木漏れ日の下で

「食べたら狩りにいくわよ」

その日の朝食の真っ最中、ニアは鹿肉をほおばる僕に言い放った。

「今朝の肉だけじゃ足りないの?」

「馬鹿ね」

ハン!と鼻を鳴らし、ニアは答える。

「肉だけだとバランスが悪いのよ!」

……野菜か!
都会育ちの僕は、お世辞にもがたいがいいとはいえない。ここにきてから少しは引き締まったと思うが、それでも魔物であるニアには勝てない。狩りにいっても邪魔になるだけだ。
その点、山菜などの野草に関する知識は僕の方が多い。肉がメインのメドゥーサは、そもそも野菜を食べるという考えがないらしい。
初めてニンジンを食べさせたとき、彼女のそれを見る目はすごかったのを覚えている。食べたら気に入ってくれたようだが。それ以来山菜の確保も頻繁にするようになった。まだ僕がいないと区別が付かないみたいだけどね。

「何かこの時期にとれそうなものはないの?」

「そうだね・・・」

季節は夏。しかし蝉の鳴き声はなく、夜になると少し肌寒い。そんな終わりの時期。
うーむ、少し難しいな。

「少し散歩がてら、そのあたりを散策してみようか」

やることもあるしね。と僕は提案する。これまでニアに食べさせてきたものは、この近くにたまたま生えていたものを使っただけ。僕はこの森の中がどんな植生をしているか分からない。今回はそれも一緒に知りたいな。
僕の意見を聞き、ニアは少し考え込んだ。悩むニアの頭では、蛇たちも悩ましげにうねうねとのたくっていた。

「いいけど・・・危険よ?」

ニアいわく、森は結構気の荒い動物やら魔物やらが多く、人間が入るには少々覚悟が必要なのだそうだ。
でも、心配することはない。

「大丈夫」

「なんでよ?」

「ニアが守ってくれるでしょ?」

ニコッ

「・・・・・・っ!!」

瞬間、ニアの顔が真っ赤に染まる。蛇たちも金縛りにあったかのように動きを止めてしまった。
・・・・・・そんなにおかしなことをいったかな?

「ばばばばっっかじゃないの!?」

ヒュン シュカッ

何かが僕の頬をかすめ、後ろの石壁に突き刺さる。一瞬遅れてつつ、と何かが頬をツタって流れ落ちる感覚。多分だけど、ニアがさっきまで持っていたフォークかな?

「ばっ・・・まもるって・・・そんなっ!!」

僕の血には気付かず、うろたえているニア。ねえ、照れてるの?それホントに照れてるの?
あと少しずれてたら失明の危機とあっては、さすがに可愛いニアをみても癒されない。
照れ隠しに拳をとばすのはいつものことだが、何かを持っているときはこうなるのか・・・・・・。よく、覚えておこう。

「いいからさっさとしたくしてきなさいっ!」

結局ニアは僕の流血に気付くことなく、部屋を飛び出していった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「とりあえず、山菜を探しながら用事を済ませに行くわよ!いい?」

「う、うん」

支度を終え、外にでた僕にニア叫ぶ。まだ照れているみたい。ずいぶん長いな・・・
蛇なんか未だに口を開けたまま行動を停止している。そんなに効いたのかな?

「な、何かあったらすぐいうのよ!わたっ、私が守ってあげる・・・からっ」

カミカミダネ。僕はというと、先程のショックからは抜け出せたので、十分にニアの可愛さを堪能する。

「ほらっ!いくわよっ」

そう言ってニアは手をさしのべてくる。これはもしや・・・

「はぐれたら元も子もないでしょ・・・だから・・・ほらっ!」

やっぱり!

「いいの!?本当にいいの!?」

「と、とくべつ・・・だから・・・」

「ありがとうっ!!」

ぎゅっ

「!?」

ああ・・・なんというか・・・いい。手を通してニアの熱が伝わってくる。

「手が手がてがてがてててt」

「ちょ!ニア!?」

ぶるぶるとふるえながら一心に何かをつぶやいている。なんかいつも以上に混乱していらっしゃるようだ。

「ほほらいいいくわよっ」

「ニア?明日にしてもいいんd」

「いいから!!大丈夫だから!!」

「・・・はい」

いったい何が「はい」なのかって?知らんよ。

「さあ出発!」

「まって!ひっぱらないで!」

僕はニアに引きずられるようにして森に入っていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

僕たち二人は獣道を歩いていた。ニアは出発の時よりは落ち着いたみたいだけど。まだ少し
顔が赤い。手?もちろんつないでますよ?ちなみに蛇達は僕のことを凝視している。それが何を意味するのか、僕には分からない。
…………捕食の前触れとかじゃないといいなあ。

「それにしても、「繋がりの川」が増水してなくて助かったわ」

ぽつりとニアが呟く。「繋がりの川」というのは、僕が落ちた川であり、家の前を流れているあれのことだ。聞くところによると、この数年間、
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