧倒的な存在感を持っていたのです、それを目の当たりにし、そこには自分と彼女しかいないのです、幼いシンシアが泣きそうになってしまうのも無理はありません

「私はね、そう、悪魔って解るかしら、魔物よ、魔物」
「え・・・わ、わたし・・・たべ、ても・・・おいしく、ない・・・よ?」

彼女が自信を魔物であると言ったとたん、いよいよ目から大粒の涙を流し、途切れ途切れに自分は食糧ではないと主張し始めるシンシア
それを見た悪魔の彼女は満足げにクスっと笑う

「大丈夫よ、食べたりしないわ、むしろね、私はあなたと仲良くなりないと思ってきたのよ?」
「え・・・?」

返ってきた予想外の言葉にあっけにとられ、涙が引っ込む
そのまがまがしい姿には似つかわしくないような人を安堵させる優しげな表情を浮かべ、目線をシンシアに合わせるようにその場にかがみこむ
それだけで豊満な胸元がギュッと凝縮され見事な谷間を形成する

「私はね、レイナっていうの、仲良くしましょう?シンシアちゃん」
「な、なんで・・・私の、名前・・・」
「私
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