窓から差し込む朝日が僕の顔に降り注いだ。今日初めての光に、僕は顔をしかめながら起き上がった。立地の関係で、この部屋には朝しか光が入ってこない。それを補うかのように、強烈な光が部屋を照らし出す。
伸びをしながら部屋をぐるりと見渡す。僕が寝ていたものとは別のベッドは、既に空っぽだった。『彼女』は朝から狩りに出かけたようである。
僕は手早く着替え、ベッドを整え、部屋を出た。ドアの先には昇ったばかりの太陽が見えた。僕はそこから直進。目の前にある小川で顔を洗い始めた。
「……ぷはっ!冷たいっ!」
寝起きでむくんだ顔に、冷たい川の水が気持ちいい。このまましばらく水に浸かっていたいくらいだ。
「…そうだ!」
いい事を思いついた。まだ『彼女』も帰ってこないし、ここでひと泳ぎしてしまおう。
そうと決まれば話は早い。僕はいそいそと服を脱ぎ、川の中に入っていった。水の流れを肌で感じながら川の中心へと進んでいく。川といっても、深くても膝を少し隠す程度で、なおかつ流れもかなり緩やかなため、いつか入ってみたかったのだ。
「あーっ……気持ちいー」
流されないように手で岩をつかみ、水に体をつける。なかなかクセになりそうだ。このまま寝てしまいそうだ。
そう思うと本当にまぶたが重く感じてくる。水の動きを感じながら、僕はゆっくりと目を閉じた。
「ひゃああああああああああ!?」
次の瞬間、まどろむ僕の耳に、悲鳴が飛び込んできた。咄嗟に体制を整え、悲鳴の方角を見定める。
「……上!?」
そう、悲鳴は上から降ってきた。僕は上に向かって構えをする。そんな僕の視界に飛び込んできたのは……
「鹿?」
だった。
………………
「ふおおおお!!」
あまりの予想外な展開に戸惑っていたのは一瞬。咄嗟に体をひねって鹿をかわす。鹿は僕の頭を飛び越え、そのまま川に飛び込んで、動かなくなった。危なかった…鹿とがファーストキスになるなんてゴメンだからな!
僕はその鹿には目をくれず、鹿が飛んできた方を睨んだ。
そこには少女がいた。十人中九人は美人だといい、一人はあまりの美しさに失神する。それほどの美貌の持ち主。しかし、その下半身には足がなく、蛇のようなウロコを持つ尾が伸びていた。またその髪は、途中から何匹もの蛇に姿を変え、僕に向かって「シャー」と威嚇の声を上げていた。俗に言う、メドゥーサというやつである。
「おい!何するんだよニア!」
「そそそそっちこそなんて格好してんのよ!!」
ニア、と呼ばれたメドゥーサの少女は顔を真っ赤にして俺を睨み返してきた。元々勝気そうなツリ目が今はさらにつり上がり、その怒りを全面に押し出していた。蛇たちもいよいよ口を大きく開き、今にも噛み付いてきそうだ。
「悲鳴はともかく、鹿を投げてくるなんてひどいよ!!」
「るっさい!そ、そんなモノ見せつけてきておいて……弁解の言葉はないの!?」
「…………」
「…………」
「り」
「……り?」
「りっぷふぁあ!?」
「立派だろ?」そう言おうとした僕の口が急に固まる。まるで石になったかのように。メドゥーサの持つ石化の能力である。僕はたったまま完全に動けなくなった。
「こ、この期に及んでまだそんなこと言うの……?」
「あが……がが…」
うまくしゃべれない。意識もはっきりとして、感覚はあるのだが体だけが動かすことができない。意味のないうめき声を上げるのに精一杯だ。
ニアは僕の前まで降りてきて、僕の真正面に仁王立ちする。足がないので立っているといっていいかはわからないが。あ、顔を背けた。男のモノは見慣れていないのかな?
「ほ、ほら、謝罪は?」
「……」
それでも強気に言ってくるニア。しかし僕は喋らない。なぜなら、喋れないから。
「……ご、ごめんって言ってくれればいいのよ…?」
次第にニアの目尻にキラリと光るものが。この娘、おかしなところで寂しがることがある。今みたいにニアの言葉に反応しなかった時とか。
「…………」
しかも、感情が高ぶると自分が石化したことを忘れてしまう傾向にある。
「……ほ、ほら、一言でいいの…よ?」
両手を使ってカモンカモンと手招きをするニア。その瞳には涙がいっぱいに蓄えられていて、今にも決壊しそうなご様子。蛇たちは揃ってしゅんと下を向いてしまっていた。可愛いじゃないか……ニアも蛇も。
「………………」
僕はまだ喋らない。まあ、無茶言うなっていう話なんだけどね…
「なんとか言いなさいよぉ!!」
「ごふぉおっ!?」
「ゴスッ」と僕の腹に強烈な右ストレート!!くるのは分かっていたとはいえ、感覚はあるので痛い。むしろガードできないので普段より痛い。実に理不尽!
「ぐっ……げほっ…」
腹部の鈍痛にもがくうちに、体の見えない拘束が溶けていっ
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